2 物資複製機能と魔物同士の戦い
マコトは異世界の森の中でフォレストウルフに襲われたが、もらったスキルの中に避難できた。
地中に埋まったプレハブ小屋の中にいる。というより、断絶された空間に入っているとマコトは思っている。
なぜならウルフは小屋の屋根、それもマコトの真上で鼻をヒクヒクさせているのに、何も見付けられない。
とりあえず、プレハブ小屋の設備を検証する。
まず簡易キッチンは、シンク、コンロが一口、調理台、蛇口がある。
トイレマークのドアを空けると便座がある。ありがたいことにウォシュレット付きだ。ただしトイレットペーパーはない。
シャワーマークの扉の向こうにはシャワー。温度は10度から60度まで調整できる。
最後に大きな冷蔵庫。容量は700リットルもある。
冷蔵庫はスリードアで下から冷凍100リットル、冷蔵300リットル、謎の部屋300リットル。
謎の部屋の表示を見てマコトは驚いた。
『複製品制作庫』と書いてある。マコトが声を出すと、ドアに説明モニターが浮かんだ。ドアは開けられない仕様。冷蔵室か冷凍室の中に入れた品物を複製できると書いてある。
「こりゃあいい」
疑問には思わない。異世界だし、そもそも自分がいる場所が不思議現象で作られた空間だ。
もしもマコトがいる森が異様に広くて獣だらけなら、空間術で危険回避はできても、いずれ食料が尽きると思った。
さらに叔父の注意書きにあったように『食』の味付けが塩中心なら、砂糖、各種調味料は街を見付けても手に入らない可能性がある。
パンや味噌作りにも挑戦したくて、ドライイースト、重曹、米麹も買っている。
こういう物を複製できるなら万々歳だ。
荷物の中には、実家に到着したら急いで冷蔵庫に入れようと思っていた、鶏、牛、豚の精肉がある。
引っ越すから、物資を一気に買ったのが偶然に正解だった。
大きなリュックとキャリーバック、色んな調味料が入ったビニール袋、エコバッグ、財布は持ち込めた。
車の座席に置いていたスマホ、別のカバンに入れていたタブレットなんかは、向こうの世界に置きっぱなし。
布団やクッションも実家にあるし、持ってきていない。
「ああっ、あれを置いてきた」
ウイスキー、焼酎、チーズ、おつまみ各種も間違いなく車の中。お菓子類、野菜の大半も持ち込めていない。
家に着いた直後に飲もうと思った缶ビール1本。おつまみは魚肉ソーセージ、ビーフジャーキー、そしてデザート類が幾つかある。
「米は…。炊くのが面倒だから、レンチン用の3連パックのご飯を持ってた。助かった」
好物の石窯パンは車の中で食べてしまった。痛恨である。
気を取り直して、冷蔵室に精肉を詰め込んで複製しようとしたが。
「…中が冷たくない」
とりあえず外部スイッチが点滅しているので押すとアナウンスがあった。
『電力供給のため空間収納から魔石を補充してください』
「ませき?」
すると、ミニチュア小屋が置いてあった棚の横からブザーが鳴って、電光パネルが浮かんできた。
◇魔石0d
◇室温22度
◇照度400ルクス
魔石1dとやらの単位で、10日分の電力を起こせると考えられるようだ。
「ぐ、魔石とはどうやって手に入れる? やっぱり外で魔物とかモンスターとか倒さんといかんのか」
なにはともあれ、腐るモノは収納スキルを使って保存した。
手から収納を意識すると、半透明な黒い渦が右手の下に現れた。時間停止機能付きで、牛肉とか品名が分かった。
そういえば、まだ頭上に歩き回っているウルフも魔石を持っているのだろうかと考えた。
確かめたい。
倒す方法はあるのかと考えていると、ウルフがいきなり一方向を警戒し始めた。
マコトも周囲に意識を向けた。すると小屋の天井から伸びたアンテナカメラが作動した。白黒モニターに周囲の風景が映った。
いきなり矢が飛んできて、ウルフが避けた。
同時に木陰から、鼻と耳が長くて目が血走った、身長120センチのバケモノ3匹が出てきた。
「きっとゴブリンだ!」
ファンタジー生物にマコト大興奮。
手には石斧、棍棒、尖った石を持っている。
ウルフは棍棒ゴブリンの首に噛みついたが、その隙に尖った石で背中を刺された。
次は斧で頭をたたかれ、3匹を仕留めた時にはウルフは血まみれ。さらに再び矢が飛んできて、ウルフの腹に刺さった。
4匹目のゴブリンは弓持ち。距離は10メートル程度で、手負いながらもウルフは弓持ちゴブリンに飛びかかって仕留めた。
しかしゴブリンも最後に木の矢を放っていた。ウルフも首元に矢を受け、戦いのあと横に倒れた。
「これって、チャンスでは?」
50メートル範囲に、他の獣やバケモノはいない。何かいたら、ここに戻ればいい。
マコトが外に出たいと念じると、あっさり森の中に送られた。MP消費はない。
念のために逆も試した。戻りたいと念じると、即座にプレハブ小屋の扉の前に立っていた。
再び外に出たマコトは、まずゴブリンの棍棒を拾った。
ゴブリンをつついて、死んでいるのを確認してから、空間収納に回収した。
ウルフも含めて、みんな息絶えていた。
計5体の魔物と、棍棒、石斧を収納してプレハブ小屋に戻ると、身体にじっとりと汗をかいていた。
「短時間でも、薄暗い中で未知の森の中。さすがに緊張するな」
すると脳内アナウンスがあった。
『空間収納内に魔石を発見しました。使用する場合は、電力チャージ、拡張積立のどちらかを選んで下さい』
迷わず電力チャージを選んだ。




