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Sランク達の凱歌

6月1日、大幅にブラッシュアップ(加筆・修正)いたしました。

キャラクターの心情や設定をより深く掘り下げていますので、初見の方も、再読の方も楽しんでいただければ幸いです!

――エジプト・クフ王のピラミッド:【剛】と【智】の蹂躙――


灼熱の太陽が遥か地平線の彼方へと沈み、今度は全てを凍てつかせるような極寒の砂漠が広がる夜。

 数千年の歴史を宿す巨大なクフ王のピラミッドの最深部、王の間へと続く暗澹たる大回廊では、無数の古代の罠と、壁から這い出し続けるアンデッドの軍勢が不気味な咆哮を上げて侵入者を阻んでいた。

 だが――地上最高峰の物理的暴力の前には、その歴史すらもただの紙屑に等しかった。


「ガハハハハッ! 脆い、脆すぎるわ! 冥府の軍勢とやらが、この程度か! 貴様ら、骨の髄まで干からびておるのではないか!?」


凄まじい大気の震動とともに、身長三メートルに達する巨体が、押し寄せるアンデッドの包囲網を文字通り単機で粉砕していく。

 『獣王』ガルーダ・レッドメイン。

 燃え盛るような黄金のたてがみを持つ最強の獅子獣人は、己の鋼の肉体という究極の鎧だけを武器に、群がる古代のミイラや頑強な砂のゴーレムを、一撃ごとに木っ端微塵へと叩き割っていた。


「おいおいガルーダ、あまり暴れすぎるな。貴重な古代遺跡の構造データが、君の脳筋パラメーターのせいで全て消し飛んでしまうじゃないか」


ガルーダが力任せに開けた穴から悠然と進み、残存する敵を幾何学的な魔力ミサイルの雨で精密に掃討していくのは、『機巧卿』レオナルド・アークライトだ。

 彼が身に纏うのは、重厚な金属光沢を放つ自律型魔導アーマー。背部に展開された無数の明滅するセンサー群が、迷路のような内部構造と、床や壁に仕掛けられた致死の罠を瞬時に解析・無力化していく。


「脳筋の露払いのおかげで、このエリア一帯を汚染している魔力路の解析は完了した。……結節点のコアは、この分厚い隔壁の奥だ」

「おう! ならば能書きは不要! 扉ごとぶち抜くまでよォ!!」


ガルーダが拳に限界以上の黄金の闘気を集中させ、爆発的な踏み込みとともに放った一撃が、数メートルはある古代の石扉を消し飛ばした。

 崩れ落ちる瓦礫の向こう、広大な王の間に鎮座していたのは、四天王の瘴気によって呼び覚まされた、山のような巨体を誇る「呪砂のスフィンクス」、そしてそれを操る上位魔族の姿であった。


『愚かな人間どもめ、四天王筆頭たる我が主の儀式を邪魔することは――』

「御託はいい!! 俺の拳と、どちらの頭蓋が硬いか語り合おうじゃねえかァ!!」


魔族の口上を完全に無視し、ガルーダが床の石畳を陥没させて跳躍した。音速の壁を突破した獅子の拳が、スフィンクスの顔面を容赦なく捉え、その巨体を強制的に仰け反らせる。

 間髪入れず、レオナルドの魔導アーマーが機械音を立てて変形。両腕に集約された砲口から、極太の高出力魔力レーザーが一条の濁流となって解き放たれた。


出力最大フル・ブラスト。塵一つ残さず、光の粒子へと還れ」

「これぞ我が全力の一撃! 【獣王烈覇じゅうおうれっぱ】!!」


圧倒的な物理的暴力と、時代を先取りした超弩級の科学魔術の融合。

 巨大なスフィンクスは一瞬にして砂塵へと還り、背後にいた上位魔族は悲鳴を上げる間もなく、その身を灼き尽くされて跡形もなく消滅した。


◇◇◇◇◇


――ギリシャ・アテネ(パルテノン神殿):【不死】と【聖浄】の奇跡――


一方、同じ時刻。ギリシャの小高い丘に建つ、かつては白亜の美しさを誇ったパルテノン神殿。

 古代の清らかな神聖に満ちていたはずのその場所は、今や禍々しい紫色の瘴気に塗り潰され、大理石の美しい柱には脈打つ異形の肉塊がびっしりとへばりついていた。


マナラインの結節点を護っていたのは、神話の時代に世界を恐怖に陥れた伝説の怪異――「九頭の魔毒龍ヒュドラ」。

 その九つの凶悪な首から四方八方へと吐き出される呪いの猛毒は、触れるだけで強固な大理石をドロドロに溶かし、大気を腐らせ、生命そのものを根絶やしにする地獄の雨であった。


しかし――そのあらゆる生命を拒絶する猛毒の雨の中を、「正面から悠然と歩いて抜けてくる」一人の狂骨な男がいた。


「……ふむ。少々肌寒いな。地獄の竜の吐息ブレスにしては、随分とぬるい湯加減ではないか」


全身の重甲冑をドロドロに溶かされ、生身の皮膚がじくじくと焼け焦げながらも、その傷口からは凄まじい勢いで新たな肉体が超再生していく。

 『竜殺し』ジークフリート・ドラケンブルク。

 かつて邪竜の返り血を全身に浴びて呪われた彼は、いかなる致死の傷、いかなる極大の呪いをも無効化してのける「真の不死身」の肉体を有していた。


『ギシャァァァァッ!!?』


目の前に立つ、殺しても死なない人間の化け物を前に、ヒュドラの九つの頭が混乱したように一斉に咆哮を上げる。

 その刹那、ジークフリートの遥か背後――瘴気の届かない絶対の安全圏から、天上の鈴を転がしたかのような、透き通るほどに美しい祈りの声が響き渡った。


「――大いなる主よ。穢れし地に聖なる光を、迷える魂に永遠の安らぎを」


『聖女』カタリナ・セレスティア。

 彼女が豊満な胸の前で白く繊細な手を組み、静かに祈りを捧げると、昏く濁った天の頂から、全てを優しく包み込むような圧倒的な光の柱がパルテノン神殿へと降り注いだ。


極大治癒結界――【神聖領域サンクチュアリ】。

 神の慈悲を体現する彼女の魔法は、味方の傷を瞬時に癒やすのみならず、邪悪なる魔の存在にとっては、その細胞一つ一つを内側から爆破する最悪の「浄化の毒」と化す。

 聖なる光に触れたヒュドラの肉体はジワジワと炭化するように崩れ落ち、その誇るべき不滅の超再生能力が、根元から完全に封じ込められた。


「見事な援護だ、カタリナ殿。……さて、これ以上彼女の手を煩わせるわけにはいかん。トドメと行こう」


ジークフリートが、その背に負っていた身の丈を超える巨大な大剣ドラゴンスレイヤーを静かに抜き放つ。

 再生の呪縛を解かれ、怯えを見せるヒュドラの九つの首めがけて、竜血の力によって爆発的に強化された神速の斬撃が、円を描くように一瞬にして放たれた。


「【竜滅・九頭閃】。……神の御前だ。静かに眠るがいい」


ドォスン、と地響きを立てて、巨大な魔毒龍の全ての首が同時に地面へと転がり落ちる。

 巨体が光の粒子となって崩壊していくと同時に、パルテノン神殿を覆っていたおぞましい肉塊と紫色の瘴気は、カタリナの残した聖なる余光によって、どこまでも清らかな、本来の澄み切った大気へと浄化されていくのであった。


――地上における二つの絶対的な死地は、人類最高峰のSランク探索者たちの圧倒的な力によって、ほぼ同時に、完璧なる凱歌を以て制圧された。


だが、この時、世界探索者ギルドの総長たちを含め、誰もがまだ知る由もなかった。

 彼ら地上の英雄たちが、総力を挙げ、己の命を賭してようやく勝ち取ったこの大戦果と「全く同じ時刻」――。

 光すら届かない地中海の超深層深度三千メートルという、誰もが不可能と断じた最悪の死の世界において。

 弱冠16歳の少年リーファス・カモが、傷一つ負うことなく、四天王の一角をその鋼鉄の牙で完全に噛み砕き、遥かに巨大なマナラインの浄化を一人で成し遂げていたという、そのあまりにも「規格外すぎる現実」を。


本日もお読みいただきありがとうございます!

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