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番外編1:魂の再会、黒猫の使者ジル

「……あいつ、本当に帰っちゃったんだな」


**加茂カモ 永遠トワ**は、制服のまま書庫の長椅子に身を投げ出し、胸元の「お守り袋」を見つめていました。

突然現れたイケメン従兄、リーファス。

圧倒的な力で自分たちを救い、風のように去っていった彼。

永遠の心には、名前の付けられない複雑な感情が渦巻いていました。


その時、お守りが脈動するように蒼く発光しました。


『——トワ、聞こえるか。……無事に異世界こちらへ戻れた。心配をかけたな』


「リーファス!?」

跳ね起きた永遠の耳に届く声。

それは以前よりずっと優しく、どこか慈しむような響きを湛えていました。


『……トワ、一つだけ謝らなければならない。俺は時行の息子ではないんだ。……俺の魂は、お前の母親である桜の兄。**2010年に事故で死んだ、お前の本当の「叔父」**なんだ』


「え……? 叔父さん……って、あのお母さんのアルバムに載ってた……?」


『ああ。死後、異世界の赤子として転生し、強大な力を得て一時的に戻ってきていた。……初めに真実を話せば混乱させると思い、黙っていた。すまない』


永遠は絶句しました。

初恋にも似た憧れを抱いていた相手が、まさか自分が幼い頃に亡くなった実の叔父だったなんて。


『衝撃をぶつけてすまない。だが、俺が帰還したことで「転移の邪魔をした黒幕」が、俺のいなくなった加茂家を再び狙うはずだ。……トワ、俺の霊力で作った使い魔を送る。俺の代わりに、お前と家族を護る盾だ』


お守りから溢れ出した蒼い霊光が、書庫の中で渦を巻き、一匹の動物の形を成しました。


◇◇◇◇◇


光の中から現れたのは、夜の闇を溶かしたような毛並みの一匹の黒猫でした。

その瞳は、リーファスと同じ、透き通るような蒼い輝きを放っています。


「……猫? これが、叔父さんの……」

「猫とは失礼だね。ボクの名前はジル。リーファス様……いや、君の『叔父様』から君の護衛を任された特級使い魔さ」


その口から漏れたのは、生意気でハキハクとした少年の声。

直接脳内に響く**「念話」**です。


「喋った……! 本当に、叔父さんが送ってくれたのね」

「ああ。主は向こうの世界で『妖精王オベロン』とかいう英霊を使って、今も大暴れしてるよ。だから安心して。こっちの雑魚は、ボクと君で片付けよう」


◇◇◇◇◇


通信が途絶えた直後、加茂家の結界を鋭い衝撃が襲いました。


「来たよ。主の気配が消えた途端、これだ。……あれは陰陽寮の黒幕が放った**『虚無の式神』**だね」

ジルが窓枠に飛び乗り、庭を睨みつけます。


そこには、人の形を模しながらも顔がなく、真っ黒な霧を纏った不気味な式神たちが数体、影から這い出してきていました。

さらに、かつてリーファスに倒された悪魔の残滓を吸い込んだ**怪異かいぎゃく**たちが、奇声を上げて書庫の窓を叩きます。


加茂分家の者たちは既に黒幕の呪いに伏しており、動ける者は誰もいません。


「トワ、怯まないで! ボクがリーファス様の霊力をパスする。君の体で、主の技を再現するんだ!」

ジルが永遠の肩に飛び乗り、毛を逆立てます。


「——分かってるわよ! 叔父さんが守ってくれたこの家、私が絶対に守り抜いてみせる!」


永遠はリーファスが戦う背中を思い出し、指先で複雑な印を結びました。

「急々如律令きゅうきゅうにょりつりょう——蒼炎術・千鳥!」


ジルのバックアップを受けた永遠の霊力は、蒼い雷火となって放たれました。

轟音と共に、式神たちは一瞬にして浄化され、怪異たちは蒼い炎に焼かれて霧散していきました。


◇◇◇◇◇


静まり返った庭を見つめ、永遠は驚きで自分の手を見つめました。


「すごい……。私、本当にやっちゃった……」

「まぁ、ボクのサポートがあってこそだけどね。でも、今の筋の良さは主も喜ぶと思うよ、トワ」


ジルは着地すると、優雅に尻尾を振り、永遠を見上げました。


「……ねぇ、ジル。叔父さんは、向こうで元気にやってるの?」

「ああ、悪魔をボコボコにして『魔神の欠片』とやらを回収してたよ。英雄様は忙しいのさ」


永遠は少しだけ寂しそうに、けれど誇らしげに空を見上げました。


「そう。……なら、私も負けてられないわね。いつかまた会った時に、思いっきり説教してやるんだから! 正体を隠してたこと!」


京都の街に、少女の決意と、それをからかうような黒猫の念話が響きます。

異世界と現代日本。魂で繋がった二人と一匹の、新しい物語が動き始めました。


本日もお読みいただきありがとうございます!

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