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平凡な男の平凡な転生  作者: みけ
22/44

ハチドアの港

お待たせしました。

 帝国軍に荒らされた街並みを海に向かって緩やかな下り道を少しあるくと多くの船が集まる港があった。

 多くが小型の漁船のようだが、港の奥にある長い桟橋の向こうには大型の帆船も停泊している。

 家を失った漁師や船員たちがテントをはって暮らしているのか、船着き場のあちらこちらにテントがたっていた。


 潮風にのって、魚を焼く美味しそうな香りがしてくる。


 ピノと二人、匂いにつられるように、港の中をあるいていくと、露店が開かれ人が集まっていた。

 大きな砂の入ったかめの中央でたき火を燃やし、その周りに串にさされたさまざまな魚が焼かれている。

 丸々と太ったニシン、銀色があざやかなさんま、中トロあたりだろうか、脂ののったマグロの角切が差してある串あたりが食べごろのようだ。

 ピノがニシンを買い、太郎はマグロを買う。

 マグロをほおばると、脂と身の絶妙なバランスでうまみが口いっぱいに広がりとろけるように消えていく。

前世で食したなら財布の中身が心配になるような上等なマグロは軽く塩味をつけてあるだけだが、まさにほほが落ちんばかりに美味い。


『ラッキー!メスだった』


 小骨をもろともせず、こちらも存分に脂ののったニシンにかぶりついていたピノが喜びの声をあげる。

 コリコリといい音をさせながら数の子を楽しんでいるようだ。

マグロとニシンで小腹を満たしたところで、隣をのぞくと、自分で捕ってきた魚を自分で売っている露店らしい。


 『いらっしゃい!ハチドアの魚はどれも美味いよ!もう、だいぶ売れちまったが、今朝取れたばかりだぜ』


 いかにも、海の男という感じの若い男が声をかけてくる。


 売れ残っているのは、ホタテだよなという形の貝が数枚と、型の良いおおぶりのカツオが数本のようだ。


『カツオしか残ってないじゃないか!カツオって焼くとぱさぱさだし、臭みが強いから煮てもいまいちだよね』


ピノが元気にひやかす。


こっちじゃカツオはあまり人気がないのか。醤油もマヨネーズも見たことないから、カツオを活かす調味料がないのかも。


隣の出店では、野菜類を売っているようで、青々として美味しそうなネギや、太くて立派な生姜、にんにくなどが売られている。


カツオのたたき、といえばポン酢だけど・・・塩ダレっていうのもありだな。


晩御飯は、カツオのたたきにしよう!


太郎は、ニンニクとショウガ、柚のような果物を買い、さなかを売っている露店に戻った。


『カツオ、かっちゃうの?おいしくないよ?』


首をかしげるピノ。


『大丈夫、美味しい食べ方を知ってるんだ』


太郎は、美味しそうなカツオを一本買って、アイテムボックスにおさめた。


港のはじ、涙河の河口に向かう砂浜の手前に、大きな岩の陰になり風もしのげるよい場所を見つけて、二人はテントをはる。


『しばらくは、ここが拠点になりそうだね。海が綺麗で、けっこういい場所だ』


太郎がそんなことを呟きながら、たき火をするために穴をほったりしていると年老いた漁師がやってきて網の整備をしはじめた。


時折、悪態をつきながら何かを放り投げている。


何を投げているのか、きになってよく見てみると、黒い刺の塊のようなものを放り投げているようだ。


『にいちゃん、針玉がめずらしいんか?今日の漁は藻場のちかくじゃったから、流されてきてこうして網にかかるんじゃ。魚傷つけるし、じゃまでしょうがない』


老漁師は針玉と読んだものを手に乗せて太郎にみせた。

暗褐色で短い刺でかこまれた大きめのまんじゅうのようなそれは、どうみてもウニだった。

 ウニによく似てるけど、ウニって変換されないから違うのかな?太郎は不思議に思いながら鑑定してみる


ウニ(えぞばふんうに)

 雑食の海洋生物。ハチドアの方言で針玉とも呼ばれる。こちらの世界では一般的に食べてはいない

ポーン♪かっこ内にマスターのもとの世界での呼称をいれました。

 

 『やっぱり、ウニだ!』


太郎が喜んだ声をあげると、老漁師はしわを集めるように笑う。


『こっちじゃ針玉ってよぶんよ』


太郎は刺がささらにないよう、慎重に老漁師の手からウニを受け取り、ナイフで二つに割った。殻の中には鮮やかなオレンジ色をした身がぎっしりと詰まっている。

恐る恐る、ひと固まりを指でつまみゆっくりと口へと運んだ。

口に入れたとたん鮮烈な磯の風味がひろがり、ほのかな甘みとまったりとした濃いうまみを残して溶けてゆく。

前世で北海道の積丹を旅した時に食べた生ウニと同じ感動の美味しさだ。


『そげな気色の悪いものだベるんか』


驚きの声をあげる老漁師をよそに、またたく間にひとつ食べきってしまう。


ピノも駆け寄ってきて、美味しそうにウニを食べる太郎を不思議そうにみている。

『食べたことないんですか?おいしいですよ。ほら、こうやって割ってオレンジ色のところを食べるんです』


太郎は二つに割ったウニを老漁師とピノに勧めながら、網についているウニをもう一つとって食べ始めた。


『う・・・う〜!うまい!』


こわごわと口に運んだピノが声を上げる。

老漁師はまだ信じられないのか、ウニの断面をながめてかたまっている。


『まったりとして、コクがあって、ほんのりと甘く、くせのある風味だけどすっごく美味しい!あいたっ!』


ピノは、ウニが気に入ったようで、自分でウニをつかんだところ強く握りすぎて刺がささったようだ。


その様子をみて、老漁師もおそるおそる口に運ぶ。


『う〜む、おぉ!うまい。酒に合いそうじゃ。なんで今まで気がつかなかったのじゃろう』


『たしかに、見た目は気色悪い部類に入る生き物ですよね。お酒のつまみにするなら、塩漬けにしたやつが絶品ですよ』


『それは食べてみたいのう』


『作り方を知ってるので、つくりますか?』


太郎は、いそいそとウニを集め殻を割り塩ウニを作る準備を始めた。

お読みいただきありがとうございましたm(__)m

来週は所用によりお休みします。

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