番外編4:黒幕の正体と、決戦の予感
九条の襲撃後、不穏な静寂が漂う加茂家の書庫。父・春樹と母・桜を前に、永遠は懐に忍ばせた「真実」を明かす時が来たと悟りました。
「……お父さん、お母さん。あのリーファスさんの正体、本当はね……」
永遠が震える声で切り出したその時、胸元の守り袋が眩い蒼い光を放ちました。
書庫の空気が震え、通信のノイズ混じりに、あまりにも聞き馴染みのある、けれど届くはずのない声が響きます。
『……桜。久しぶりだな。ずいぶん……老けたか? 歳をとったお前を見るのは、不思議な気分だ』
「え……っ、お兄ちゃん……?」
**桜**が、弾かれたように立ち上がりました。2026年の今から16年前。55歳でこの世を去った、加茂家の前当主であり、彼女の15歳年上の最愛の兄——加茂 時行。
『時行……義兄さんなのか!?』
義弟である**春樹**も絶句します。
『ああ。死後、俺の魂は異世界へ流れ、リーファスという名の赤子として転生した。……先日、お前たちの前に現れたのは、あちらの世界のトラブルで偶然転移してしまったからだ。……加茂の家を守るためなんて殊勝な理由じゃない。ただの、事故のような再会だったんだ』
時行は自嘲気味に笑いました。
けれど、その声には隠しきれない慈しみが滲んでいます。
◇◇◇◇◇
「事故でも……何でもいいわ。お兄ちゃん、また会えた……!」
涙を流す桜に、リーファスの声は厳しさを帯びて告げました。
『感傷に浸る時間はなさそうだ。俺がこの世界へ「偶然」戻ったことで、次元の壁に傷がついた。陰陽寮長・**土門 観山**がそれを見逃さず、異世界の魔神を招き入れようとしている。……俺がこの世界へ戻らなければ、起きなかったはずの災厄だ』
土門は、加茂直系の血を引く桜か永遠を、魔神降臨の生贄に捧げようとしていました。
かつて時行が愛し、守ろうとした妹。
その存在が、今度は彼の「帰還」のせいで危機に晒されている——。
『トワ、ジル。……俺の尻拭いをさせるようで心苦しいが、力を貸してくれ。ジル、トワに「英霊の座」の概念を接続しろ。今のトワの純粋な霊力なら、俺の力の断片を現代の術式として振るえるはずだ』
◇◇◇◇◇
(承知しました、主。……さあ、トワ、ボクの核に触れて!)
ジルの体が青い粒子となってトワを包み込みました。
トワの意識に、叔父が異世界で文字通り「英雄」として戦ってきた記憶、そして数多の英霊たちの武勲が流れ込みます。
「これが……叔父さんが向こうで生きてきた、証……」
トワの制服の上に霊気の衣が纏われ、その瞳にはリーファスと同じ、揺るぎない蒼炎が宿りました。
16年前に逝った叔父から、現代を生きる姪へと、魂のバトンが渡された瞬間でした。
「……トワ。私のお兄ちゃんが繋いでくれた縁よ。この世界を……私たちの日常を、守って」
桜が、自身の髪を束ねていた加茂家伝来の組み紐をトワの手首に結びつけました。
「——行ってくるわ。お父さん、お母さん、リクト! 叔父さんが『たまたま』戻ってきたこの場所を、最高の場所に変えてみせるんだから!」
◇◇◇◇◇
夜の京都、不気味な黒雲が渦巻く京都御所へと向かって、少女と黒猫が飛び出しました。
(トワ、主があっちで悪魔を退治してる間に、こっちはボクたちが土門を叩き潰すよ!)
「ええ、ジル! 叔父さんに『私に任せて正解だったでしょ』って、笑って言ってやるんだから!」
学生服をなびかせ、蒼い光の尾を引いて夜空を駆ける永遠。
異世界の英雄となった叔父の背中を追い越し、少女は今、現代最強の陰陽師としての第一歩を踏み出しました。
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