王都ふたたび
お待たせしました。
コボルトの襲撃があった以外はなにも起きず、天候もよく順調に旅が進んだ。
野営の見張りも騎士たちがやってくれたので、ぐっすり眠れた。あいかわず、気が付くとピノが懐に潜り込んできているが、孫をみているような気分になって微笑ましくとがめる気はおきない。
翌日、草原に夕日が沈むころ、王都が見えてくる。
懐かしいと言うほど長く住んでも、留守にもしていないが、遠くに見える王都は出発したときとやや違った印象を見せていた。
大都会のネオンとまで行かないが魔法の明かりがそこかしこに煌めき、なによりもあの高く強靭な偉容をみせる城壁がない。
疑問に思いながらも、馬を止めてまで尋ねることではない、近くなったらわかるだろう。
馬に揺られていた行きと違い、フライボードに乗っている帰り道は肉体的にも精神的にも余裕がある。
王都が近づいてくると、街道が込みだしたため、騎士たちは街道はずれ街道わきの草原を走っているが馬術に巧みであるためか速度を緩めることはない。
王都に向かう街道は、混んでいるから、混雑になり、渋滞になり、とうとう門まで行列ができてしまった。
近づいてみると、城壁は完全になくなったのではなく、1メートルほどの高さで残っており街と草原を隔てている。
荷馬車にのった商人とその護衛、5〜6人の冒険者パーティーと思しき集団、たくさんの収穫物をせおった農民らしき人々、さまざまな人を追い越して一行は門へ到着した。
さすがに騎乗したままで通過はできずみな馬をおり、太郎もフライボードからおりる。
「騎士団任務である。まかり通る」
ラッシュが大声をあげると、門番をしていたマクバがでてきて、ラッシュの顔を確認したようだ。
「騎士さま方のお通りだ、すまないがみんな道をあけてくれ」
マクバの声に、行列をつくっていた人々は、間をつめてわきによける。
「みんな、すまんな!ウィンディアに栄光あれ!」
ラッシュの号令のもと騎士たちは右拳を胸にあてる騎士礼をして道をあけてくれた民に感謝をしめした。
門を抜けると、ハチドアへ出掛ける前は、人もまばらだった通りに多くの人が行き交い、屋台なども数多くでて、肉の焼ける香ばしい臭いやスープの美味しそうな臭いが漂っている。
騎士団は王宮に向かい報告と物資の確認を行うというので、明日の朝まで別行動となった。
太郎のアイテムボックスは入り口を大きく広げられるので、荷物を入れるのは出発の直前でもかまわない。
太郎とピノは、ひとまず冒険者ギルドにむかった。
冒険者ギルドの扉をあけると、こちらも中の様子は一変している。
カウンターには受付とおぼしき女性が3人もいて、いずれにも行列ができていた。
依頼掲示板の前には人だからりが出来ていて、ロビーの方では、交渉や相談などをしている人々でごった返している。
とりあえず、列にならんだ太郎は突然柔らかなものに包まれた。
「おかえり〜♪タロウ!大変だったわね。もう怪我は大丈夫?」
柔らかなものの正体はプレラだった。
不意をついて太郎を抱きしめ頬擦りしたあと、全身をなぜつている。
「プレラさん、いま帰りました。もう大丈夫ですよ」
太郎は、なんとかプレラを引き剥がして答える。
「ここじゃ騒がしいから、こっちにきてもらえるかしら」
プレラに案内されるままに、カウンターの奥の扉をくぐり、階段を昇ると立派なソファーとテーブルのおかれている部屋へと入った。
壁や床が厚いのだろう、下の喧騒が嘘のように静かなその部屋はギルドマスターの執務室らしい。
「みんなが帰ってきたら、この部屋に押し込められちゃって、みんな忙しいのに私は暇なのよね」
お茶にお菓子を出してきたプレラがいった。
「帝国軍がいなくなったあと、周辺の村や山に逃げてた人が帰ってきたのと、さっぱり出なくなっていたモンスターが出るようになって、それを目当てに冒険者も集まってきていてね。まだ一月もたってないのにすごい賑わいでしょ」
プレラは依頼書と金貨を出してきながらいう。
「今回の依頼は、予定外の戦闘があったこととタロウが運んだ量が多かったので、ボーナスがついて5金貨になりました。次の依頼も同じ報酬になります。よかったら、こことここに署名おねがいね」
5大銀貨のはずの報酬が10倍になった?いや、ピノと二人分だから5倍か。
「受付に並ぶより早くすんだでしょ。明日は早いんだろうけど、よかったら旅の話を聞かせてくれないかしら」
太郎とピノは美味しいお茶とお菓子を食べつつ、土産話を始めた。
お読みいただき、ありがとうございました。




