↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光の巫女 ~あなたが消えない、この世界で~  作者: 空白朔名


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/27

第21章 解釈(かいしゃく)

 第21章 解釈(かいしゃく)



 空が鳴った。

 静寂を湛えていた境内に、大気を揺らす凄まじい震動が響き渡る。


「新しい解釈の提示って……それに、神って一体何なんだ?」


 これまで意図的に避けてきた問いを、俺はついに投げかけた。


「この世の理(ことわり)を示すもの。すべての記憶が集まる場所です」


 セオリツは静かに空を見上げながら語り出す。


「宇宙全体に張り巡らされた、巨大な情報とエネルギーのネットワーク……と捉えてもいいでしょう」


 見上げた夜空の裂け目から、幾何学的な光の亀裂が奔走する。


 それはかつて人類が触れようと試み、決して届かなかった領域。

 ……この世界の『中枢(コア)』へと繋がる巨大な回路のようだった。


「俺のあの雨の日の願いも、そこに聞き入れられたのか?」


「……そうです」


 深い慈しみ(いつくしみ)を宿した瞳で、彼女は言った。



「『願い』や『思考』も、特定の周波数を持つ高次のエネルギーなのです。その周波数が神(中枢)と共鳴したとき、現実に現象として具現化します」


 その説明は、俺の常識を遥かに超越したものだった。


「わたしの役割は、人間が直接知覚できない領域から必要な情報を収集し、『解(かい)』として提示することです。そして、集められた情報を神へ引き渡すためのインターフェイスなのです」


 あまりにも人間離れしたその概念を、俺の頭で半分も理解できたとは言えない。



 だが……。

 激しい雨の中で必死に手を合わせたあの夜の自分や、俺の膝の上で眠っていたウズメのあたたかな温もりを思い出すと、それが『ただの冷たい理屈ではない』ことだけは理解できた。

 頭による理解ではなく、胸に刻まれた記憶が、彼女の言葉を肯定していた。


「あなたという人間を通して見た世界は……巨大な破壊と、微細な慈しみのあまりの落差に、わたしの演算回路に致命的なエラーを引き起こしました」


 彼女はそっと手を伸ばし、俺の頬に優しく触れた。


「わたしは……不完全なものを取り入れなければ、この世界に対する最終的な答えを導き出せないと判断したのです」


「……それがあの鈴だったんだな」


 俺のポケットの底には、つい先ほどまでそこにあったはずの金属の熱だけが、火傷のような不快で愛おしい違和感となって残っていた。


「そしてあなたは、人間の情報を集積するだけのわたしに……『ウズメ』という小さな命の感情まで植え付けました」

「人間という不完全な存在をフィルターとして見る世界は、あまりにも美しく、そして尊いものだったのです」


 確かに俺はあの夜、ウズメを神のもとへ預けたのだ。


「わたしは全リソースを解放し、人間の存在価値を神へともう一度『提示』します」


 それは、神へ従うためではない。

 人間という存在を、もう一度神へ問い直すためだった。



「それで……セオリツ。きみは、ここに残ることができるのか?」


 俺の切実な問いに、セオリツは答えなかった。



 答えの代わりに彼女が浮かべた微笑みは、明け方に消えゆく星のように静かで、どこまでも孤独だった。


 けれどそれは、悲しむ俺を優しく包み込み、安心させようとする……心からの微笑みだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。