錬金術
お待たせしました。
太郎はたっぷりとウニを剥き、海水と同じ濃さの塩水で洗いざるにのせ水をきった。
トレイの中に塩を敷き詰め木綿の布をひき、その上にウニをのせる。
ウニの上に木綿の布をのせその上からさらに塩を降った。
『本当はキッチンペーパーを使うんだけど、これでも大丈夫だと思う。半日もおいとけば塩うにの完成っと』
『半日ということは、夜にはできておるな、酒を持ってくるよ。楽しみじゃのう』
老漁師は、手入れを終えた網を手に立ち上がった。
老漁師を見送ったあと、太郎は海岸におり考え事をしながら散策しはじめる。
寄せてはかえす波をみながら思考の海に沈んでゆく。
醤油をどうやってつくるか。
鰹のたたき、塩ダレも美味しいが、やっぱりぽん酢で食べたい。
ぽん酢を作るには、醤油とみりんがいる。
みりんは酒で代用するとして、醤油はどうしようもない。
作り方はゲセに聞くとしても、年単位の試行錯誤と熟成が必要になるだろう。
この世界に醤油がなければ、酵母から作らねばならない…。
今日は、塩ダレで我慢するしかないのか…
悩む太郎に打ち寄せられた海草が目に止まる。
鑑定すると、ウィンディア昆布と出た。
ウィンディア昆布、肉厚で柔らかく濃い出汁の出る昆布。
これも乾燥させて使えるようにするのに時間がいるよなぁ…
ぽ〜ん♪錬金術で乾燥、熟成が可能です。
おぉ!錬金術か!使ってみよう!
ウィンディア昆布を対象に錬金術を使い乾燥、熟成させようと思うとスキルの効果か、使い方が頭に浮かぶ。
昆布をひとまとめにし、完成後を強くイメージしながら魔力を込めて手を叩く。
体の中から魔力が蒸発するような感覚がする。魔力を消費したということだろう。
錬金術が発動したようで、叩いた手をゆっくりと開くとその間に魔方陣が広がる。
その魔方陣を昆布に被せるように下ろすと、昆布に触れた魔方陣が強く輝く。
輝きが収まったあと、そこにはしっかり乾燥し熟成された昆布が残っていた。
できた!前世のお店でうっているような立派な昆布ができた。
これを使えば、醤油もつくれるんじゃないか?
たしか、元々の性質が近いほうが魔力を消費しないんだよな?
まずは、材料を集めよう。
太郎は、乾燥した昆布をアイテムボックスにしまうと、市場にむかって走り出した。
市場を廻り、軍の物資をわけてもらい、醤油の原料である大豆、小麦、塩をあつめ、きれいな水と一緒にこちらも調達してきた桶にいれる。
分量はわからないので、適当だった。
醤油の味、色、香りを強くイメージしながら、錬金術を発動する。
昆布よりも多くの魔力が消費され、青く輝く魔方陣がが生まれた。
激しい輝きのあと、なつかしく香しい薫りを放つ醤油が桶いっぱいに完成する。
太郎は、手早く上戸を使って素焼きの大きなとっくりような瓶へとうつし、コルクで蓋をしっかりとしめた。
醤油は酸化しやすいからなぁ〜しっかり封をしておかないと。アイテムボックスにしまえばいいんだろうけと、しばらく置いておかないと味がなじまない気がするし、昆布醤油にするにはおいておくしかないよなぁ〜。
とっくり数本にわけられた醤油の半分に昆布を入れ、昆布醤油にすることにしたのだった。
出汁がでるのを待つ間に、鰹の準備をはじめる。
ナイフの背をつかって鱗をとり、頭をおとす。
腹を裂き内臓をとりだし手早く洗う。
包丁とは勝手がちがうがどうにか三枚におろし、さらに背側と腹側にわけた。
腹側の小骨は慎重に取り除く。生前、初鰹が入るたびにタタキをつくっていたので、道具にふなれな以外は着実に作業を進めていく。
最後に鉄串を三本打ってから、かるく塩をしてアイテムボックスに一旦しまう。
ぽ〜ん♪料理スキルを獲得しました。
あっスキルがついた。塩うにを作ったりしていたから、経験がたまったんだろう。
焚き火をおこし、火が強くなったところで用意してあった藁をくべる。
ばちばちと火の粉をあげて藁は燃え香ばしい香りをふくんだ煙があがった。
頃合いをみて、鰹をアイテムボックスからとりだし火にあぶる。
鉄串をつかんで、全面くまなく炙り表面に火を通す。
鉄串につたわる温度で焼け具合を判断するのが、太郎なりのコツだった。
ほどよく焼けたところで、冷水でしめ、焦げや灰を落とし、水気を拭き取る。
ナイフで刺身よりも少し厚く切っていく。
表面から2センチほどに火がとおり、灰色にちかい色になり、中心部にいたる身は新鮮な鰹の鮮やかな赤身のままだった。
腕がなまってないことを確認すると、ぽん酢をつくりはじめた。
料理スキルがついたせいか、甘めのワインをひとにたちさせ、香りとアルコールを飛ばし、醤油とあわせ、柚子をしぼりいれる作業もスムーズにやることができた。
日本酒があるばいいんだけどなぁ〜。
無いものはしかたがないので、がまんしておく。
葱をみじん切りにし、生姜をすりおろして準備がかんりょうする。
大皿に、円をかくように鰹のたたきをならべ、葱をまんべんなく振る。
生姜もむらがないようにちらし、ぽん酢をたっぷりとかけまわす。
前世、大好物だった鰹のタタキが完成した。
すかさずピノが横からつまみ食いして複雑な顔をする。
『すっぱくて、苦くて、しょっぱくて、でも鰹の身がじゅわっと美味しい。こんなの食べたことないよ』
初めての味ではあったがピノもきにいったようだ。
太郎も、葱と生姜を一緒に切り身にのせ口に運ぶ。
タレのできばえは会心とはいえないが、前世でもなかなかお目にかかれなかったほど、よく脂がのりきわめて新鮮な鰹は、このうえもなく美味かった。
いつのまにか、ほほをつたう涙をふきもせずに、太郎は鰹のタタキを食べ続ける。
太郎は、瞬く間に一皿食べきってしまっていた。
お読みいただきありがとうございました。
塩うに、鰹のタタキの作り方はイメージです。実際に作成し、検証はしてません。




