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灰色の半年と、氷鋼の狂気

ル・アーヴルでのダンジョン攻略から半年。

リーファスとクリスの名は、フランス全土のギルドに「伝説」として刻み込まれていた。


―「銀影」の進撃―

二人はパリを拠点に、東西南北の迷宮を嵐のような速度で踏破した。


東の「翡翠の樹海」: 巨大毒蜘蛛に対し、**『ジャービル・ブン・ハイヤーン』**の王水噴霧器で外殻ごと溶かし去る。


南の「紅蓮の火山道」: クリスが火竜の炎を呑み込み、リーファスが**『エーリヒ・ハルトマン』**の戦闘機「メッサーシュミットBf109」の機銃掃射で火竜をハチの巣にする。


リーファスは無数の魔を「喰らい」、その霊力は前世の全盛期を遥かに凌駕。

クリスもまた、単独でAランクを葬る「影の暗殺者」へと成長していた。


―氷鋼の迷宮、黒装束の陰謀―

そして現在。北の難所「氷鋼の蒼宮」。第三十層。


「リーファス様……あそこです。大魔石の周りに、不浄な波長」

クリスの指し示す先、巨大な蒼い結晶の影に、ブリタニア王室直属の工作員たちが潜んでいた。

彼らはこの世界では珍しい、隠密性に特化した**「黒装束」**を纏っている。


「……よし、設置完了だ。この触媒を起動すれば、スタンピードがフランス北部の街を蹂躙する」


リーダー格の男が不気味な魔法装置に手をかけた瞬間、銀髪の少年が悠然と姿を現した。


「他人の家の庭で、爆竹を鳴らそうとするのは感心せんな。……ブリタニアの紳士諸君」

「何者だ!? ……チッ、ガキとメイドか。消せ!」


黒装束の一人が放った雷属性の魔弾を、リーファスは左手で無造作に掴み取り、**『魔霊反転』**で自身の霊力へと書き換えた。


「ご馳走様。……いい魔力だ。クリス、逃がすなよ」

「はい、リーファス様。影の拘束……完了」


― 一層の蹂躙:アル・カポネの掃射 ―

追い詰められたリーダーがヤケクソに装置を起動した。


「狂ええええ!!」

大魔石が赤黒く変色し、一層の壁から数百、数千の氷の騎士アイスゴーレムが湧き出した。

狂乱した魔物の波――スタンピードの幕開けだ。


「……少々騒がしすぎるな。クリス、少し耳を塞いでいろ」

リーファスは自身の霊力を溜め込んだ「銀の髪」を媒介に、禁酒法時代の帝王を喚ぶ。


「英霊降臨:アル・カポネ」


リーファスの手に、ドラムマガジンを備えた無骨なトンプソン・M1921が現れた。


ドバババババババババババババッ!!!

迷宮の通路を鉛の嵐が埋め尽くす。一発一発に霊力が込められた「対魔弾」が、狂乱した魔物たちの身体を文字通り削り取っていく。


「な、なんだあの魔法は……! 詠唱も陣もないのに、これほどの火力を!?」

黒装束たちが絶望に顔を歪める中、一層を埋め尽くした数千の雑魚は、わずか数分で氷の塵へと化した。


― 最深部の真神:撃滅の「聖槍」―

だが、無理やり引き出された魔力は、迷宮の最深部でさらなる「歪み」を生んでいた。

「……リーファス様、地下から何か来ます。一層の雑魚とは次元が違います!」


地響きと共に床が崩落し、最下層から這い出てきたのは、この迷宮の真の主。

全身を黒い氷の鎧で包んだ、十メートルを超える巨神――「氷獄の魔王ゼロ・ギガース」。


魔王が咆哮し、絶対零度の冷気が迷宮を飲み込もうとする。

クリスの影魔法さえ凍りつこうとする異常事態に、リーファスは静かに口元を吊り上げた。


「……いいだろう。一五歳の身体には少し荷が重いが、最高の生贄(魔力)だ」


リーファスはトンプソンを消し、溢れんばかりの霊力を一点に集中させる。

今度の媒介は、自身の全霊力を込めた印――。


「――主の加護は我にあり。邪悪を貫く一筋の光よ」

「英霊降臨:アルスターの猟犬、クー・フーリン」


リーファスの手に現れたのは、禍々しい赤色を放つ、棘に覆われた魔槍。


「死棘のゲイ・ボルグ」。


「逃げ場はないぞ、氷のデク人形」


魔王が冷気のブレスを放つよりも早く、リーファスが跳ねた。

霊力で強化された跳躍。空中、魔王の眉間に向かって、彼は必殺の槍を突き出す。


「貫け――!」


放たれた槍は、因果を逆転させ、心臓を貫くという結末を確定させる光の帯となった。

ドォォォォォン!!!

魔王の黒い氷の鎧がガラスのように砕け散り、その巨躯が内側から爆発する。


魔王が最期に放出した膨大な魔力を、リーファスは余さず**『魔霊反転』**で吸収した。

「……ふぅ。やはりこの槍は、身体に響くな」


― 収穫と宣告―

銃声と爆音の止んだ迷宮に、リーファスの涼やかな笑い声が響く。

そこには、粉々になった氷の残骸と、腰を抜かして震える黒装束たちが転がっていた。


「クリス、この男たちは生かしたままギルド本部に届けよう。イギリスの王室へ、素敵な『請求書』を送ってやる必要がある」

「はい、リーファス様。影の檻に収容しました。……魔石の回収も完璧です」


リーファスは、砕け散った大魔石の破片を拾い上げ、フッと息を吹きかけた。

「……さて。次は霧のロンドンへ、観光に行くとしようか」


この事件により、フランスとイギリスのパワーバランスは、一人の「現代陰陽師」の手によって劇的に書き換えられることとなる。


本日もお読みいただきありがとうございます!

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