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六章 月の宴⑧
「ふぅ……」
グランツは椅子の背もたれに背を預けると、一つ息を吐いた。家紋が刻まれた指輪を一瞥しては、瞳を細めイヴの言葉を思い出した。
『魔法が使えなくても、いていいのでしょうか?』
切羽詰まった声と表情。
きっとずっとコンプレックスであるに違いない。
魔法が使えない者の心情を、完璧に汲み取ってやることはできない。だが、寄り添うことはできる。協力することも、一緒に悩むことも。
「魔法の有無で優劣が決まる世界のほうが……ずっと……」
言葉を紡ごうとして、ピタリと言葉を止める。
――見られている。何者かに。
まだ結界内には入っていない。だがそれでも、遠視の魔法でこちらを見ることくらいはできる。
(威嚇くらいはしておくか……)
指輪を嵌めた手で、銃の形に形作るとそれはそのまま手の中に銃が生み出された。弾を魔力で生成し、床に撃つと弾は空間から消えうせ結界の境にいる敵の元へと飛んでいく。二発、三発、四発――連続で魔力の弾を撃ち出す頃には、絡みつくような視線の影が消えていた。
「油断も隙もないものだな」
グランツが目的なのか、はたまたイヴが目的なのか。
どちらにせよ警戒するに越したことはない。
「そういえばイヴの姿が見えないな」
午後はダンスのレッスンを入れていない筈――となれば、書斎か自室にいるのだろうか。




