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平凡な男の平凡な転生  作者: みけ
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それでも空は蒼く

少し長くなりました。戦闘回です。残酷な表現がありますのでご注意ください。

一行が戦闘準備をする間に、左右の茂みからも武器を持った男たちが現れる。

前方の5人とあわせて一行は30人ほどに囲まれることになった。

敵は、帝国の敗残兵なのだろうか、装備はばらばらだが、金属鎧を身につけているものいる。武器も、短槍、戦斧、長剣とばらばらで盾を持つ者もいた。

一行の冒険者の武器もばらばらで、二丁の手斧を使う者、片手半の長剣に円形の大盾を使う者、大きなつるはしのような戦鎚を使う者、鎖の先に刺付の鉄球がついた武器は、こちらでもモーニングスターと呼ぶのだろうか、それをふるう者、刺のついた戦棍をふるう者、それに短槍と盾の太郎とピノが加わる。

 レトリー以外の騎士3人は、広刃の直剣と5角形の盾を取り出した。レトリーは短い杖を取り出し魔法の詠唱を始める。

 『マナよ、我が意志にこたえよ。灼熱の爆炎と、ぐふぅ』

 詠唱は完成することはなかった。前方の鉄弓から放たれた槍のように太い矢がレトリーの腹を貫いたのだった。レトリーはうめき声をあげ崩れ落ちるように倒れる。

弓による追撃はなく、敵は一斉に襲いかかってきた。

相手は、こちらの3倍以上の人数がいる。一行は互いに背中をかばい合うように闘っているが、しだいに櫛の歯が欠けるように倒れていった。

ピノが相手をしていたのは、金属鎧を身につけ戦斧を持った戦士だった。落馬した時足を痛めたのか、ピノにいつものスピードはなく、攻撃を交わしているものの、鎧のすきまに槍をいれられないようだ。

太郎の相手は、両手剣を持った戦士で踏ん張りの効かない下半身どうにかごまかし、重い一撃を凌いでいる。

槍技能と盾技能を得た報告がゲセからもたらされたが、確認している余裕はなかった。

 敵のかなり重そうな剣が、その重さを感じさせないスピードで舞うように襲いかかる。振り下ろされる剣を槍で払う、下から跳ね上がってくる剣を盾でそらす。フェイントや緩急をつけて、縦横無尽にふるわれる敵の攻撃をかわすために剣先へひたすら意識を集中する。技能がついたおかげだろうかしだいに、相手の剣が見えるようになってきた。

太郎の左側から右へと大きく薙ぎ払われる剣をしゃがみ込んで避け、初めて訪れた攻撃のチャンスに迷わず起き上がりながら槍を突き出す。

 どがっ!

思わぬ方向からの衝撃、揺れる視界、痛みより驚きが先にくる。

なにをもらったんだ?混乱する思考に、口の中が切れたのか血の味が焦りを加速させる。

太郎が受けた攻撃は蹴りだった。

太郎の左側、盾を持つ側から深い踏み込みとともに右へとふるわれた薙ぎ払い攻撃がおとりで、起き上がりながら槍を繰り出す太郎の頭を踏み込んだ右足を軸にし、左足ではなった回し蹴りがカウンターなり捉える。 止めとばかりにつづいて放たれた、右けさがけの一撃を反射的に盾で受け止められたのは幸運だった。

 『今のはヤバかったんじゃないのぉ〜』

 太郎の攻防をちらちらと見ていたピノは戦斧を交わしながらつぶやく。自分の相手も、太郎の相手もそうとう熟練の戦士らしい。足が万全な状態であっても勝てるかどうかわからない手錬だ。

 『足が万全で、あたしだけなら、逃げちゃうんだけどなぁ・・・』

 短距離ならコビット族は馬よりも速く走る。万全であれば敵を引き離し森に逃げ込むのは簡単だろう。しかし、今はそんなに早く走れないし、太郎を置いていくことはできない。

どうやら敵はこちらを、すぐに殺す気はないようで、致命傷を避ける手加減をされているので、どうにかしのいでいたが、それもいつまでもつのだろうか。

太郎が受けたような、薙ぎ払いの攻撃をしゃがんでかわし、続いてくる蹴りをバックステップでよける。驚いたのはそのあとだ、蹴り足がそのまま踏み込みとなって、ピノの眼前で男の体が一回転し、再び左から戦斧が襲ってきた。

 さらにバックステップでよけたピノの眼前に斧の刃が迫る。いままで、両手で振り回していた戦斧を左手一本に持ち替えていたのだ。片手になったぶん間合いが長くなり、伸びあがるようにピノの首筋あたりへと迫る刃を、とっさに盾を上げて直撃を防ぐ。しかし、回転の勢いがのった戦斧の一撃は、重く強く受けながすことができずに盾ごとピノの小さな体を吹き飛ばした。

 盾は二つに割れ、左腕がおかしな方向に曲がっている。痛みに呻くピノに敵は素早く近付くと右ひざを踏み抜いた。膝が割れる鈍いおとがしてピノの悲鳴があがる。

 『ピノっ!』

 太郎は、悲鳴を聞きピノの方へふりむいた。致命的な隙、それを両手剣の敵が見逃すはずがない。太郎は、腹部に焼けるような痛みを感じた。両手剣は、太郎の右わき腹を深く貫いている。

 『あぁっ・・・がっ・・・』

太郎は、言葉にならないうめき声をあげて、腹部に突き立った鋼の刃を見つめた。引き抜きざまに蹴り倒され、仰向けに倒れた太郎の眼に街道を覆う木々の向こうに蒼い空が映る。

こんな時でも、蒼く澄んだ空は美しかった。蒼い空に吸い込まれるようにうすれゆく意識の中で太郎はぼんやりと呟く。

『こんなに早く死んじゃ世界を救うヒーローにはなれないな…』

なにかが引っ掛かった。ヒーロー?

太郎は、懸命に意識を繋ぎ止めながら、アイテムボックスにいれてあった変身ベルトを取り出す。

それは、細い楕円形で鈍く銀色に光る金属でできていた。中央には丸く赤と黒の風車をかたどった細工がされている。

息子が好きでよく一緒にみていたっけ。何十周年近年で発売された本物と同じレプリカを買ってしまったと聞いたのは病床についてからだった。太郎は、ひどく懐かしいデザインのそれを、臍の下あたりに押し付ける。

ジャキン!

金属のベルトが伸びてしっかりと腰に固定された。

左手は拳を固め腰にそえる。右腕は、指先までまっすぐに伸ばし左下から、時計回りに回転させた。

『へ〜ん〜しんっ!とぉ!』

実際に飛び上がる力はない、イメージだけは蒼い空へとまっすぐに飛び上がる。

ギュィィィン!ギュィィィン!

モーターが高速で唸りをあげるような金属音とともに太郎は光に包まれた。

お読みいただきありがとうございましたm(__)m

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