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異世界でプレハブ小屋をもらうとチート機能が付くようです  作者: とみっしぇる


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52 親切ソフィーと焦がし醤油ステーキ丼

旅の3日目は雨も上がり、川を越えてイタリアン王国に向けて東に進んだ。


途中で湿地帯を見つけて、スライムの魔石目当てに寄り道。


最低単位の1匹1d。少ないけど無害で異世界人には利用価値もないから、場所によっては湧き放題。


その湿地帯を西から東への進行方向に沿って、ソフィーがスライム突く↓マコト収納を繰り返した。


進む速度は遅くても、1日で685dの魔石エネルギーを手に入れた。


スライムは練成に使えるから、200匹を空間収納に入れた。


「685dか。缶ビール3605本分だな」


前にマコトはソフィーに、魔石エネルギー1dで2キロの物資が作れると明かした。

だけど理解しにくそうだったから、缶ビールなら5本作れると教えた。


すると簡単に計算ができた。


350ミリリットルの缶ビールは、ミスリル缶を含めて380グラム。

厳密には缶ビール5本で1・9キロ。1dで作る時に端数が出る。2dで缶ビールを作ると端数が400グラムになり20本でなく21本できる。


ソフィーに、ビール缶30グラム、中身350グラム、合計380と内訳を説明した。


そしたら30、350、380の倍数を覚えてしまった。


マコトはソフィーが天才だと思ったけど、200グラムのミスリルホイル15本で何キロになるか聞くと迷ってしまう。


謎だ。



旅も8日目。

イタリアン王国との国境も近いニスの街の手前で夜営した。


ソフィーが固いパンをかじっていた女子3人組を食事に招待した。


今日は胡椒と焦がし醤油たっぷりの複製和牛ステーキ丼だ。


「同じ村から出てきた駆け出し冒険者か。連れの錬金術師に許可は取った。腹いっぱい食え」


「ありがとうございます。胡椒なんて初めてです」

「この黒くて香ばしいソースが美味しい!」

「錬金術ってすごいんですね、奥さん」


「あ、いや、まだ妻では……」


ソフィーは今日も、野宿している貧乏冒険者にご飯を食べさせている。


夜営のたび、周囲の人に料理を振る舞った。


以前は獣人の血が混じっていることがバレないように生きてきた。野営地でも人との交流は最小限だった。


けれど今は全部を知ってマコトが愛してくれる。


命懸けで守ってくれた男を心から信じられる。


関わった人間に裏切られる未来があったとしても、後悔しない自分が見えている。


そう信じられるから、自分の思うままに動ける。


「…マコト、勝手してすまん。昔の自分のようなやつを見ると見過ごせなくてな」


「いいよ。ミスリル銀の価値も考えると、ソフィーが好きにしていい物資の権利は10トンくらいあるから」


「缶ビール2万6315本分か。では遠慮なく使わせて貰うぞ」


安心したように笑う、天才なのか何なのか分からないソフィーだ。


マコトからすると、この世話焼きソフィーも『あり』


マコトが好きになったのはそういうところ。文句はない。


貧乏冒険者3人組は、なけなしの角ウサギ1匹をくれた。お返しにビーフジャーキー10袋と燻製肉、鉄のナイフを入れたエコバッグ3袋を用意した。



ただし。


マコトの生み出す物は有限である。ぶっちゃけ複製に必要な有機材料が底を尽きかけている。


ボルドー銀山を降りてから魔石エネルギーをスライムのみから搾取。そのスライムは、普通の有機材料として使えない。


マコトの「スライムだけ狩ってスローライフ計画」は早くも頓挫した。


そういう訳で、寄り道して地中海側にあるカクセイユダンジョンに入ることにした。


全30階でランクは2。地面に起伏があるフィールド型。ボスはレベル40のフランソワバッファロー。


牛肉の宝庫で獲物は人気がある。だから14階までは冒険者が多い。


ソフィーは以前、ここも活動域だった。


追い出されたパーティーに在籍していたとき22階まで攻略した。出てくる魔物は把握している。


ただし、ソフィーが獣人混じりと知っている人間がいるエリア。今は猫ソフィーに変身している。


猫変身した彼女は、マコトが前がけにしたリュックの中に入っている。


「にゃんにゃ」

(狭苦しいにゃ、マコト)


「もうダンジョンに入った。人がいないところでリュックのファスナー空けるから、それまで我慢」

「にゃ~、にゃんにゃ」

(分かった、早くするにゃ~)


猫ソフィーになると、少しだけわがままになってマコトを肉球でぺしぺしてくる。それはそれで可愛い。


マコトは走って、2階に続く階段とは違う方向に行った。1階は短い1本角の牛が出る。そんな魔物は狙わず、3キロ四方のダンジョンの壁に突き当たった。


誰もいないけど、魔物もいない。ソフィーの顔が出るようにした。


「にゃにゃにゃ」

(こんな場所に来ても、何もいないし下にも降りられないにゃ)


マコトは壁の前に立ってイタズラっぽく笑った。


「そこは、空間術使い独特の移動方法があるでしょ。プレハブ小屋!」



ソフィーは見た。


プレハブ小屋にマコトと一緒に入ると、小屋は地中に埋まった。小屋の壁を透明にすると、ダンジョンの周りはうねった流動体だった。


『ダンジョンは空間的に違う次元に作られている』


だからダンジョンの外側から穴を掘って何もないし、内側から壁は壊せず傷もつかない。壁の向こうにも行けない。


世界の絶対的な常識だ。


なのにマコトがプレハブ小屋の中を歩くと、ダンジョンの壁の向こう側に通り抜けができた。


そうして唖然とするソフィーを人型に戻させて、再び一緒にプレハブ小屋から排出。


目の前には、全30階のうち26階以降にしか出没しないと聞いていた高級食材、大型の一角牛が立っていた。


「ソフィー、どこに出るのか試すまで分からないけど、俺の空間術ってダンジョンの壁を使って転移できるんだ」


えへへと笑うマコトは、特別な力を持つ流れ人の中でも希有な存在かもしれないと思った。

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