武器をつくろう
お待たせしました。今回ちょいと長めです。
お祭りで飲みすぎた太郎が、二日酔いで寝込んでいる間に、王国軍はハチドアを出立し南へと向かっていった。
体調が回復した太郎は、魔法の練習や物資運搬の依頼のため先延ばしになっていた自分専用の武器を作ろうと動くことにする。その第一歩として祭りで知り合った鍛冶師ウェットの工房へと向うことにした。
ハチドアの中心部から森側の涙河に近い街外れに、ハンマーを2本交差させた絵と鍛冶ウェットの文字がついた看板をかかげる大きな建物がある。中からは、熱気と金属音が伝わってくる。
「おぉ!来たのか。ちょうどいい、今からブロードソードを造るところだ」
ごめんください、と声をかけて門をくぐった太郎に、赤黒い焼けた肌の上の袖なしシャツへたっぷりと汗を染みこませた中年をやや通り過ぎた男ウェットが声をかけた。
よろしくおねがいします。太郎は工房にいる全員に向けて声をかけウェットの隣へと進む。
「火傷してもかまわねぇんなら、ゆっくり見てってくれ。さぁ始めるぞ」
強面に笑みをを浮かべたウェットは、弟子らしい若者たち声をかける。
ウェットは燃えさかる炉に足踏み式のふいごで空気をおくり、炉内の温度を上げていく。ころ合いをみて弟子に指示を飛ばし、炉の上から鉄材を放り込ませる。
「昔は、魔力炉が主流で、魔力の量で温度を自由に決められたんだが、魔力が薄くなっちまった今では、ふいごでやらなきゃなんねぇ」
ウェットは、炉の方をむいたまま、やや愚痴交じりに説明しふいごを巧みにあやつる。
ほとばしる汗がシャツからあふれ背中をつたっていく。
しばらくすると、炉で加熱され溶けた鉄が流れ出してきた。
流れ出した鉄が火花を散らしながら少し下にたまったころ合いに、大きく長い柄のついた柄杓のような道具で、溶けて粘り気のある液体となった鉄を受け、すばやく型へと流し込む。
「最初と最後は混じり物が多い気がするんでつかわねぇんだ」
ふいごかから離れ、大きなペンチのような工具を使い鉄が注がれた型の上方をつかみウェットが言った。
弟子が大きな木槌をもって型の周りで待機している。
おそらく、型の中の鉄の固まり具合をみているのだろう。ウェットが真剣な目で型を見つめている。
「いまだ!たたけ」
ほどなくウェットからの合図をうけて弟子が型をたたくと、型は二つに割れて、中から、まだ赤黒く熱を持っているが剣の形で固まった鉄が現れる。その色具合からも鉄の温度を確認し十分と判断したのだろう、近くに汲みおかれた水の中へ一気につける。
水が沸く音と共にあたりには、蒸気がたちこめ工房はかなり暑くなる。冷やされ黒くなったた剣は台の上におかれた。
「これで、このまま一晩おいて冷ます。冷ました後は研ぎをいれて仕上げる。こっちに昨日やった剣があるから研ぎも見てくか?」
満足のいく仕事だったのか笑顔で汗をふいたウェットは隣の部屋と太郎を案内する。
隣の部屋には、足踏み式のろくろがあり、手桶に水がくみおかれていた。一日冷やされた剣を手に取り、砥石に水を差しろくろを回転させ研ぎ始める。
「研ぎがかなり重要な作業だ。型でも調整するが、ここで剣の鋭さやバランスを調整する。炉の温度、型割のタイミング、冷ましの時間、研ぎが剣の良しあしを決める作業だな」
回るろくろと剣をみつめ砥石にあてながらウェットが言う。
「鍛造はしないのですか?」
いま、見せてもらったのは鋳造だった。もしかして、鍛造はしないのか?それとも、教えてくれないのか?
「鍛造?なんだそりゃ、聞いたことないな」
ウェットは首をかしげる。太郎は、あわてて鍛造について簡単に説明した。
「柔らかいぐらいに熱した鉄をハンマーで叩き鍛える方法なんですが、しりませんか?」
ウェットは首をかしげながら答える。
「叩いて鍛える?剣や鍋なんかを直す時は、柔らかくなるまで熱して叩くが、はじめっから叩いて造るやりかたなんて、聞いたこたぁねぇなぁ・・・失われたドワーフの秘伝ってやつかもしんねぇが、ここらじゃきいたことねぇぜ」
ウェットの言葉には嘘はないようだ。実際、この工房には、大きな木槌やハンマーはあるが、鍛造に必要な鉄の大槌は見えない。そういえば、西洋の剣は鋳造だったと聞いたことがある。
できれば、自分の武器は鍛造で作りたい。となれば、自分でなんとか作るしかないようだ。
「鍛冶の工房をお借りできるところってないんでしょうか?自分でも少しやってみたいと思いまして」
旅を続けたい太郎は、工房を持つわけにはいかない。なんとか、借りられる工房がないものか丁寧にウェットに尋ねた。
「それならよ、奥にある、昔の工房でよかったら、使ってもいいぜ。火事をださねぇことと、掃除、後片付けはしっかり頼むぜ。タロウは面白いもん造りそうだし、特別に貸してやるよ。上等なもんはねぇが、資材もなるべく都合してやる。ちょいとまってな、いま案内してやる」
まだ砥石から目をそらさず答えたウェットの言葉は太郎にとって理想的な提案だった。
しばらくして、研ぎがひと段落し、柄や鍔付け鞘の作成を弟子に任せたウェットが古い工房へと案内してくれる。
「魔力が満ちていた昔、うちの初代から使ってた工房だから、ちぃと古くせぇが、なんか壊せなくてな。一応、炉はふいごでも使えるようにしてある。まぁここのところに、魔水晶を入れたほうが手っ取り早いけどな」
若干、埃があるが、綺麗に手入れされているその工房は、ウェットが作品に悩んだり新作を試作するとき以外は使っていないらしい。魔力を使うのを前提としているため、現役の工房より近代的に思えてくる。
「使っていい資材は、表に積んどくよ。型割りで手がいるなら言ってくれ。面白いもん造ってくれよ」
ウェットはそう言い残すと仕事にも戻っていった。
さて、まずは掃除と鑑定を使って道具の使い方を覚えることにしよう。
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