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『漆黒の魔女は脳内で囁く。「魔力は物理で殴るのが一番強い」最強の宇宙艦隊造ります』  作者: 久遠
第一章 漆黒の魔女

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第10話 絶対領主の蹂躙

深夜。それは突如として起こった。

惑星レガリアの暗い夜空を、突如として無数の巨大な影が覆い尽くした。駐屯軍が保有する五千隻もの艦船が、一斉に行動を開始したのだ。

ただ事ではない重低音と遮光に気づいた領民たちは、瞬く間に大パニックに陥った。

空を埋める艦船からは、次々と揚陸艇や戦闘ヘリ、さらには巨大な魔導機動兵器までもが出撃。地上を完全に占拠するための大規模な部隊が、首府の各所へと一斉に展開されていく。



レガリアの地上にも広大な軍施設があり、本来なら街を守るための強力な対空・対宙兵器などが多数配備されている。しかし、それらは今夜、一切機能することはなかった。当然である。彼ら地上軍の連中もまた、この反乱に完全に加担していたのだから。上空も地上も、この星の武力はすべて敵へと回っていた。



普段からこの兵どもは、酒に酔った勢いでヘリや魔導機動兵器を乗り回し、民家や建物を破壊して回るような無法者たちだった。だが、今回の規模はそれらとは訳が違った。統制された軍事行動。それゆえに、領民たちにはこれが単なる暴動ではなく、最悪の事態──新領主アレスに対する、軍の明確な『反逆』であるということが嫌でも理解できた。



「アレスの化けの皮を剥ぎ取ってやる!」と息巻いていた幹部どもの言葉通り、軍は牙を剥いたのだ。

彼らの暴力は凄まじかった。



中央の各行政庁は瞬く間に占拠され、外部との連絡を絶つために通信施設は爆破・破壊。主要な交通網もすべて力尽くで遮断された。ありとあらゆる暴力行為が街中で平然と行われ、レガリアは一晩にして無法の地へと逆戻りした。

そして、彼らの最終目的──それは領主の館の占領、およびアレスの首であった。

「囲め! 鼠一匹逃がすなよ!」



領主の屋敷の周囲は、無数の戦闘ヘリと、不気味に駆動音を響かせる魔導機動兵器によって完全に包囲された。屋敷の庭園には次々と揚陸艇が強行着陸し、ハッチが開くと同時に、重武装した兵士たちが怒涛の勢いで吐き出されていく。



「突入! ターゲットは無能の領主アレスだ! 生け捕りにして吊るし上げろ!」

色めき立った兵士たちが、銃を構えて一斉に屋敷へと殺到した。

重いブーツの音が行列をなし、正面玄関の頑丈な扉が暴力的に蹴り破られる。

ガシャァァン!! と激しい音を立てて屋敷の内部へと突入した兵士たち。

彼らはアレスを捕らえ、勝利の勝鬨を上げる気で満ち満ちていた。

しかし──。



「……おい、待て。何だこれは」

先頭を走っていた隊長格の男が、不意に足を止めた。

背後に続く武装兵たちも、次々と銃口を向けたまま戸惑いの声を漏らす。

突入した兵士たちは、全員が胸の奥をざわつかせるような、妙な感覚を覚えていた。

──誰もいないのだ。



広大な屋敷の廊下は、不気味なほどに静まり返っていた。

明かりすら灯っていない闇の中、彼らの荒い息遣いと、装甲が擦れ合う金属音だけが異常なほど大きく響き渡る。



アレスはもちろん、メイドのアリシアや白銀、そしてあの老執事セバスの姿どころか、その気配すら微塵も感じられない。大軍で完全包囲し、通信も交通も遮断したのだから、逃げ出せるはずがなかった。



まるで、最初から誰も住んでいなかったかのような錯覚。

冷たい静寂が支配する無人の空間で、クズ兵たちは自分たちが巨大な『罠』の顎(あぎと)の中に、自ら飛び込んでしまったのではないかという、底知れない恐怖に包まれ始めていた。



「ここまで来るのに随分と早かったじゃないか...普段からその勤勉さを見せて欲しかったな」

突如背後からの声 振り向こうとするが執務室に入ってきた反乱兵は全員壁に大穴を開けて屋敷の外に吹き飛ばされた。

「どうした!?」

魔導機動兵器に乗る兵がなにが起こったのか確認する。すると屋敷からゆっくりと歩いてくる一人の男が現れた。レガリア領主アレスであった。



                ◇◇◇

「なっ──!?」

軍の予算を削られ、完全に逆上した兵達の一団が、武器を手に俺の執務室のドアを蹴破って乱入した、まさにその瞬間だった。



突如として彼らの背後から響いた、冷徹極まりない声。

反乱兵たちが驚愕して振り返ろうとしたが、それよりも遥かに速く、暴力的な質量と運動エネルギーの嵐が室内に吹き荒れた。

ドガァァァァァンッ!!!!!



凄まじい衝撃音。アレスが放った無属性の魔力──不可視の質量による「物理の鉄槌」が、乱入してきた兵士たちの身体をまとめて直撃したのだ。

骨を砕き肉を潰す絶望的な衝撃。反乱兵たちは悲鳴を上げる暇さえなく、執務室の頑丈な壁を巻き込んで巨大な大穴を開け、そのまま屋敷の外へと派手に吹き飛ばされていった。



「な、何が起こったんだ……っ!? どうした!?」

屋敷を完全包囲していた反乱軍の本隊──数多の『魔導機動兵器』に搭乗する兵たちが、何事かと色めき立ち、コクピットのモニターを血眼になって確認する。

もうもうと立ち込める硝煙と瓦礫の煙を割って、大穴の開いた屋敷からゆっくりと、何一つ怯むことなく歩いてくる一人の男が現れた。

黒髪を夜風に揺らし、漆黒の瞳に冷たい侮蔑の光を宿した男。

この惑星レガリアの領主──アレス・フォン・アストレアだった。

「アレスだ! アレスが出やがったぞ! 構うな、あの無能の小僧をここでブチ殺せぇぇぇッ!!」



一人の兵が通信回線で狂ったように叫んだ。

その怒号を合図に、アレスを包囲していた複数の魔導機動兵器が、一斉に巨大な魔導重機関銃の銃口をアレスへと向けた。



トリガーが引かれ、無数の光弾が放たれれば、生身の人間など次の瞬間には跡形もない肉塊へと変わる……はずだった。

しかし。

カチッ、カチカチカチッ。



「……あ、あれ? 出ねえ……!? クソっ、どうなってやがる!」

いくらトリガーを指がちぎれるほどに引き絞っても、重機関銃からは一発の光弾すら放たれない。それどころか、駆動音を響かせていた魔導機動兵器の巨大な鉄の身体が、ピタリと、文字通り微動だにせず完全に停止してしまったのだ。

「故障か……!? 」



コクピットの兵士が冷汗を流しながらコンソールを叩く。だが、表示されるステータスはすべて『システムロック:強制停止』の赤文字で埋め尽くされていた。

「おい! お前の機体もか!? 俺の機体も動かねえぞ!」

「待て、機体だけじゃない! 護身用のハンドガンも、ライフルも……すべての武

器が使用不可になってるッ!!」



パニックの連鎖が、反乱軍全体へと一瞬で広がっていく。

故障などという生易しいレベルではない。彼らが誇る五千隻の艦艇、すべての機動兵器、そして歩兵の小銃に至るまで、この戦場に存在するあらゆる「電子制御された近代兵器」が、完全に機能を喪失していた。



直後、全兵士が装着している通信インカム、そして全兵器のコックピットモニターに、強制的なノイズと共に、極めて精緻で美しい『金髪紅玉の少女AI』の3Dホログラムが割り込んで映し出された。



──『帝国軍標準暗号化プロトコル:解析完了』

──『全武装の掌握(コントロール)プロトコル:実行』

機械的な電子音声が全兵士の脳を直接揺さぶるように響き渡る。

行政府を掌握した時点で、この星の軍のメインサーバーに仕掛けられていた白銀のバックドアが、一斉に全兵器の電子脳(OS)へと侵食。電子の海を濁流のように呑み込み、敵のシステムを完全に書き換えていく。



パニックに陥る軍勢を冷徹に見下ろしながら、アレスのすぐ斜め後ろに付き従う本物の白銀が、冷たくルビーの瞳を明滅させ、完璧な美しさで一礼した。

「──マスター。この戦場に存在する全ての兵器の完全掌握完了しました。現在、トリガーの安全装置(セーフティ)は私の管理下にあります」

「ああ、ご苦労さん、白銀」



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