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六章 月の宴⑥

「ダンスの所作、オブシディアンから教えて貰ったのを復習できれば良いのだけれど……」

 そう呟きながらダンスの本を開くと、ワルツの項目までめくる。

「あった」

 そこには一連の所作を示す影と音符のマークが記載されていた。

「何かしら……? これ?」

 影のマークを指先で触れると、フワリと本の中の影が浮いた。そして目の前でグランツの姿へと変化すると影は穏やかな笑みを浮かべた。

「これ……投影魔法? 私が望んだ人の姿になってるの?」

 驚きながらも、続いて音符のマークを押す。すると案の定ワルツの音楽が本の中から溢れ出した。

「……これなら、練習できるかも」

 そう呟きながら立ち上がると、投影魔法で映し出されたグランツに令嬢らしく一礼をする。それから書庫の比較的広いエリアで一緒に踊りの練習を始めた。


 ✿ ✿ ✿


「イヴの様子はどうだった? オブシディアン」

「ええ。それはもうクタクタになりながら付いて来ていましたよ。それでもダンスの練習を放ることをしないのは偉いですね。どこかの誰かさんは、昔はよくサボっていたのに」

「……そんな昔の話を持ち出してこないでくれ」

 オブシディアンとは仲が良いとはいえ、弱かった頃の自分の弱点を曝け出されるのはなんだかこそばゆい気がする。

 先日警察官に捕まえさせた連中のことが記事になった新聞を一瞥してから、書斎で仕事をこなす。魔物の活性化も、先日のヴォルフの件以降は落ち着いていた。

「久々にイヴの情報にでも目を通してみるか」

 イヴリース・フォン・リセッシュ――リセッシュ家の長子でありながら、リセッシュ家の魔法を覚えられず棄てられる。正妻は病死。後妻であるヘスリヒとフレアリーフが実質今のリセッシュ家を牛耳っている

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