薬草採取
お待たせしました。
戦場の片づけは、結局9日で終了し、最終日には王国主催の慰霊祭が行われ片づけに参加した冒険者たちには酒がふるまわれ、ささやかながら宴が催された。
ピノと太郎は、道具屋、鍛冶屋、武器屋、服屋などをまわり、アイテムボックスに収納してあった武具、衣服、道具類で破損しているものを売却。依頼報酬以外におよそ金貨2万枚分の収入となった。
ピノは遠慮していたが、二人で山分けにして金貨1万枚を自分の取り分とする。
ほかに未整理のアイテムを含め使える武具や着替え、生活用品、テントやロープなどの道具も手に入り、精神的に大変な仕事であったが得たものは大きかった。
この世界の通貨は王国と帝国でそれぞれ9種類。両替の単位は同じで貨幣だけが分けられている。
銅貨をカプ、銀貨をシル、金貨をゴルと呼ぶのも同じだ。
半カプ2枚で1カプ、10カプで大カプ、50カプ(5大カプ)で1半シル、2半シルで1シル、10シルで大シル、50シル(5大シル)で1半ゴル、2半ゴルで1ゴル、10ゴルで大ゴルと両替される。
1カプがだいたい100円ぐらいの感覚のようで、大ゴル1枚で普通の暮らしであれば家族全員で2年は暮らせるらしい。
食品や衣服などの生活必需品は供給が安定していて、需要も安定しているため安く、薬や魔法の道具のように供給が不安定なものや、武具や馬車、宿屋などのように需要が不安定なものは極端に高くなるようだ。その基準から行けば、普通に暮らす限り太郎はもう働かなくても生涯生きていけるだけのお金を手に入れたことになる。
「ずいぶん儲かったようね。冒険者を続けるなら1年ぐらい、冒険者をやめて普通に暮らすなら、一生働かずにすむわよ」
プレラは1万ゴルというのは、普通に暮らすなら目のくらむような大金だが、冒険者としては平均年収といってよいことを教えてくれた。
冒険者の暮らしにはお金がかかる。武器や防具のメンテナンス、更新を怠れば命にかかわり、傷薬や毒消しなどの薬品を常備しなければ同じように命の危機にさらされる。
遠隔に赴くために馬や馬車を用意することもあり、依頼の中でやむをえずそれらを失うことも多かった。
そういったものは、普通の生活用品にくらべてかなり高額であり、さらには、家などを持ち定住していては不都合なことも多く、宿暮らしで食事は当然外食となれば出費はかさむばかりだった。
「派手に稼いで、派手に使うのが冒険者のだいごみってやつだよ」
ピノは親指をたててにっこりと笑う。
太郎としては、手に職をつけるなりして、普通の生活を送りたいのはやまやまであったが、流れ人は高く特殊な能力をもつため、冒険者としては重用されるが、他の仕事をするには、血縁がなく、一般常識にうとく信用されにくい。
生活に困らないお金があるといっても、戦争もあり、みをまもる力も知識もない以上、当面は冒険者を続け知人を増やし技能増やし、金をたくわえ地盤を固めなくてはいけないだろう。
『当分は冒険者を続けようと思ってます。今日は薬草採取に挑戦してみようかと』
太郎は宴会のあいだを含め一晩考えた決意をプレラに伝えた。
『それがいいと思うは、薬草はここに書いてある見本のものを採取してくれたら報酬を支払います。気をつけて欲しいのは、根を堀つくさないことね』
プレラは押し花のようになった標本とスケッチ、特長を書き留めた見本を取り出して太郎に渡した。
薬草は、生命力が強く根を堀尽くさなければ、そこから再生する。
根を堀尽くさなければ、後日また同じ場所で採取することができる。
薬草は、そのまま煎じたり練り固めて丸薬にしても効能があるが、魔力を加えて調合しポーションにすると強い効果が得られた。
回復草、高回復草、超回復草、毒消し草、麻痺消し草、解石草、神秘草さまざまな効能を持つ草が書いあったが、太郎は一番初歩的な回復草を探すつもりだ。
見本をよくみたあと、ピノと二人郊外の森へと向かう。
森の際、下草がふかくなったあたりで、神の眼を使うと、回復草はすぐに見つかった。
1〜5株ぐらいが密集して生えており、それが数メートルの感覚をあけて点在している。
神の眼プレミアムの力で、生えている場所がマーキングされるので探すのは簡単だ。
回りの警戒をピノに任せると、太郎を回復草を堀始める。
生きているものはアイテムボックスに入らないので、手で掘るよりほかない。
草丈とほぼ同じ長さの根が地中にのび、それを3分の1ほど残して採る。
他の草の根が絡み合った掘りにくい地面を、戦場で拾った、木のへらの先に金具をつけたような堀り棒という道具で掘った。
地面を掘るというより、土や根をこじり掻き出すような作業である。
前世、趣味で山菜とりをしていた太郎は刃がついているが、刀身に窪みと長さが解るメモリのついたスコップとナイフを組み合わせたような山菜掘りナイフを愛用していた。
帰ったら鍛冶屋に相談してなんとか再現しようと、考えながら、太郎は夕暮れ間近までせっせと回復草を掘り続けるのだった。
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