女の敵
お待たせしました!
スライムの襲撃は、早期に撃退したため、野営している者の睡眠時間とレトリーのプライドを削っただけですんだ。
「魔法で負けても、まだ剣では負けないっす。魔法も剣も使える魔法騎士をめざすっす」
翌朝には、レトリーも立ち直り、少し遅めの出発となる。
旅は順調に進み、早めの昼食を森の手前ですませ鬱蒼とした森へと足を踏み入れた。
森のもっとも深いあたりを通り抜け、日が傾き始めたころ茂みからそれはあらわれた。
でっぷりとつきだした腹、短く太い足、薄汚れた腰布に所々ちぎれた革鎧を身に付けて、棍棒や錆びた剣や槍を持っている。
頭部には髪はなく、垂れたほほと大きく上を向いた鼻からフゴフゴと息をする姿はまさに豚だった。
「オークだ!殺るぞ!」
ラッシュの声と共に騎士たちはすばやく馬を降りて戦いの準備を整える。
「オークは足が遅いので駆け抜けたら振りきれるっす。でも、たちが悪い魔物なんで狩れる戦力があるときは狩るっす」
馬をまとめながら、フライボードをおりた太郎にレトリーが言う。
「オークは、女の敵だからね〜狩った方がいいよ」
オークは5匹、騎士たちが突破されないかぎり出番はないのだが、ピノも槍を構えていた。
「オークは雌がほとんど生まれまないっす。だから、異種族の女をさらって繁殖するんすよ。大抵が、ゴブリンやコボルトっすが、たまに人間の女性を襲うことがあるんすよ。だから、女の敵って呼ばれてるっす」
疑問におもって尋ねる前にレトリーが教えてくれる。
「それに、お肉がすごく美味しいんだよ。ついつい食べ過ぎて太っちゃうから、だからお肉になっても女の敵」
ピノがオークを見る目は美味しいご飯を目の前にした時と一緒だった。
騎士たちとオークの戦いは騎士の優位にすすんでいた。力はあるが、素早くはなく、5匹で連携するわけでもなく、闇雲に武器を振り回しながら突進するだけの攻撃しかしないオークを騎士たちは互いに連携し、盾で攻撃をそらし、体当たりをかわし的確にダメージを積み重ねていく。
オークは皮が厚く、体力もあり頑丈なのだろう、騎士の剣を受けても簡単に倒れず、傷の痛みからか雄たけびをあげて暴れまわる。
頑丈なオークを一撃でどうにかするには、片手持ちの広刃の直剣よりも大きな武器が必要だった。だから騎士たちは、でたらめに振り回されるオークの攻撃から自分と仲間に当たるものだけを防ぎ、隙を見つけては剣をたたきつけ傷をふやしていく。
手負いになったオークの怒りがピークに達し激しい狂乱のままにしばらく暴れるが、突然糸が切れたようにオークの動きが鈍くなる。傷からの出血により血が足りなくなったのだろう、手早く騎士の一人が動作が緩慢になったオークの背後に回り深々と剣を心臓に突き立てた。痙攣とともにうごかなくなったオークを捨て置き、別のオークへと攻撃を集中する。
「さっ!お肉をはぎ取ろう!」
ピノはバックから、鉈とナイフの中間のような刃物を取り出すと、うごかなくなったオークに嬉しそうにかけよった。
手慣れた様子で、刃物をいれ皮をはぎ、内臓を取り出し、肉の塊を切り出していく。
「かた肉~、かたロース~、バラ肉~、ロースにヒレにもも肉~♪美味しい♪美味しいお肉さん♪」
ピノは妙な節をつけてオークを解体していく。
騎士たちがオークをすべて倒し終える間に、先に倒されたオーク三体が解体され、だいたい100キロを超えるであろういろんな部位のお肉が手に入った。
残り二体の解体はあきらめて急ぎ出発したのだが、森を抜けてしばらくしたところで日が暮れてしまった。
魔法の明かりをつけて強行する案も検討されたが、危険が大きすぎるので野営することになる。
夕食は騎士のスープの他に、焚き火を起こして、オークの肉を炙った。
塩を軽く降っただけの肉だが、ほどよく脂がのり、癖のない肉の旨味がたまらない。
前世で食べたイノブタに近いような味だ。
前世で好きだったあれを再現するために頑張ることにする。
醤油をつくったときのように、アイテムボックスから麦と大豆、それに塩を小さめの桶に水と一緒にいれ、イメージを充分たかめて錬金術を発動する。
かなりの魔力を消費したが、うまくできた!
前世で食べていた、赤めの田舎味噌が桶に満ちている。
味噌と酒をまぜ、豚肉にたっぷりぬって昆布にくるみ革袋にくるむ。
明日ぐらいには味噌となじんで、美味しいみそぶたが食べれることをいのりつつ休むことにした。
少々短いですが、きりのいいところにしました。
お読みいただきありがとうございました。




