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平凡な男の平凡な転生  作者: みけ
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久しぶりの感覚

お待たせしました!

 ピノと二人、またたくまに一匹分の鰹のタタキを食べきってしまった。


あわてて、もう一匹先程の出店で鰹を買い求め、鰹のたたきを作る。


完成したころには、日も少し暮れ始め、徳利のような素焼きの瓶を下げて老漁師がやってきた。


『先程は、名も名乗らずに失礼したのぉ。わしはミィング。これでも若いころは冒険者として暴れたこともあったんじゃよ。針玉にあいそうな酒があったら持ってきたぞ。こいつで一杯やろう』


 ミュングはしわ深い顔をさらにしわだらけにしてにやりと笑う。


毛布を引いて、真ん中に鰹のたたきと塩ウニをならべ、三人で車座になって座る。


ミュングが持ってきた木のお椀のような盃に満たされたのは、かすかに飴色を残した透明の酒。


 『美味い食い物に出会えた幸運に!』


 ミュングは盃を掲げた。どうやら、この世界にも乾杯はあるようだ。


 太郎は、その酒を一口飲み、目を見開く。色や芳しい香りからもしかしてと思っていたが、それは、芳醇な味わいとさわやかな辛さを持つ日本酒だった。


 懐かしさと、五臓六腑にしみわたる美味さに思わず太郎は一気に飲み干す。


『ほぉお気に召したかね。さぁもう一杯。こいつは、南にある沼の周辺でとれるライスの実をつかってつくったライスワインという酒じゃ』


 ミュングは太郎の盃に酒を満たしながら言った。


そして、塩ウニを小さなスプーンですくって口に運ぶ。

 ミュングの口の中に、ウニの塩とうに本来の甘さが組み合わされた独特の甘しょっぱさとより濃厚になったうまみが広がる。

すかさず、ぐびりと杯をかたむけて、辛口の酒でそれを流す。すると幸せな余韻を残して、酒の辛味とともに流れ去っていく。


『こりゃぁ美味いのぉ、酒が進む、どれ、こっちもいただくかの』


 今度は鰹のタタキを一切れフォークで差し口に運ぶ、あぶられた身の香ばしさ、鰹の身の濃い旨味、ポン酢の酸味としょっぱさが混然一体となってミュングを襲う。


 『なんじゃこりゃ〜、これが鰹かね。信じられん。生臭さがまったく感じられない、美味いなぁ〜。酒がますます進む』


 がつがつ、ぐびぐび、三人は酒と料理を存分にたのしみ、ミュングの昔話などにも耳を傾けて楽しい夜はふけていった。



気がつくと朝だった。カモメの鳴き声が頭に響く。

頭の中に鉛がつまっているように重くジンジンといたむ。胸がむかむかして、吐き気が絶えず込み上げる。

ミュングさんがいつ帰ったのか記憶がない。


久々の感覚、前世でも長く酒は控えていたので、長く忘れていた二日酔いの感覚。


左脇でもぞもぞ動くピノを見つけて、ドキリとする。

思わず起き上がり、頭痛に顔をしかめた。

アイテムボックスから水筒を出して水を飲む。


着衣に乱れはないし、事後というわけではなさそうで安心した。まだ寝ているピノを残してテントを出る。


潮風が気持ちいい。物陰でようたし、水筒をつかって顔を洗うと少しすっきりする。


日はもう高く昇っていて昼に近い時間のようだった。

さて、今日はどうしようかな?だるいけど、少し魔法の練習をしておきたい。


そんなことを考えながら太郎は、ゆっくり歩き人気のない浜辺へとやってきた。

砂浜に座り波を見ながら、潮風にあたり少しぼんやりしてから、おもむろに魔法の練習を始める。


『火よ』


指先に魔力を集めて、念じると、ろうそくよりもやや大きな火が指先にともった。


『水よ』


今度は、公園の水飲みのような細い水が指先から飛び出した。


『土よ』


土が指先から飛び出し、砂浜に落ちる。


『風よ』

指先から一陣の風が吹いた。


『雷よ』


青白い小さな稲妻が指先からほとばしる。


思った通りだった。錬金術で醤油ができた時に感じたとおり、イメージを魔力に伝えれば実現する。障害になるのは先入観なのだ。


『解毒』

体に害を与えている毒を消すイメージを魔力に込める。

魔力が体から蒸発しまような感覚とともに、頭痛や胃のムカつきがすっきりした。


『光よ』


指先にぼんやりと明かりがともる。


『取り寄せ』


なにも起きなかった。近くの木の枝を取り寄せようとしたのだが、イメージがうまくいかなかったようだ。

『動け』


今度は、魔力を介して枝をつかむようにイメージすると、枝が少し動く。そのまま持ち上げて運ぶイメージをすると枝は太郎のもとに飛んできた。


これはこれで便利だけど、ちょっと違うなぁ〜


空間を入れ替えるイメージでやってみよう。


『取り寄せ』


ちょっと離れた場所にある板が目の前にあらわれる。

いままでより少し多目の魔力が消費されたようだ。


今度は情報系だな。


『望遠』


目に魔力を集めて望遠鏡をイメージする。

沖で漁をしている漁師の姿がはっきりみえた。


ぽ〜ん♪神眼に同じ機能があります。


あっ忘れてた。では、本命。


『多眼』


空間に満ちている魔力から視覚情報を送ってもらうようなイメージで魔法を使う。


ビルの3階くらいの高さから見下ろすような視界が広がる。


ぽ〜ん♪『多眼』の制御を神眼で行えるようになりました。


通常の視界のすみにサブウィンドのように表示されるようになる。


あれ?通常なら死角になっている方向から忍び寄る影があった。


サブウィンドがズームアップされる。

ピノだ。


気がついていないふりをして、ぼんやりと海をながめる。


日本海のように深く鮮やかな青が綺麗だ。


忍び寄ってくるピノをサブウィンドで確認しながら待つ。


おどろくべきことに、まったく気配や音がしない。


どうやら、後ろから驚かそうとしているらしい。


『わっ!』

『うにゃぁ!』


驚かそうとする寸前に振り向き驚かすと、可愛い悲鳴をあげてピノは尻餅をついた。

お読みいただきありがとうございます。

これから、たぶん徐々にチート全開になっていくはずです。

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