六章 月の宴⑦
リセッシュ家の魔法が目的なのかそれ以外なのかは不明だが、二人にとってイヴが邪魔だったことは間違いない。陰険陰湿な扱いや虐め――正妻の娘だからという理由だけでだいぶ酷く扱われたらしい。
資料を読み進めるだけでも頭が痛くなってきそうな内容だがそれでも読み進める。正妻であった女性は、イヴと同様に魔法が使えなかったらしい。もしかしたら使わなかっただけなのかもしれないが、少なくとも屋敷の人間達は彼女が魔法を使ったところを見たことがなかったという。
唯一目にしているのは、とても“鼻が利く”ということ。
生前、何処にいても匂いだけでなんでも物事を言い当てられたらしい。それこそ、“千里眼”の魔法のように――。
(私が幼い頃に出逢ったのは恐らくこの人だったんだろうな)
資料から読み解けるだけの情報だが、確信がある。
きちんとした御礼も返せないまま、既に流行病でこの世を去っていたとは……そう思うと心が締め付けられる。
――アイリース・フォン・リセッシュ。
幼いイヴを遺して亡くなったのだ。悔いのないはずがない。
「オブシディアン。この方の墓に今度花を手向けたい。場所を探し出しておいてくれ」
「かしこまりました」
「舞踏会の準備を優先してくれて構わないからな。両方は大変だろう?」
「いえ、グランツの頼みですから。お任せください」
オブシディアンは恭しく頭を下げた。




