黎明の誓いと一番弟子の奥義
6月7日、大幅にブラッシュアップ(加筆・修正)いたしました。
キャラクターの心情や設定をより深く掘り下げていますので、初見の方も、再読の方も楽しんでいただければ幸いです!
京都を重苦しく覆っていたすべての瘴気が綺麗に晴れ渡り、聖樹ユグドラシルの枝からは、瑞々しい若葉が次々と芽吹き始めていた。
私たち一行は、力強い復興の兆しを見せる京都御所の一角で、しばしの穏やかな休息を楽しみながら、次なる過酷な旅への準備をそれぞれのペースで整えていた。
爽やかな朝日が心地よく差し込む紫宸殿の奥、ハイエルフの帝である天照が静かにその目を開けた。彼女の美しい瞳には、かつての清廉で神聖な光が完全に宿っている。
「……偉大なる守護者、リーファス殿。あなたが再びこの国を、我がヤマトを絶望から救ってくれたこと、心より深く感謝します」
天照は私の前で深く頭を下げた。彼女の透き通った瞳は、私の魂の奥底に静かに眠る、かつての天才陰陽師・賀茂時行の面影を確かに感じ取っていたようだった。
「私はただ、陰陽師としてやるべきことをやったまでだ。天照、これからは君が、この美しい国の守護を頼む」
私の凛とした言葉に、すぐ傍らに控えていた新選組副長・土方歳三が、使い慣れた愛刀・和泉守兼定の柄を力強く握りしめた。
「リーファス殿、俺はここに残る。魔王信長に荒らされちまったこの国には、まだ片付けなきゃならねぇゴミが山ほど残ってやがるからな。……新選組の『誠』の旗、今度はこのヤマトの真の再興のために捧げさせてもらうぜ」
「ああ。土方さんがここにいてくれれば、これほど心強いことはない。……すべてが片付いたら、またいつか、美味しいお酒でも一緒に飲もう」
二人の男は、言葉少なに固い握手を交わした。土方は新世界の新たなる守護者として、このヤマトの地で再びその不屈の剣を振るう決意を固めたのだ。
◇◇◇◇◇
御所の広々とした広場では、西施が一人、激しい爆音を立てて空間を鋭く蹴り抜いていた。彼女の足元には、これまでの修行の激しさを物語るように、無数の深いひび割れが縦横無尽に走っている。
「リーファス! 見ててよね、ボクが完成させた最高の新技!」
西施の勢いのある呼びかけに誘われて、私、クリス、ディードリットが自然と広場へと集まる。西施は和装の袴の裾を少しだけ高く捲り上げ、不敵に、けれどどこか私の反応を伺うようにあざとく笑ってみせた。
「ボクはリーファスの一番弟子だからね。いつまでもただ守られてるだけの、可愛いだけの女の子じゃ嫌なんだ!」
西施が重心を深く腰へと落とす。彼女の華奢な全身から溢れ出した強大な魔力が、高度な内功によって極限の一点へと圧縮され、そのしなやかな両脚にバチバチと青白い激しい火花を散らせていく。
「いくよ……『雷神脚・極』!!」
一閃。右の鋭い廻し蹴りが周囲の空気を盛大に爆ぜさせ、その凄まじい反動を一切殺さぬまま、滑らかに軸足を入れ替える。
二閃。左の後ろ廻し蹴りが真空の鋭い刃を生み出し、さらにその回転速度を狂気的なまでに加速させていく。
三閃――トドメとして放たれた右の廻し蹴りが空間を捉えたその瞬間、体内で蓄積されていた衝撃波のすべてが、臨界点を一気に突破した。
「ドォォォォォンッ!!!」
流れるような三連撃が生み出したのは、単なる打撃の衝撃ではなかった。真横に向かって巨大な雷の竜巻が発生し、広場に残されていた無数の岩や瓦礫を一瞬にして粉砕、跡形もない塵へと変えて広範囲を完全に殲滅してみせたのだ。
「……ほう。あの超高速の連撃を、魔力と内功のコントロールだけで完璧に繋げたんだね。上出来だよ、西施」
私の心からの称賛に、西施は額に浮かんだ汗をそっと拭いながら、これ見よがしに私へと顔を近づけて、誇らしげに胸を張ってみせた。
「えへへ、どう! これでこれからの旅は、ボクが先陣を切ってリーファスをお守りしてあげるからね、師匠?」
◇◇◇◇◇
これで、始まりのトゥラン皇国、大牙帝国、刻んだヤマト。世界に散らばる七つのうち、三つの『魔神の欠片』を無事に回収したことになる。
「残り、四つですね」
クリスが愛用の手帳を静かに閉じ、遙か東の水平線を見つめた。
「あの魔王となった織田信長ですら、手にした欠片はたった一つを取り込んだに過ぎませんでした。……もしも、すべての欠片が一つに揃ってしまった時、一体何が起きてしまうのか……」
ディードリットが自慢の愛刀を腰へと静かに差し、優しく、けれど凛とした声で告げた。
「これから先、どのような未知の脅威が私たちを待ち受けていようとも、私たちはただ一緒に進むだけよ。……そうでしょう、リーファス。あなたはどこまでだって、世界を導いてくれるはずわ」
私はすぐには答えず、ただ静かに朝焼けに染まる東の海を眺めていた。
そこには、まだ見ぬ未知の広大な領域と、私たちを待つ残りの四つの欠片が存在している。
「世界のすべての歪みを完璧に正すまで、私の陰陽道は決して終わらないよ」
美しく赤く染まる波打ち際。
私は、次なる新たなる運命が静かに待ち受ける水平線の彼方を、その鋭い碧眼でじっと見据えていたのだった。
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