16 ランク1ダンジョンとジャーキースープ
マコトはマドリーの街で市場に行ったあと、街から北5キロ地点にあるモリーナダンジョンに入った。
早朝から市場でタマネギ、ニンジンを買った。なんだかイメージより貧相だったが、令和の品種改良作物と比べてはイカンと思った。
新大陸から持ってきて15年目だという、ジャガイモもあった。少し芽が出た芋は種芋用だからとよけられていたが、そっちも買った。
細くて貧相だったけどポルペインでは目新しいサツマイモらしき物もあり、買っておいた。
幸いに野菜類は空間収納に入れられた。
バター、チーズ、小麦粉も少量が手に入ったから早速、複製を始めた。
その足でダンジョンに向かった。実は魔石エネルギーが17dしか残っていない。
なのに複製したい物が重い。
布団を手に入れたけど、プレハブ床にジカで布団を敷くから敷き布団1枚だと固く感じた。もう1枚敷きたい。
綿100パーセントだから1枚複製でも重量が6キロもある。
10人分のスープを作れる鉄鍋は8キロ。布団と鍋だけで14キロ。魔石エネルギーを7dも消費する。
他には大きめの剣だけど、切れ味より打撃力で勝負の厚い鉄製。日本刀の倍どころじゃない4キロ。
大きな荷物が増えて4メートル空間収納も手狭になった。『拡張積立』にも魔石を投入して空間収納も広げねばならない。
なのでダンジョンに来た。
ランク1ダンジョンは、どこでも総階数20階。魔物のレベル帯は場所によってバラバラで、ここは3~25。
各階層が2キロの正方形になった草原型。モリーナダンジョンのダンジョンボスはコボルド・レベル25。ゴブリン、角ウサギ、コボルドのノーマル種のみで構成されている。
マコトがダンジョンに入ると、1階は子供冒険者がたくさんいた。
品質は低くても薬草が生えている。根こそぎ採っても2日でリポップする。丁寧に干して持って帰れば、薬師ギルドで買い取ってくれる。
ゴブリンは買い取り不可能。理由は肉に毒があるからだった。
マコトは毒由来でもある抗生物質の複製にゴブリンが指名されるのを不思議に思っていた。なんとゴブリンの毒素が条件を満たしていた。
抗生物質3種、解熱鎮痛剤は各1錠だけアルミパックから出し、10回複製して劣化がない空間収納に入れている。
元が1錠でも倍々で10回複製すると各1024錠になった。
これからは魔石を抜いたゴブリンは捨てる。
少し歩くと、角ウサギを解体している10~13歳くらいの子供冒険者5人がいた。
年長組が毛皮を剥いで肉を切り分け、腰に薬草を下げた年少組が肉に塩を揉み込んでいた。バルセロ村で聞いて知っていたが、これがこの世界で生きていくためには必要。
マコトは殊勝なことは考えていない。捨てられた魔石を見ている。
「ねえ君たち、その魔石もらっていい?」
「うんいいよ。どうせ捨てるし。何に使うの」
「えと、錬金術の実験かな。何でもいいから、魔石を集めてるんだ」
今までの言い訳の中では、一番まともだ。ともあれ思わぬところで魔石が手に入った。小ぶりでも角ウサギだから魔石エネルギーは2d。
錬金術で作ったとごまかして、ビーフジャーキーを1本ずつ5人の口に放り込んだ。すごく美味しいと言われたので、1人につき5本ずつ渡した。
「兄ちゃん、マコトさんっていうんだね。魔石があれば、この干し肉ってもらえるの?」
「そうだよ。このダンジョンには5日来る。また魔石があったらよろしくね」
マコトは種を蒔いた。
子供冒険者がいる3階まで降りて、角ウサギ、コボルドを捕まえた子供と交渉した。何人パーティーでも、魔石1個につきビーフジャーキーひとり5本と引き換えにした。
角ウサギ8匹分で16d、コボルド2匹分の魔石で8d、計24dの魔石エネルギーを手に入れた。
渡す物をビーフジャーキーにしたのは、価値よりも重量。1袋25本入りで150グラムだから1dで13袋作れる。
魔石は捨てる物なのに、ジャーキーと引き替えに貰った。子供冒険者の間で話が広まって、誰かが魔石を持ってきてくれたら御の字である。
ゴブリン11匹が放置してあったので、空間収納して魔石エネルギー11dを抜いて捨てた。
マコトがダンジョン4階に降りると多少は雰囲気が変わった。魔物が1階層降りるごとにレベルが1つ上がり、ここはレベル6。
冒険者も体つきが変わり、彼らのレベルも上がってきた感じだ。
ようやくマコトの前に角ウサギが現れて、ナイフで仕留めた。これで計37d。
一気に10階のフロアボス部屋まで行った。この世界のダンジョンは、10階をクリアするごとに1階と行き来できる転移装置が開く。
4階から9階までに、拾ったゴブリン魔石、もらった魔石、倒した魔物の魔石で合わせて61d。
10階ボスのコボルドレベル15を倒しても、魔石エネルギーは4d。これで102d。
そして地上に出た。
すると子供冒険者11人が待っていた。マコトのもくろみ通りである。
ビーフジャーキー目当てに、魔石を拾って持ってきた。魔石エネルギーは31dも追加された。
本日の成果は133dにもなった。
大半の冒険者は帰ったが、最初に話した10~13歳の5人の子供が残った。孤児だった。スラム街とダンジョンを、行ったり来たりして生きている。
ダンジョン1階に降りた階段から30メートルくらいの範囲だけは安全で温度も安定している。今回は3日ほど稼いで街に物を売りに行くそうだ。
マコトもダンジョン1階に付いていった。
彼らは鉄の鍋にウサギ肉、安く出回っているニンニク、薬草、塩を入れてスープを作った。そこにマコトにもらったビーフジャーキーを2枚入れた。
「なるほど、和風ジャーキーだから醤油、胡椒、各種調味料が入ってるもんな。高性能な出汁か」
マコトもスープをもらって、代わりに焼いた鶏モモを人数分出した。
すごく喜んでくれた。
デザートにプリンも振る舞った。
必死に生きる子供からもらったスープは、美味しいというより胸に染みる味だった。




