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平凡な男の平凡な転生  作者: みけ
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鍛冶三昧

お待たせしました。

がんばって増量してみましたが…なかなかにきつかった。

 その日は、結局掃除と機材の把握で一日が終わってしまった。ほっておかれたピノがむくれていたが、しばらくこんな調子であることをつげる。


 「しょうがないなぁ〜適当にモンスターでも狩っているよ」


 もっと文句を言われるかとおもったが、夫の趣味に理解ある妻のような笑顔を浮かべて了承された。


 そんなわけで、次の日から気兼ねなく、鍛冶にのめり込むことにする。

朝早く工房へ出かけ水くみなどの準備を終えると、魔力炉に魔力を通して鉄を溶かす。

魔力炉は、魔力により中の石炭を燃やし空気を送ることで温度を上げ下げする仕組みのようだ。

もちろん、耐熱性の高い素材で作られていて炉自体が溶けることはない。温度計がついているわけではないのではっきりとわからないが白色に近い赤になるので2000度ぐらいまでは熱することができていると思う。


しかし、この魔力炉では、上部から入れた鉄を溶かすことはできても鍛造のために加熱することはできないことに気がついた。

しかたがないので、鋳造で、金床や鍛造用のハンマーなどを造る。ギフトの恩恵なのだろう、それだけで鍛冶のレベルがあがった。


次の日は、工房の空きスペースに、高温の火で鉄をあぶれるようにレンガを組合せた炉をつくる。

耐熱煉瓦の存在がわからなかったので、とにかく熱に強くなる組成をイメージして錬金術をつかった。レンガは少し色が薄くなりセラミックのような材質に変わる。

試しに小さく割って魔力炉へ放りこんでみたが、ドロドロに溶けた鉄のなかでしっかりと形を保っていた。

その耐熱煉瓦で組んだ炉に着火、送風、冷却、消火の機能を付与魔術で付与する。

機械的な物は何一つ組み込まれていない煉瓦に接着されただけのボタンとダイヤルが魔力を通すことで機能しはじめた。

魔力を必要とするが、補助的なものなのでさほどの量はいらない。

もうひとつ、鍛冶用のハンマーを一定の感覚でふりおろす機械を作る。もちろん動力は魔法が頼りだ。

車輪の先にはめ込まれたハンマーが、振り上げられ、降り下ろされる。

ふりおろすスピードや込める力の調整もできるようにした。

 レンガ炉に石炭を入れ、着火や送風などの機能を確認すると、昨日作っておいた羊羹よりもややほそいぐらいの大きさの鋼材をとりだす。

日本刀は、薄い欠片になった玉鋼を重ねて塊にするが、魔力炉では作れないので煉瓦で型をつくって成型した鋼材を使う。


 まずはナイフから作ってみよう。前世の友人にサラリーマンから趣味が高じて刀鍛冶になった男がおり、その友人につきあって鍛造で何度かナイフを作った経験があった。日本刀を鍛える現場にも何度か立ち会わせてもらったこともある。

 鋼材をやっとこで掴みレンガ炉で燃え盛る石炭へと埋め真っ赤になるまで加熱する。溶けだす寸前ぐらいまで加熱された鋼材をすばやく金床の上に移し、ハンマーで叩いくと盛大に火花が飛び散る。火花が少なくなるまでは、叩き詰めるように叩き、火花が収まってくると縦に伸ばすように叩く。

 叩き伸びたところを折り返し、再び過熱して叩く。縦、横、縦と伸ばして繰り返しす。もっとたくさん折り返す流派もあるようだが、友人は3回しかやらない。折り返しがすんだところで、今度は大まかな形を叩き作っていく。


 この世界に鍛造の技術は一般的ではないようだが、スキルはそれに対応しているようで、前世でやったときよりスムーズにすべての作業が行えた。

 柄を取り付ける部分まで加工を終えると刃の部分を加熱し、一気に水で冷やす焼き入れを行う。

刃文を作る必要はないのでなにも塗らずに、色から温度をみることに集中する。

ほどよく加熱されたと思われるナイフを炉から持ち上げて一気に水につけた。


じゅわぁ〜パキン!


水の湧く音と蒸気が湧く向こう側で嫌な金属音がする。

水から引き上げると、ナイフの刃の部分が半ばほどから折れていた。



あれから3日たった。

叩く時間や折り返しの回数、焼き入れ時の温度、水の温度など試行錯誤を繰り返したが、一度も成功しない。


刃が折れる、欠ける、歪に曲がる、捻れる。


前世では、質はともかく普通に仕上げていた行程で失敗を繰り返す。


ナイフと共に心が折れそうになった。


そんななかでも鍛冶のレベルは順調にあがり続け、作業の手並みは鮮やかになってくる。


記憶の中にある、友人が刀を鍛えている姿に匹敵する手並みになった時、鍛冶のレベルがMasterと表示されてしまった。


わずか3日でコンプリートしてしまったのはギフトの恩恵以外のなにものでもないのだが、鍛造は成功しない。


合間に鋳造で作り直した、ハンマーややっとこなどはウェットを唸らせるほど高品質で作ることができた。

今日も日が暮れ、これ以上は近所迷惑になりかねない時間となって、とぼとぼと宿へと帰る。


「西洋でなぜ鍛造が発達しなかったのかって?そりゃ〜おめぇ、良質の地金がつくれなかったからよ」


道すがら友人と昔、語り合った会話をふと思い出す。

壁にぶち当たったいま、彼に電話でもして相談できたらいいのに。

そう思いながら、記憶の糸をたぐる。


「良質な水と豊富な森林資源が生んだ良質の炭が、不純物のすくない地金を生んだからよ。鍛造ってのは、地金が悪いと成功しねぇからなぁ」


光明が射したような気がした。


閉店まぎわの雑貨屋で薪を一山買い込み宿へ戻る。


食事もそこそこに部屋へともどり、薪をアイテムボックスからとりだすと、錬金術を使う。


イメージするのは、高品質の炭、しっかりと炭化した高品質の備長炭へと薪を変える。


翌朝、日の出を待ちきれず宿を飛び出すと、工房に駆け込み、魔力炉と煉瓦炉から石炭を取り出す。


中の煤まできれいに拭き取り、真っ黒になった顔や体も構わずに炭を入れた。


炭でも無事に加熱され、鉄を溶かす事ができる。


叩きはじめても、火花が少ないように感じる。


今度こそうまくいくと期待と祈りを込めて焼き入れをした。


今度は折れてない。


喜んで研ぎを入れたが…


研ぎ上がったナイフは鍛冶がMasterになっているから、よりはっきりとわかるが、ひどいなまくらである。

ふたたび、試行錯誤しながら作り続けるが、日が暮れても普通のナイフ一本すら作れなかった。


帰り道、ふたたび友人である鍛冶師小林 森との会話を思い出しながら歩く。


「たの字よ、最近はすげぇよな。なんでも細かい粉末して真空のなかで高温高圧かけて作った粉末鋼合金鋼なんてのがあるんだぜ。玉鋼より、純度たけぇし、炭素やらクロムやらと混じり具合もむらがなくいい素材なんだそうだ。そんなんで、刀つくったらどんだけ切れるんだろうな。折れず、曲がらず、よくきれる、おまけに錆びずらい。鍛冶師が夢見た刀が作れる時代がくるのかもしんねぇ〜なぁ。まぁもっとも実用日本刀なんて需用がねぇがな」


リアルに斬鉄剣を目指していた友人の言葉を思い出した。

いま、その粉末鋼合金鋼が欲しかった。この世界なら粉末鋼合金鋼で鍛えた武器に需要は充分すぎるほどある。


もやもやと悩みながら宿に入り、話しかけてきたピノに生返事でこたえ、夕飯を詰めこんで横になる。

ベットに入ってからも鍛造の成功をめざした思考の迷路からは離れられない。


鍛造の成功には、もとになる鉄の品質が重要になってくる。

鉄と炭素、あとは錆びや強度のためにクロムだったかな?それらが、可能な限りむらなく均質にまざりあった鋼材がひつようだ。


どうしたら、それをつくれるのか?

近代科学の技術が粉末鋼合金鋼は無理としても、せめて玉鋼をめざしてたたら場作るしかないのかなぁ。

たたら場なら近代科学の技術よりも、伝統的な職人技だから再現がかのうなのか?


前世で炭焼き小屋なら作ったことあるんだけど・・・


えっ?炭焼き小屋?炭は・・・うん?あぁ!なるほど!やってみる価値はありそうだ。


太郎は解決案を思いつき、安心して眠りへと落ちていった。

お読みいただきありがとうございましたm(__)m


鍛冶に関して著者は素人です。ネットで読み漁った浅い知識で書いています。

つまりは、フィクションです。どうかご容赦を

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