第四話 四人目の共犯者③
「おいおい何やってんだ?クイズ大会か?」
『 !? 』
不意に後ろから声をかけられる。さっきよりも一段低い声だ。
(もう一人いたのかっ!?じゃああの男の目的は時間稼ぎだった……!)
「………。」
ゆっくりと後ろを振り向く。まず腰。次に肩を。そして頭をゆっくりと合わせ、最後の抵抗をする、下を向いた情けない視線を動かす。湿った石段から続く古いドアが目に入り、斜め右後に建物の角が見え、そして地面には声の男の靴がある。視線はまだ振り返る途中である。
ふと疑問が浮かぶ。なぜ声の主は前にいる男のように真ん中に構えず、右の端っこの方に立っているのか。疑問に続けて嫌な予感が頭によぎる。視線をさらに右に移す。道の上にもう2つ、靴が並んでいた。
「ウソだろ……」
視線を上げる。後ろには二人の男が立っていた。第一印象は声をかけたほうが初老。もう一人はインテリじみた眼鏡をかけている。前の男のナイフの刃のように、インテリの眼鏡のレンズも一瞬輝くような気配がした。この世界にも眼鏡はあるのだと感心してしまう。いや呑気なことを考えるんじゃないと自分にツッコミを入れ、二人の顔を睨む。
◇
「黒……ポケット……左手……。これはチ○ポだな!」
初老の方が声を上げる。どうやらクイズの答えを言ったらしい。
「いやだからナイフ……」
ナイフ男は困惑の顔をして言った。
「何を言ってるんですかリーダー。黒いモノをポケット越しに手で握る。それより導き出される答え……つまりチ○ポジです」
インテリの口調は静かだが、その表情はうっすらドヤ顔の相を呈している。眼鏡の縁もキラりと輝く。
「ナイフだって言ってんだろ!?」
チンポジ、もといナイフ男は強くツッコんだ。
◇
後ろの二人が何をほざいているのか全く聞こえない。それよりもなんとかしてこの危機を乗り切らねばなるまい。
「カッ……カッペリぃ……」
自分でも分かるほど情けない声を出す。いや、半分はワザとだ。
「だっダイジョブよ!いや大丈夫よ!」
カッペリの声は早口で、裏返って、そして震えていたように聞こえる。
『 !? 』
左右多は彼女の言葉に驚き、恐怖した。
(こっこいつ!!!ぜってー大丈夫じゃねぇよ!だって噛んだもの!訂正し直したもの!)
「いい、落ち着くのよ。落ち着くのよアタシっ!」
カッペリ白い頬はさらに白くなり、震える額は青みがかっているように見える。
「やめろぉカッペリ!そう言って落ち着くやつなんて見たことないぞ!?」
「アタシを信じなさいっ!確かに少し疲れているけどやれるわ。絶対にアナタを守ってみせる!!!」
カッペリの口調は強いものだったが、虚勢にしか聞こえない。つーか疲れてるとか言うなよ。だが縋るしかない。味方など他に誰もいないのだ。つーわけだカッペリ、頑張れー!