47 シャンプーとミスリルワンピース
マコトはテンションが上がっている。
現代日本の技術に下支えされたとはいえ、面白い物を錬成できた。
ゴム製品だ。
スライムにジッパー付きビニール袋を融合させたらゴムボールになった。
ポリ袋の時は板ゴム。
スライムを手に入れ次の日は、朝からプレハブ小屋に閉じこもった。
ソフィーは、大きく膨らますことに成功したスライムゴムボールを使って子ども達と遊んでいる。
遊びながら、早速マコトが収納腕輪に入れてくれたビールも飲んでいる。
◆
スライムと融合させた物次第では、もしかしたらゴム以外の物を作れるのではないかと。そんな閃きがあった。
錬金ギルドに行っても参考になるものはない。
日本から持ち込んで複製したビニール製品をスライム錬金で作ったと言ってきた。
ところがマコトは真実を知った。この世界、スライム錬金の研究者はいるが、スライムの青い皮を柔らかく保つこともできていなかった。
日本のビニール袋はオーバーテクノロジーだった。
ポルペイン帝国では、マドリー侯爵まで自分を追っていた。砂糖や胡椒狙いでそこまでやるかと不思議だったが、これで納得した。
幸いにボルビックの街では孤児院でしかビニール製品を見せていない。
旅立つまで平和だと思っている。
◆
ゴム製品でタイヤが思い浮かぶが、優先する物は装備に利用できる物だ。
マコトは敵に囲まれてもプレハブ避難で切り抜けられる。
ソフィーも連れ込めるが、常に密着している訳ではない。
何かあった場合。
自分で危機を切り抜けるか、マコトが駆け付けるまでの彼女の時間稼ぎするため安全性を高めたい。
手触りもよく、薄いミスリルホイルでインナーを作ってあげたいけど、裁断もアルミホイルの箱に付いてるギザギザでしかやれない。縫合の方法もない。
◇◇
何日かかるかと思えば、簡単にいい物が見つかった。
シャンプーだ。
ビニール製品をスライムと融合させたとき、色々な形になった。
ボール、板ゴム、生ゴム風などなど。
結束バンドと融合させると、弾力性があるシート状になった。
弾力シートで移動手段に使えるものを作ろうと思うが、そこは後回し。
ビニール製品を試したあと、瓶や布は混ぜても無反応。
「もうないかな…。あとは洗剤系か」と、陶器の小鍋にシャンプーとスライムを入れた。
「おおっ」
ドロっとした青色の液体になった。
それを割り箸ですくうと、1分ほどで乾燥。カチカチになった。
「強力な接着剤だ…。スライム糊ができた。すげえな」
切ったミスリルホイル2枚を出し、合わせて間にスライム糊を塗った。
失敗。1分して乾くと、接合面がカチカチ。
「う~ん。そうだ、シャンプー以外の物も一緒に混ぜよう」
ビニール製品、シャンプー、スライムを混ぜると木工用ボンドのようになった。
醤油、マヨネーズを混ぜても匂うだけ。
胡椒を混ぜた。すると新たな変化。固まった後のスライム糊が、少しだけ柔らかくなった。
そして閃いた。
ミスリルの粉を出した。抗生剤のアルミ包装を3個だけ開封し、アルミを粉状にしてミスリルの粉に代替複製していた。
ここ1か月で大量に物資を複製したとき、何かのついでに大量に粉を作っていた。20キロほどある。
シャンプー、ミスリル銀、スライムを小鍋で混ぜた。すると青銀に光るスライム糊が出来上がった。
ハンカチ大のミスリルホイルのシート2枚を出して、3センチほど端を重ね、ミスリル粉入りのスライム糊でくっつけた。
何となく、魔力を流してみた。すると狙った通りの現象。
2枚のミスリル銀シートが、1枚に見えるくらいにくっついた。
3分で乾燥。接合面は2枚重ねの分だけ手触りが変わるけど、シルクの手触りのままだ。
レベル34、物理攻防力340のパワーで引っ張っても、びくともしない。
マコトに原理は分からないけど、魔力伝達率が高いミスリル銀が、またも力を発揮した。
「これならミスリルのシャツや、色んな装備品を作れるぞ」
配合はスライム、シャンプーを各100グラムにミスリル銀2グラムの接合面が一番滑らかになった。
戦闘用インナーはソフィーの身体を採寸してから。1枚を完璧に作っておいて複製すればいい。
とりあえず、多少はサイズが違っても使いようがあるワンピースを作った。
肩ヒモで吊り下げるタイプ。折り紙のように色んなところを折って形を整えたから、ツギハギだらけ。
しかし総ミスリル銀、ミスリル銀入りスライム糊でキラキラが交互に走っている、刺繍の模様に見えないこともない。
何より、世界一防御力が高い普段着だ。
◆
わずか5時間で異世界の最先端技術を越える物を作った。
子供と遊んでいたソフィーのところに行った。
「ソフィー、腹減ってないか?」
「減ったぞ」
子供は4人いたし、ホットケーキを出した。
トッピングはハチミツと野いちごの粒。
「う~、この取り合わせもうまいな~」
ソフィーはケーキと一緒にビールを飲んだ。大量の魔石を手に入れてくれたし、とりあえず10本渡してある。
現在、大量複製中だ。
空き缶はビール複製に必要だから回収すると、早くも3本も飲んでいた。
「ソフィー、スライムを利用して新しい物作ったよ」
「へえ~、早いな」
「記念すべき1枚目をプレゼントするよ。あとで着てみて」
陽光に輝く白銀の布地、スライム糊に反射して所々に青いラインが入っている。
「…へ、なにこれ」
「ミスリルワンピース。折り目や接合面はスライム糊で付けたけど、熱しても引っ張っても大丈夫だった」
驚きすぎて猫目の瞳が縦になりそうになるソフィー。
「こ、この国の王様でも…」
「そんな人、どうでもいいでしょ。それよか手触りは?」
「…すごくいい」
規格外なマコトが何をしても笑おうと思ったソフィーだけど、これには顔が引きつってしまった。




