36 渓流デートとハンカチ手品
マコトは鉱山生活21日目を休みにした。
ミスリル鉱脈を見つけ採掘も順調。早くも缶ビールの複製の目標数を達成した。
ミスリル銀も恐らく300キロ超えになる。プレハブ小屋は素材だらけだ。
あとは自分のミスリル銀ホイル作りと、ここで知り合ったソフィーが拾ってきた鉱石の精製作業をして過ごす。
料理の研究もしている。
ソフィーらは5日後にボルビックの街に帰る。マコトも付いて行く。
「マコト君、アンタが精錬してくれた物資だけでも、売れば800万ゴールドを越える」
「役に立てて良かったです」
「そこでだ、ケビンとマリアに3割ずつ渡してくれ。私の分も含めた残りはアンタがもらってくれ」
「遠慮します」
人がいいソフィーと何度も同じやり取りをした。
結局、貰う練金の報酬はパンにした。ソフィーが育ててもらった孤児院ではパンを焼いて売っている。
ドライイーストを増やしたから、異世界で手に入らなかったフランスパンを焼いてもらいたい。
さて、複製の話。
1回の複製時間は8時間。缶ビールは150缶まで増やした。
ミスリル銀ホイルは600本で120キロをストックしている。
プレハブ小屋に置いてある未精製の鉱石量、魔石エネルギー残量から考えて、あと1200本のミスリル銀ホイルができそうだ。
そこで不可解なことに気付いた。比重だ。
比重がなぜか、アルミとミスリル銀は同じ。
アルミとノーマル銀は持っただけで比重が違うのが分かる。変だと思ったマコトだけど、銀がミスリル銀になると一気に比重が下がる。
常識だとソフィーに言われた。
考えても説明がつかず、マコトは「ファンタジー金属だから」で片付けた。
ところでソフィーの直感スキルの恩恵は大きい。
他の鉱石も採れた。鉄中心の鉱脈も見つけた。鉄は400キロ、銅は50キロ、魔鉄120キロ、魔鋼45キロを複製した。
銀は500キロも見つけて500個の玉にしている。
鉄はナイフ複製だと嵩張る。だからアダマンタイトで叩いて作った2キロの平たい円盤を複製した。保存と攻撃の兼用だ。
金も5キロ増えた。魔金は3キロ。元となった魔金3グラムの欠片は、鉱山局員に物資と引き替えにもらった。
そういう訳でマコトは本日、冷蔵庫任せの複製作業中という半休状態にある。
ソフィー達も休暇を取った。マコトのお陰で金銭を得る目処がついて無理せず活動している。
ケビンとマリアの14歳のコンビはカップル。
2人で近くの村を見に行くと言って、早々と出掛けた。自動的にソフィーとマコトは二人きりになった。
というか、二人だけにさせられた。
マコトはキレイな渓流があるからと、ソフィーをピクニックに誘った。
◆
転移者特典の身体能力があるマコトはともかく、ソフィーも軽々と岩場を飛び跳ねて移動している。
そして開けた岩場に到着。しばらく無言で景色を見ていた。
「マコト君のお陰で、孤児院のシスターに恩返しできそうだ。ほんと、感謝してる」
「いえいえ、こっちこそ多くのミスリル銀が手に入りました」
「本当か。上質の服や食事を提供してもらえるほど私は役だってるか?」
「もちろんです」
ミスリル銀の情報どころか、魔石エネルギーでも世話になっている。
マコトの複製は単純に重量が決め手。ソフィーにもらった魔石エネルギーは合計402d。物資を804キロ複製できる。
自分の決まり事である半分返しだと物資402キロ分。
情報料まで考えると、ソフィー達に風呂の湯を供給して食事を出したくらいでは追い付かない。
とりあえず衣類やタオル、シーツを渡した。だから仕事着以外は綺麗だ。
ソフィーは体格もいいし、マコトと同サイズの服が着れる。だから今のマコトとソフィーは、お揃いの黒ジャージだ。
◇◇
渓流地には誰もいなかった。
源流から近く、魚も水苔もない澄んだ水。大きな岩が融合したような曲線を描く川岸の光景。青い空。
「うわあ、こんな場所もあったんだ」
「マコト君は不思議だね。世界の大半は、こんな場所だぞ」
「あ、まあ、そうですよね」
マコトは日本人だ。
田舎だって、かなりのインフラが整っている。純粋な自然の造形なんて数えるほどしか見たことがない。
「ソフィーさん、お腹すきません?」
「すいた。実はマコト君の飯に期待して、朝ご飯は控えめだ」
ちょっと赤い顔をして笑うソフィーが可愛い。
数日だけど話して共感できる。
余計な正義を語らない。
大切なもの守るためなら力を尽くしたい。
すごく親切だ。
そんな彼女をもてなしたい。
「よし、用意しておきました」
大きくて平たい岩の上をテラス席にした。大きな木の枝が適度に日光を遮り、木漏れ日がほどよい。
テーブル、竈、椅子を空間収納から出して並べた。
ソフィーは生の魚も好きだと言った。
だから、複製マグロ刺し身、中トロと赤身各3切れ入りを、10倍に増やして盛りつけた。
続いて軽く塩コショウを振って牛、豚、鹿のカットステーキ。
鳥モモ、キス、エビは揚げた。
魚肉ソーセージは、まだ出していない。最終兵器だ。
小皿に醤油、胡椒、マヨネーズ、塩を入れて並べた。
ソフィーは初めて見るマグロの刺し身から目が話せない。
「私だけ、こんな物をごちそうになっていいんだろうか。ケビン達に持っていってやりたいな」
「ケビンとマリアの分もありますよ。ではメインです」
次がラストの演出。
左手の手のひらをソフィーの前で広げた。上にハンカチを被せた。
手のひらの上に空間収納口をセット。
ハンカチの中央をつまんで、少しずつ上に引っ張って「じゃじゃーん」
そこには缶ビールが現れた。
「ソフィーさんがミスリル銀の在処を教えてくれたお陰で、こんな物が錬金できました~」
マコトが1番好きな某メーカーの『イチバンの搾り』350ミリリットル入りのお披露目である。




