西部の荒野と伝説の銃鬼
6月8日、大幅にブラッシュアップ(加筆・修正)いたしました。
キャラクターの心情や設定をより深く掘り下げていますので、初見の方も、再読の方も楽しんでいただければ幸いです!
真紅の翼――ミス・ビードル号は太平洋の激しい波濤を越え、ついに北アメリカ大陸の西海岸へと到達した。ハワイでの穏やかな休息を経て、私たち一行の表情には戦士としての精悍さが完全に戻っている。
しかし、機窓から眼下に広がる光景は、私の知る前世の「アメリカ」とは似て非なるものだった。
立ち並ぶ高層ビルも巨大な近代港湾もなく、そこにあるのは精霊の力が色濃く残る広大な原生林と、見渡す限りの赤茶けた荒野である。ヨーロッパからの入植は未だ進んでおらず、この広大な土地は、古来より住まうインディアンの諸部族によって平穏に統治されていた。
「……ここがアメリカ大陸。ロシアの凍てつく大地とは全く違う、乾いた生命の息吹を感じます」
クリスが窓の外を興味深そうに眺めながら、静かに独りごちる。
◇◇◇◇◇
私たちが地上へと着陸し、周辺 of 探索を始めた矢先、大気を激しく震わせる咆哮が轟いた。近くにあるインディアンの集落が、見たこともない異形の魔物――巨大な角を持った、岩石の皮膚を有する獰猛な野獣たちの群れに襲われていたのだ。
「師匠、あれを見て! 先住民の人たちが危ないよ!」
西施が鋭く叫ぶと同時に、私は既に地面を強く蹴って前方へと躍り出ていた。
敵は多勢に無勢。
私は広範囲の敵を一瞬で制圧するため、この乾いた荒野の地に最も相応しい英霊の魂を呼び出す。
瞬時に胸の前で印を結ぶと、私の霊力が高まり、新大陸の英霊の座へと『魂のチャンネル』が瞬く間にリンクした。
「――英霊降臨。『ビリー・ザ・キッド』」
私の手の中に、一対の鈍い銀光を放つリボルバー――『コルト・モデル1877・サンダラー』が握られた。
「……悪い。ここは通らせてもらう」
瞬き一つの間に、無音に近い速度で六発の弾丸が空間へと放たれる。
神業としか言いようのない超高速の速射によって、先住民に迫りくる魔物たちの眉間が、寸分の狂いもなく正確に撃ち抜かれていった。
乾いた銃声がピタリと止んだ時、集落を包囲していた魔物の群れはすべて沈黙し、乾いた荒野の砂塵の中に静かに消え去っていったのだった。
◇◇◇◇◇
見事に魔物を退けた私たち一行だったが、救われたはずのインディアンたちは感謝よりも先に、強い警戒の眼差しを私へと向けた。
明らかに他大陸の人種である私たちの異質な姿と尋常ならざる力に、彼らは手にした武器を頑なに捨てようとしない。
「待ってくれ、我々に敵意はない」
私の静かな呼びかけに応じたのは、部族の中で唯一こちらの言葉を解する一人の若者だった。
彼が丁寧に通訳を買って出てくれたことで、険悪な空気は和らぎ、ようやく対話の場が設けられる。
集落の長老であり、地の精霊と対話する偉大なシャーマンが、重い口をゆっくりと開いた。
「余所者よ、お前たちの力は凄まじい。だが、この地に満ちる『魔の活性化』はお前たちが持ち込んだものではないのか?」
私は首を横に振ってそれを明確に否定し、世界中で魔族を狂わせている『魔神の欠片』が、この付近のどこかに存在するはずだと理路精然と説いた。すると、長老の顔が険しく歪む。
「……やはりか。最近、この先にある巨大な渓谷の奥深くに『ディアボロ(悪魔)』が住み着いた。奴が不気味な赤黒い石の力を使い、地の精霊を汚染し、魔物たちを狂わせ操っているのだ」
◇◇◇◇◇
魔神の欠片の正確な所在は、巨大な渓谷――グランドキャニオンの最深部であると判明した。現地の人々もまた、この活性化した魔物の脅威を根絶することを切に望んでいる。
「目的地は決まった。……ここからは空より陸路の方が確実だ」
私は呪札を掲げ、荒地走破用に霊力で魔改造された頑強なランドローバーをその場に顕現させた。
「クリス、ディードリット、西施。準備はいいか?」
「いつでも行けます、リーファス様」
クリスが気丈に、そして一途な瞳でしっかりと頷き、ディードリットも凛とした佇まいで助手席へと乗り込む。
「エルフの森とは違う砂の道、ボクがしっかりナビゲートしてあげるからね!」
西施が後部座席から身を乗り出し、笑ってみせた。
私たちを乗せた四輪駆動車は、激しい砂煙を上げながら、神の造形物たる巨大渓谷を目指して荒野を爆走し始めた。夕陽に真っ赤に照らされた赤茶けた大地が、これから始まるディアボロとの熾烈な死闘を、静かに予感させているかのようだった。
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