44 ミスリルホイルと巧みの業
マコトがソフィー、ケビン、マリアの3人に預かっていた鉱石から作った製品の数々。
ミスリル製品、ケビンとマリアが使う金属用品を除き全部を売った。
ミスリルホイルは売れなかった、いや売るわけにはいかなくなった。
マコトは知らなかった。自分が作ったミスリル銀のホイルのヤバさを。
以下の流れだ。
◆
ケビンとマリアには先に売りやすい物資を売って、お金を手にしてもらった。
ソフィーは権利を放棄。これからマコトと一緒に旅をするから、服からすべてを提供してもらえる。
「それでいいの? ソフィー姉ちゃん」
「ああ、こっちは国を出る。ラフランスの金は2人が持ってた方が役立つだろ」
話はとんとん拍子に進んだ。
魔鉄500グラムのナイフ131本がメイン。銀の塊1キロが10個。鉄は600グラムのナイフは59本と球体2キロが40個。銅は3キロの剣が10本。
剣類はマコトがアダマンタイトを使って研いだやつを複製元にしたから、みんな刃先が光る美品だ。
魔鉄ナイフは魔力を通しやすい。杖の先に装着して増幅器の代わりにする魔法使いもいる。最近の店頭価格は500グラムサイズで10万ゴールド。
本日の買い取り価格は6万ゴールド。131本を一気に売っても、国中で不足している人気商品だから値崩れはしない。
街で信用があるシスターアンジェラに付き合ってもらって、商業ギルドで売った。
魔鉄ナイフだけで655万ゴールド。その他諸々を合わせて888万ゴールドになった。
世帯当たりの平均年収が150万ゴールド程度の街。そもそもがソフィー、ケビン、マリアの3人はマコトと出会う前は、ボルドー銀山で100万ゴールド稼げれば十分と考えていた。
ケビン&マリアに金を渡した。すると2人の新生活資金に500ゴールドを残し、388万ゴールドは孤児院に寄付することにした。
「ありがとう。あなた方に神の祝福がありますように」
シスターを涙ぐませたケビン達。帰ってお茶をしたところまでは良かった。
◆◆
「マコトさん、ありがとう!」
「ケビンと新生活を始める前に、色々とそろえられそうです」
「おいおい。まだお宝は残ってるよ。そんなに無欲じゃ、悪いやつに騙されるよ」
「え……あ、ミスリル?」
「そう、こんな物を精製したんだ。そっちの取り分はこんだけ」
マコトはアルミホイルの四角い包装に包まれたミスリルホイルを出した。
100個を並べた。3人は見たことがない物体に戸惑っている。
「?」「?」「?」
マコトは自分用を1本、包装を空けて中身を出した。
幅25センチで長さ30メートル、厚さ11マイクロメートル。ロール状で1本が200グラムある。
「え、これが?」
口をパクパクさせているケビン、マリア、ソフィー。
「そう、薄く加工したミスリル銀。200グラムで100本作ってる」
そうして端を持って伸ばすと、意外な事が起きた。
アルミホイルみたいにピンと角が立たない。
布のように、ふわっと垂れ下がった。
置いてしゅるる~と伸ばすと、シルクみたいになった。
「なんで?」
「な、なんでじゃない。こんな物を100本だと? マコト、アンタとんでもない錬金術師だったんだな!」
結論。これは売れない。何処に売っても国家レベルの組織から狙われるから。
ミスリル銀は缶ビールくらいの厚みがあれば、アルミのような柔らかな固形状態を保つ。
けれど一定の薄さまで引き延ばすと布状になる特異金属。
マコトはミスリル銀の魔力親和性、強靱性が優れていると聞いてもナメていた。
なぜか。
マコトよ、それはお前の判断基準がRPGゲームだからだ。自分がやったゲームの中でミスリル銀の装備は終盤で使いものにならなかった。そんな適当な定規をリアルな異世界に当てはめた。
ともあれ、ソフィーに鉄のナイフで切ってみろと言われた。柔らかいし薄いのに、切れ目さえ付かない。
ソフィーが魔力を少し流しただけで今度は硬化。ナイフが通らないどころか刃が欠けた。
だけど。
アルミホイルの箱に入れて、ギザギザ金具の切るとこに押し当てると、ペリッと切断できた。
恐るべし、日本の技術。
裁断された25センチ正方形のミスリル銀布を持って唖然としながらも、ソフィーは口を開いた。
「…こんな風に薄く錬成した物を加工して、ラフランスの王様が服の下に着て命を守っているそうだ」
「じゃあ、流通してるんだ」
「そんなわけあるか!」
この世界の人間の身体から常に少量の魔力が漏れている。ミスリル銀の魔力への反応はピカイチで、魔力の質まで読み取る。
例えばミスリル銀シャツの装着者が刺されようとして、「あっ、防がなきゃ」と思った瞬間には硬化する。
魔鉄の鎧並に防御力が上がり、動きも阻害されない。
ただし、ミスリル銀の極薄加工は超が付くほど難度が高い。
ラフランスの筆頭錬金術師が作ったミスリル銀のシャツでさえ、王の腹まで覆う大きさを作るのが精一杯。
その面積の精製で、国家ナンバーワンの称号を得た。
「いいか、王妃、王太子、公爵クラスの高位貴族でさえ、こんなに薄くに精錬されたミスリル銀なんて、ハンカチ程度の大きさしか手に入らん。30メートルの反物サイズなんて売ったら騒ぎになるぞ!」
ソフィーはマコトに言い放ったが、彼に貴族絡みの事情なんてどうでもい。
「しまった~。これじゃケビンとマリアに渡すお金を作れないのか~」
「あ、いや、そこは今、考えるとこではないだろ…」
「ソフィーの大切な弟妹の話だぜ、そっち優先。当たり前だろ」
「…あ、あのな」
別の形にして渡そうと思ったとき、別のミスリル銀製品を手に入れていたことを思い出した。
ランク2ダンジョンで神速の攻略者となり、貰ったミスリル銀製の収納腕輪だ。正直、存在を忘れていた。
シンプルなデザインで幅は5センチ、重さは120グラム程度。
ただ『ミスリル銀製10メートル収納腕輪◇サイズ調節機能◇不壊◇時間停止』
そうなっているけど、これをベースに単なるミスリル銀腕輪として複製できれば、売り物になるのではないかと考えた。
トライしてみることにした。




