51 ウナギの蒲焼きと七味分解
マコト&ソフィーはお揃いの黒ジャージを着用し、色んな物を探す旅に出発した。
主に食材。
大陸の配置が地球に似た異世界。現在、フランスなら南西の海岸部より少し北に位置にある街。異世界ではボルビックにいる。
次は日本の本州の東西を裏返しにしたみたいな形で細長いイタリアン王国を経由して、アフリカである暗黒大陸に渡る。
ボルビックの街からだと、海岸線を300キロほど東に行って、それから国境を越えて南下である。
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旅の2日目、午後から強めの雨が降って、差しかかった川が増水していた。
川幅は40メートルほど。普段は歩いて渡るか、馬車用の瀬渡しを使って移動する。今日は危険だからみんな足止め。
ちょうど時間も夕方だし、夜営することにした。
2人で食事のルールも決めた。
街で宿屋に泊まるときは、宿のご飯を注文する。たとえ美味しくなくても、食材や調味料などに改良できるものがあるかもしれないから。
完全な林や森の中ならプレハブ小屋で食べる。
今回は足止めを食らった人達がテントなどで野宿する、簡易休憩スペース。
そういうときは、外で煮炊きすることにした。
ちなみに擬装用テントを建てるけど、寝るのはプレハブ小屋のダブルベッド。ここはソフィーの希望だ。
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テントの中から2人が食材を持って出ると、8箇所の煮炊きスペースのうち5か所で煙が上がっていた。数にして20人くらい。
その間を縫うように歩きながら、魚を売る人がいた。
マコトが興味津々で呼び止めると、あの高級食材があった。
「ウナギだ!」
こちらの世界でも地球の中世ヨーロッパと同じく、ウナギは高級食材。貴族に9匹を30000ゴールドで売る予定だったらしいが、マコトが50000ゴールドで全部を引き取った。
「前に川で捕まえて食ったけど、高級という割には、皮が臭い上に腹が痛くなったぞ」
こちらの世界のウナギも皮と血に毒があるようだ。そしてソフィーは生で食べたようだ。
泥抜きもしてあると聞いて、マコトは調理に取りかかった。
4匹が晩ご飯。個人的な理想サイズ60センチに近いやつから5匹が複製用。生きたまま冷蔵庫に入れた。
マコトは人に見られるのも構わず、マイキッチンを出した。横長テーブルとカマドともいう。
「ソフィー、俺が魚さばくから、砂糖、醤油、赤ワインで甘辛ソース作って。ついでにご飯温めて」
「お? マコトはニョロニョロ魚を美味くする方法を知ってるんだな」
ウナギの蒲焼きを作って、うな重にする。
マコトはウナギをさばくのは初。田舎で習った程度の知識だ。
まず、ぬめり取りのため塩、ビール、蜂蜜酒で洗った。
木のまな板に細い鉄の棒でウナギの頭を固定。背中側から包丁を入れた。
ニョロニョロと動かれて、切り口が斜めになりまくり。身が真っ直ぐ切れないけど、肝も取り分けた。
「ウナギのさばきウン年、焼きウン年って言うもんな。ま、いいや」
習った方法に沿って、まず軽く蒸した。その後に焼いた。
そうすると、身がふっくらとしたと教えられた。
カマドの火は炭火にして網を置いた。網は自作。ボルビックの街で針金を売っていたから加工した。
焼く順番は適当で、まず皮側から焼いた。
普通に香ばしい匂い。周囲で魚を焼いている人も多いし、誰も気にしていない。
ひっくり返して、今度は身の方を焼き始めた。
「ソフィー、焼けた皮に、たれ塗って」
「おいさ~~~!」
ソフィーは昨日から、マコトが出してくれる砂糖などの調味料を使って、ソース作りを始めた。
彼女がマコトのために美味しいソースを作りたいと思うと、「直感スキル」が働いた。
ソフィーお気に入りの肉じゃが風煮込みは、調味料に使った蜂蜜酒、砂糖にリンゴをブレンドして、マコト作より格段に美味しくなった。
そのソフィーが作ったウナギのたれは、なにも言っていないのに煮詰めてトロみがついている。
焼けた皮目にスプーンから、ゆっくりと垂らした。最初の一滴が焼けた皮に到達した。
じゅわっ………。煙と共に濃厚で力強い匂いが広がった。
「う~、うまそう。ウナギの焼ける匂いだ~」
ソフィーも、網に乗ったウナギにかぶりつきそうになるくらい、匂いに引き寄せられている。
そして、周囲の人達はふたりの数倍は目を見開いてウナギを見ている。
おひつのように四角く角を付けた木の食器を2つ用意。一皿ずつにまず、パックご飯2つ400グラムをよそった。
「マコト早く~~」
「あせらないの。あはは。最後の仕上げがあるんだから」
まず、ご飯の上にソフィー作のたれをかけて、2匹分のうなぎを盛った。
「まだか~~」「もうちょい」
最後にウナギの上から追いたれをして、取って置きの山椒を出した。
うな重の中で、マコト的には山椒作りが一番大変だった。
複製できるようになった七味唐辛子を分解して複製した。
異世界に持ち込んだ七味は、唐辛子、山椒、陳皮、青のり、ごま、麻の実、けしの実の7種類ミックス。
ミスリル銀などの複製の合間に、割り箸で同じ形の粒に選りわけ複製。
その中でも形がいいものだけを選り分けること数日。やっと、ひとつまみの量ができた。それを胡椒の空き瓶に入れて複製した。
ソフィーにも味見をさせて、大丈夫なのは確認した。
ぱっぱっぱと山椒をふりかけた。うな重の完成だ。
「さあ食べよう」
「おおおお!」
マコトは割り箸。ソフィーは箸の修業中で、今回はスプーン。
強烈な匂いに寄ってきた人達には、タレだけあげた。ウナギ自体は人に分けるほど量がない。
2人一緒にご飯とウナギを盛って口に入れた。
ソフィーの目がパチクリして、ほうっと溜息を漏らした。
「あの皮が…。マコトの手にかかると、ご馳走に変わるのか…」
あっという間に完食していた。
そして一緒に焼いていたウナ肝もつまみに、ビールで乾杯。
「はあ~。今日もマコトのおかげで幸せ~」
「俺も、ソフィーの笑顔で腹いっぱい」
「…ばかだな。ふふ」
食事が終わると、タレをあげた人がお礼を持ってきてくれた。
商人に国境付近の情勢を聞いたり、旅行者の面白い失敗話で笑ったりと楽しい。
旅は上々の滑り出しとなった。




