無能と呼ばれた至高の器~判定の儀~
5月25日、大幅にブラッシュアップ(加筆・修正)いたしました。
キャラクターの心情や設定をより深く掘り下げていますので、初見の方も、再読の方も楽しんでいただければ幸いです!
豪奢なシャンデリアが揺れる。
まるで謁見の間のようなスミス伯爵家の広間。
5歳になった貴族の子供達が魔力を測定する「判定の儀」の最中、その場は凍てつくような沈黙に支配されていた。
この場には家族や親族、そして家中の者が勢ぞろいしていた。
「……まったく反応がないだと!?」
低く、地を這うような声が広間に響き渡った。
声の主は、私の今世の父であり、魔術師の大家スミス家の当主、オーギュストだ。
彼の目の前にある水晶玉は、私が手をかざしているにも関わらず、ただ透明な輝きを放つだけだった。
通常、魔力を持つ者が手をかざすと、その者の持つ一番強い属性の魔力の色が水晶の色を変え、光の量で魔力量が推し量られる。
「故障ではありません。旦那様。…残念ながら、リーファス様には『魔力』が一切宿っていないようです」
鑑定役の神官が恐る恐る告げると、オーギュストの視線が私を射抜いた。
それは息子を見る目ではなかった。
不良品を見る冷徹な査定を行う商人の目だった。
「スミスの血筋に、魔力無き者が生まれるなど……。しかも、その銀髪と碧眼を持ちながらだと!?」
スミス家において、銀髪と碧眼は高貴な魔術師の証とされていた。
外見だけは一族の中で最も優れている私が、中身は空っぽだと宣言されたのだ。
だが、私の目には見えている。
この屋敷の隅々、人々の肩、そして大気中に漂う、おびただしいほどの「澱み」が。
前世の日本とは比較にならない濃度の魔素、そして悪霊だ。
特に悪霊の多さは、スミス家がいかに周囲から恨まれているかを物語っている。
他の領より高い税や、当主一族の領民に対する横暴がひどいせいだろう。
だが、これらすべてが、私にとっては力の源となる!
「失せろ。私の視界に入れるな!」
父の短い宣言で、私の貴族としての人生は終わった。
周りの親族が冷笑し、家臣たちが哀れみの目を向けるなか、
私はこれで、傲慢で煩わしい実家とは縁が切れると一人ほくそ笑む。
ただ、一つだけ懸念があるとすれば――。
視線の先で、今にも泣き出しそうな、悲しい表情を浮かべている母の顔だけだった。
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