無能と呼ばれた至高の器~判定の儀~
豪奢なシャンデリアが揺れる、スミス伯爵家の広間。
五歳になった子供たちが魔力を測定する「判定の儀」の最中、その場は凍りつくような沈黙に支配されていた。
「……反応がないだと?」
低く、地を這うような声が響く。
声の主は、私の今世の父であり、魔術師の大家スミス伯爵家の当主、オーギュストだ。
彼の目の前にある水晶玉は、私が手をかざしているにもかかわらず、ただ透明な輝きを放つだけだった。
「故障ではありません、旦那様。……残念ながら、リーファス様には『魔力』が一切宿っていないようです」
鑑定役の神官が恐る恐る告げると、オーギュストの視線が私を射抜いた。
それは息子を見る目ではない。
不良品を見る冷徹な査定の目だった。
「スミスの血筋に、魔力なき者が生まれるなど……。しかも、その銀髪と碧眼を持ちながら」
スミス家において、銀髪と碧眼は高貴な魔術師の証とされる。
外見だけは一族の中で最も優れている私が、中身は空っぽだと宣告されたのだ。
(騒がしいことだ。魔力など、なくて正解なのだがな)
私は――中身が五十五歳の賀茂時行である幼児は、内心でほくそ笑んでいた。
水晶は光らない。
だが、私の目には見えている。
この屋敷の隅々、人々の肩、そして大気中に漂う、おびただしいほどの「澱み」が。
前世の日本とは比較にならない濃度だ。
これらすべてが、私にとっては力の源となる。
「失せろ。私の視界に入れるな」
父の短い宣告で、私の貴族としての人生は終わった。
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