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異世界でプレハブ小屋をもらうとチート機能が付くようです  作者: とみっしぇる


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54 売った男と守る男

マコトがあえて、ソフィーが逃げてきたエリアで目立つ行動をした。


元パーティーメンバーが彼女を追放した上に、獣人混じりだと各方面に情報を売った形跡があるからだと言う。 


姿を現せばトラブル発生は確実。


マコトがソフィーの元仲間と接触すると決めたのは明確な理由がある。


ソフィーを守るためだから奴隷というものの知識を仕入れた。


すると不可解な部分があった。


奴隷狩りが獣人奴隷を売って得られる金銭は300万~800万ゴールド。


価格は、獣化後の種属や戦闘力で決まる。例えばネコ科動物の獣人でライオンに変身できるなら、ダンジョン攻略や紛争に駆り出される。だから高値。


ソフィーの獣化変身は子猫。戦闘力は最低ラインを下回っているし小さい。肉壁にすらならず、普通に考えると値段は付かない。


マコトには最高に可愛い猫顔も、ナーロッパ地方ではブス族に入る。美貌目当てと思ったのは残念ながらマコト、お前だけだ。


なのに狙うグループが数組いるという。経費などを考えると割に合わない。


だから別に狙われる理由があるはず。手がかりは目の前の元仲間だと思った。


相手は罠に嵌まった。


ダンジョンボスを獣人混じりのソフィーが持ってきたという話を聞いて、3人の男女がやってきた。



ソフィーがマコトと2人で人が来ない林の方で椅子に座っていると、ソフィーの元パーティーメンバーが近付いてきた。


身長180センチくらいの男2人と、女が1人。装備は男子片方が長剣で、もう片方が短剣2本持ち。女は弓とナイフ。


マコトが立ち上がって、ソフィーの前に出た。距離は10メートルを切った。


「あんたら誰?」

「ソフィーの仲間だ」


「元、仲間でしょ。何の用?」


「ソフィーに話がある。誤解を解きたい」

「そうよ。カインのお母さんが大変なの」


3人とも、異世界に来て散々見てきた悪人の目だ。


ソフィーに聞いていた。元パーティーメンバーは、それぞれが病気の家族を抱えて金に困っていたと。


マコトは、それは嘘だと思った。獲物を換金するたび、メンバーの誰かに明日までに薬代が必要だから貸してくれと頼まれる。詐欺の手口そのものだ。


謝罪、懇願、説得、泣き落とし。いずれかで人がいい彼女につけ込む気だろう。何を狙っていてもマコトには関係ない。


「ソフィーとお前らを話させるつもりはないよ。逆に俺から聞きたいことがある」


「お前、ソフィーの新しい男か。そいつ獣人混じりだぞ」



「知ってる。知った上でソフィーを守ると誓った。助けられたくせに彼女を売ったお前らと一緒だと思うな」



「なんだと。ヘロヘロのガキひとりだ。俺が押さえる。お前らはソフィーを捕まえろ!」


前に出ようとするソフィーを制して、弓持ち女、短剣男の前に捕まえたばかりの一角牛3匹を5メートルの高さから落とした。


どどん!と、合計1200キロの肉が落ちてきて、地響きが鳴った。


「動くな!」


脅しではない。次は煮えたぎる油を落とす。マコトの目を見た2人は足が止まった。


マコトは長剣持ちに向き直った。こいつはソフィーに聞いていた男だ。断る彼女に言い寄ったくせに、恩も忘れて奴隷狩りに情報を売った。


マコトは空間収納から、5メートルの長さに切っておいたミスリルホイルを出した。端はだらんと、地面に付いている。


魔力親和性の高さを利用して、自在に扱うための道具だ。


「なんだそりゃ、布ぎれで戦うの気か」


「そうだよ」


マコトが魔力を注ぐと、ミスリルホイルは5メートルの板になった。


ぶん、と水平にして振った。厚さ11マイクロメートル、重さはわずか33グラム程度でも、硬さは魔鉄以上。


がぎっ。長剣持ちが構えた剣を薄いミスリルの板で弾き飛ばした。


そのまま、ミスリルホイルのギザギザな切り口を男の首に押し付けた。血が滲んだ。


「そのまま手を上げろ。何かしたら首か落ちるぞ」 


本当は魔力を部分的に抜いて、柔らかくなった先端を相手に巻き付けて捕縛したい。そこは練習中で、今は全体硬化1択だ。


3人は白旗を上げた。



「ソフィー、殴っとく?」

「いや、いい。というか、どうでもいい」


バックアタック基本のマコトが、自分絡みだから正面から相手を叩きにいってくれた。それが嬉しい。



マコトが情報を流した相手のことを尋ねると、3人が自分から話した相手は奴隷狩りばかり。


ひとりだけ、向こうからソフィーの獣人形態のことを聞きに来たそうだ。


隣のイタリアン王国の軍部の人間だという男。ソフィーが子猫変身をすると聞いて喜んで帰ったとか。


直後に捕縛依頼も出ている。


成功報酬は、獣人奴隷の取引価格では破格の1000万ゴールド。腕に自信がある荒くれ者が、彼女を狙っているようだ。


報酬が高い理由は分からないと言われたけど、マコトに思いついたこともある。


「猫ソフィーの大きさなら、何処にでも忍び込める。暗部で使うことが目的か…」


愛しい人が汚れ仕事に使われるために狙われる、これは避けたい。


「ソフィー、進路を変えようか?」

「…いや、変えなくていいと思うぞ。白ワインの上等なやつは、イタリアンの首都ローマンにあるそうだ」


「お、余裕だね~」


「私はマコトが欲しい物がある場所に突き進むだけだ」


「ははは。王都の兵士って強いかな?」

「騎士団長でも、アンタが秒殺した一角牛をギリギリ単独で倒せる程度のようだ」


「じゃあスキルとアイテムを使えば何とかなるね」



マコトに放置されているソフィーの元仲間は、反撃の機会をうかがっている。


懲りていないし、他にも監視しているやつ、ギラついた目で戦況を窺っているヤツらもいる。


マコトは釘を刺す。


「俺達を追ってきてもいいけど、これを食らう覚悟してね」


空間術発動。異空間にあるプレハブ小屋を上に4個重ねて繋ぎ直した。これで10メートル上に空間収納口を出せる。


20メートル先にいるソフィーの元仲間と自分達と間に5メートルの石を落とした。


「うわああ!」

「きゃあああ!」


ドン!爆音と共に土煙と振動が激しく交差した。


「あわわわ…」

マコトが適当な目測で石を落としたから、跳ねた石が3人の足元まで飛んで泥をまき散らした。ヤツらは顔を青くして泡を吹きそうになっている。


見ていた人間も、みんな固まった。


殺意と受け取った。


マコトとソフィーはプレハブ避難から、木の間を縫って笑いながら走り去った。

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