表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/108

白銀の街と古の英雄

6月7日、大幅にブラッシュアップ(加筆・修正)いたしました。

キャラクターの心情や設定をより深く掘り下げていますので、初見の方も、再読の方も楽しんでいただければ幸いです!

ヤマトの地に平穏を取り戻し、三つ目の『魔神の欠片』を無事に手中に収めた私の一行。しかし、一息つく間もなく、私の敏感な霊感覚が次なる戦地の不穏な気配をはっきりと捉えていた。


ヤマトを覆っていた重い雲が綺麗に晴れ渡り、透き通った青空の下で、私は東の水平線と、遥か北西の彼方を静かに見据えていた。


「……欠片の気配が同時に二つ。一つは遥か東のアメリカ大陸、そしてもう一つは北西の方向だ」


どちらもここからはかなりの距離があるけれど、北西の方角から漂ってくる瘴気の方が、より鋭く、そして近く感じられた。私は即座に決断を下す。


「先ずは北へ向かうよ。ロシアのハバロフカだ」


私が空中に向かって何枚もの呪札を流れるように散らし、親指でパチンと音を立てて指を弾いた。


「――英霊降臨。『クライド・パングボーン』」


凄まじい爆音と共に、私の霊力によって限界まで強化された鮮やかな赤い翼――『ミス・ビードル号』が虚空を裂いて堂々と飛来した。私、クリス、西施、ディードリットを乗せた真紅の機体は、白波の立つ日本海を軽々と飛び越え、凍てつく極寒の大地へとその機首を力強く向けたのだった。


◇◇◇◇◇


ハバロフカに到着した私たちを待っていたのは、幻想的で美しい冬景色などではなく、人々の悲痛な悲鳴と、肌を刺すような禍々しい冷気だった。

白銀の街を埋め尽くしていたのは、本来なら悪戯好きで愛らしい姿をしているはずの氷の精霊、ジャックフロストたち。しかし、彼らの丸い瞳はどす黒い魔力によって濁りきり、その体躯は周囲を拒絶するような鋭い氷の棘に覆われた『邪霊』へと完全に成り果てていた。


「ひゃっはー! 凍れ、全部凍っちゃえ!」


狂気に満ちた甲高い叫び声と共に、邪悪なジャックフロストたちが容赦なく冷気の弾丸を放ってくる。


「させません! ――『シャドウ・シールド』!」

クリスが瞬時に漆黒の影の盾を展開して冷気を防ぎ、その僅かな隙間から、西施が弾かれたように勢いよく前方へと飛び出した。

「リーファス、見てて! これでも喰らいなよっ! ――『雷神脚』!」


西施の剛速の鋭い蹴りがジャックフロストの胴体を正面から木端微塵に粉砕し、ただの粉々の雪へと変えていく。ディードリットもまた、精霊の風を美しく纏わせた刀で、襲いかかる敵を次々と華麗に両断していった。しかし。


「ええっ、嘘でしょ!? すぐに元通りじゃん!」


西施が驚愕混じりの、どこか悔しそうな声を上げた。

砕け散ったはずの雪が、まるで磁石に猛烈に吸い寄せられるかのように一箇所へと集まり、ほんの一瞬でジャックフロストの姿を完璧に再構築してしまったのだ。どれだけ物理的な打撃や斬撃を与えても、周囲に無限に存在する雪が、彼らの肉体を何度でも修復し続けてしまうのだった。


◇◇◇◇◇


「物理的な破壊だけでは、この地の霊脈ごと汚染されてしまった精霊は止められない。……みんな、下がってくれ!」


私は手にした呪札を構えながら、静かに仲間たちの前に出た。今回、私がその魂に呼び出したのは、ケルトの神話に名を残す偉大なる不屈の勇士。


「――英霊降臨。『フィン・マックール』」


私の手の中に現れたのは、美しくもあらゆる禍々しきモノを退ける、神聖なる輝きを放つ名剣。

「――その不浄、私の智慧と刃で断ち切ろう。『オルラスハラ(白き閃光の如き裁き)』」


私が手にした神聖な剣を、白銀の地へと真っ直ぐに突き立てると、静かな波紋のような黄金の霊力が雪原の隅々まで一気に駆け抜けた。それは単なる物理的な衝撃波ではない。ジャックフロストたちの核にねっとりとこびりついていた『魔神の欠片』の忌まわしい残り香を、強引に剥ぎ取り、一瞬で浄化消滅させる絶対の力。


「ホォォォ……ッ!?」

それまで無限に修復を繰り返していたジャックフロストたちが、神聖な浄化の光に包まれながら、元の純粋で愛らしい精霊の姿へと戻り、そのまま天へと昇天するようにして静かに消え去っていった。


◇◇◇◇◇


無さに戦闘を終えた私の元に、この街の生き残りである一人の魔術師が、肩で息をしながら必死に駆け寄ってきた。

「助かった……。だが、これはほんの序の口だ。今、ここからさらに北にあるブレヤ山脈が丸ごと巨大な『ダンジョン』へと変貌し、そこからこの恐ろしい瘴気が絶え間なく溢れ出しているんだ……!」


私は静かに北の重苦しい空を見上げた。そこには、かつてヤマトで激突した織田信長が発していたものと同質――あるいは、それ以上に歪んで肥大化した禍々しい魔力の渦が、巨大な山脈を丸ごと飲み込むようにして渦巻いていた。


「……ブレヤ山脈か。どうやら、そこに四つ目の欠片が眠っているようだ」


ミス・ビードル号のプロペラが、次なる戦いに向けて再び凍てつく冷気を鋭く切り裂く。

私たち一行は、冷酷な白銀の迷宮と化した魔の山脈の奥深くへと、迷うことなくその足を進めるのだった。



本日もお読みいただきありがとうございます!

もし「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ページ下部の『☆☆☆☆☆』から応援していただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ