34 惹かれる相手と無料錬金
マコトがボルドー銀山に来てから5日が経過した。ミスリル銀集めも順調。
ソフィー達がボルビックの街に帰る20日後を一区切りにしようと思っている。彼らに付いて街に行く。
2日目以降も採掘作業が進んだ。銀とミスリル銀、それから金も発見した。
空間収納の中は鉱物を含む石だらけとなった。採掘作業より、「出がらし」となった石を廃坑の隅に捨てる作業の方が大変だった。
ミスリル銀の鉱脈も大きかった。アルミ複製の代替品を山ほど作れる。
調子に乗って岩盤を超えて100メートルくらい岩の中に潜っている。瞬間生き埋め状態に、少しだけ慣れた。
これで、待望のビール缶の大量複製が可能になった。
ミスリル銀の多くは、アルミホイルを元にしたミスリルホイルにして保存する。かさばらない。
◆
缶ビールは32本まで増やしたけど、まだ飲まない。
一緒に飲みたい人がいる。
日本人と異世界人なのに、どこか価値観が似ている冒険者ソフィーだ。
彼女と記念すべき一杯目で乾杯したい。
ソフィーは酒が好きだそうだ。だけど、鉱山近くのホテルで売っているものは高い。我慢している。
夕飯は一緒に食べている。前の日には、天ぷらをふるまった。
ソフィーは、ナイフで仕留めた首なし角ウサギを手渡しでくれるような人。そんな豪快な女性だけど無神経ではない。
「マコト君…。ご馳走になるのは嬉しいがな、こんな物を振る舞うのに値する女ではないぞ、私は」
「気にしないで下さい。俺も楽しいからいいんですよ。あはは」
「しかしな、材料費も高いだろう」
「ダンジョンで取ってきてくれた魔石、ソフィーさんが見つけてくれた鉱石、それを練金したら、売れそうな物ができました。むしろ俺の方がプラスですよ」
「ホントか?」
「それより、天ぷらの味はどうですか?」
ポルペインで仕入れたキスとエビ、その他の白身魚。塩、胡椒、マヨネーズと薬味も色々。カリッと揚がったエビを頬ばると、唇の両端が上に上がった。
「はあ~、幸せ…」
猫目が細くなって、にへら~っとなるソフィーの顔を見るとマコトも気分が安らぐ。
ランク2ダンジョンの11階でソフィーが集めてくれた魔石だけで18個。合計エネルギー91d。
物資複製なら182キロ分だ。半分をお返しするとしても、単純に重さで91キロ分。
食事だけではお返しが追い付かず、服などを渡そうと思っている。
「バリエーションはないけど、服、リュックなんかの物資も報酬にしていいですか」
「まさか、マコトさんが着てる上質のシャツのこと?」
「え、ちょっと過剰に貰いすぎではないか?」
「あはは。ソフィーさんの貢献度を考えると当然です」
「本当にそうなら、金を貰えないか?」
そのセリフがソフィーの口から出るとは思わなかった。
「…幾らくらいですか」
「再び孤児の弟妹達が病気になっても薬を買えるくらいかな…。ケビンやマリアみたいな考えを起こす子が、出ないようにしたい」
ソフィーは、血の繋がらない弟妹のために言いにくいことを口にできる。根が優しいのだと思う。
まだ深く関わってないけど分かる。今回の仕事に自分の儲けが入っていない。
こんな世界の人なのに損得勘定がない。
見た目もドストライクだ。
だから一段落ついたとき、一緒に乾杯したい。
◆◆
彼等もソフィーの直感スキルに従って発見した鉱石を集めていた。もちろん未精製。2か月分で集めて大量。
マコトが『査定』をすることにした。
マコトには冷蔵庫と空間収納を利用すれば、持っている金属なら含有するか否か分かる。
可能な金属は精製プラス製品化まで請け負うと申し出た。
厳密には複製。だから魔鉄の例だと、ナイフか20キロの球体しか選択肢はない。インゴッドの形など不可能。
3人に喜ばれたけど、驚かれはしなかった。
「鉱物の精製は、高位錬金術師の仕事だよな。個人依頼の精製料は金属の売値の半値が常識だ。それでいいか?」
「ははは。ソフィーさんの直感スキルのお陰で俺も採掘で大儲け。なので無料でいいです」
と言いつつ、マコトは錬金術師の仕事に鉱物精製があるなんて、今初めて知った。
彼等が貯めておいた鉱石は、オリジナルの錬金準備だと言って収納させてもらった。
すでに空間魔法使いだと隠していない。
するとマコトが持っている金属に次々と反応があった。
やはりソフィーの直感スキルはすごかった。
魔鉄、銀の含有量が多い。
次から次に鉱石収納↓査定↓排出↓鉱石収納↓査定と繰り返していった。
大ざっぱな計算だと、現段階でも魔鉄は100グラムのナイフを100本くらい作れそうだった。
鉄はナイフ20本分、ノーマル銀は1キロのビッグ碁石10個分。
鉱山管理局横の商業ギルド出張所で売る予定だったが、鉱石の状態では買い叩かれる。けれどマコトは製品にして渡せる。
魔鉄ナイフを見せたら、このサイズの完成品なら店舗の売値が1本8~10万ゴールド。買い取り価格は最低5万ゴールドとソフィーに言われた。
プラスして大きな石の中央部にビール缶4本分のミスリル銀、120グラムも発見した。
これに手持ちのミスリル銀を足して、ミスリルホイルを100本作って渡す。
ソフィーのスキルのお陰で、マコト自身は200キロ以上のミスリル銀を得られる目処が立っている。
これまでのソフィーから考えると、鉱石発見料なんて名目では金銭を多くは受け取ってくれそうにない。
岩の真ん中に20キロのミスリル銀の塊があったと言えば、彼女に断る理由はない。
大きな鉱石に多くのミスリル銀も含んでいると言うと、3人が歓声を上げた。
少し量を盛るが、含んでいることは嘘ではない。
「マコト君はミスリル銀の精製までできるのか。やはり、超一流の錬金術師なんだな」
魔鉄、魔鋼以上に、ミスリル銀は精製自体が難しいそうだ。
高位の錬金術師が仕上げた製品は、完成度によって価値が跳ね上がるらしい。
ふと思った。
これからコーヒー豆、大豆、小豆、色んなものを探したいマコトは、探索能力に優れた仲間が欲しい。
ソフィーに誰かと組む気はあるのか聞いた。
彼女は悲しい目をした。
「私には人に言えない問題がある。誰にも迷惑を掛けたくない。だから何も持たずに消えると思う…」
潤んだ目で見つめられて、なぜかとは深く聞けなかった。




