初仕事その3
お待たせしました!
アイテムボックスを活用した結果、半日で2000人近い戦死者を片付けることができた。
回収のペースが上がったのでレトリーは火葬に専念し穴も増やしている。
日が暮れてその日の作業を終了した時、太郎は大金をてにいれていた。
ギルドに戻り、換金してもらうと、手数料を引いても金貨にして2000枚近くになる。
『初日が一番稼げるのだけど、かなり当たりをひいたわね』
プレラが教えてくれた事によると、後方も一気にやられているので稼ぎがよかったのだろうということだった。最前線に出る奴隷兵が多いエリアは極端に稼ぎが少なくなるそうだ。
お金が出来たので宿に移るとつげるとプレラは少しさびしそうにしながらも笑顔で送り出してくれた。
『私と同じ宿にしなよ!手頃な値段でサービスいいよ』
喜ぶピノに案内されたのは歌う猫亭という宿だった。
歌うのが好きな獣人がやっている宿で、猫耳が受付で出迎えてくれた。
おじさんだったけど…
1泊朝食付きで銀貨5枚、10日まとめて払うと1日分おまけしてくれる。
10日分、大銀貨4枚と銀貨5枚で支払い部屋をとった。
陰惨な戦場の光景が目に焼き付いて眠れないかと思いきや、戦場を歩き回り疲れたのか、吸い込まれるように眠ってしまった。
夜中に、ドアや窓がみしみしいって、ピノの声がしたような気がするがきっと夢だろう。
そして、それから一週間が過ぎた。
初日は、3人でこじんまりと始まった片付け作業も、参加する冒険者は日に日にに増えていき、今では100人を越える大規模になっている。
あと数日かからずに片付けは終わりそうであった。
ぎゃん!
ピノの短槍で殴られた魔犬というモンスターが短い鳴き声をあげる。
一週間もたつと竜の気配がうすくなってくるのか、戦場には少しづつモンスターが現れるようになっていた。
そのため、太郎も拾ったものの中からサイズの合う皮鎧、少し大きめの円盾、短めの剣を装備している。
しかし、装備が役に立ったことは今までなかった。
今も、ピノ一人で5匹の魔犬を相手にしているが、危なげな様子はまったくない。スピードがかなり違うのだ。
スピードの早いピノを襲うことを諦めたのか、一匹が太郎の向かいそうになる。
『う〜、わんっ!
その時、冗談のようにピノが吠えた。
すると、太郎に向かいかけていた魔犬が再びピノに敵意を向けて唸り声をあげる。
威嚇というスキルを使ったのだ。吠えなくても使えるのだが、吠えたほうが効果が高い、という気がするらしい。
回避優先の軽戦士であるピノでも、後ろの仲間に敵が向かうのを阻む、いわゆる盾役をする必要が出るときがある。
そのために身につけたスキルだそうだ。
相手を刺激して敵意を自分に引き付ける効果があるらしい。
ピノは、左腕に固定した小盾、短い鉄の槍、軽量化した皮鎧を身につけていた。
威嚇が効いているのか、ピノを半包囲している魔犬は、一匹が叩かれても怯むことなく次々ととびかかってくる。
ピノはそれを交わしざまに、短槍の柄で強く殴りつけた。
『ぎゃん!』
また、魔犬の悲鳴があがる。
ピノの槍は、石突きの部分か少し大きくなっていて、穂先にある刃と重さのバランスがとられていて、少ない力で鋭く振れるような工夫が施されていた。
こりずに飛びかかってくる魔犬を交わしては殴り、あるいは、小盾で牙を防ぎながら殴りつける。
時間差をつけて飛びかかれば、一匹が短槍で、次の一匹は小盾で殴り、その次は蹴りをいれた。
同時に飛びかかると、くるりと振り回された短槍に迎撃されたり、わざとギリギリで交わすことにより、魔犬が衝突したりする事になった。
ひらり、くるり、ひらり、ひらり。
舞うように、踊るようにピノは戦っていた。
実際に聞こえるのは肉を打つ鈍い音と魔犬の悲鳴だけだったが、ワルツやリンドがBGMとして似合いそうな感じがする。
数にまさる魔犬たちであったが、みずからの攻撃のたびに手痛い反撃にあいダメージを増やしていく。
一撃一撃は、致命傷になるほど重くも強くも鋭くも無いが着実に魔犬たちのダメージは増え、徐々に体の自由を奪っていく。
最初はなぜ穂先で突かないのか不思議だった。
鋭い刃のついた穂先で突き刺せば一撃で倒せたりすることもありそうだ。
ピノに尋ねてみると、相手の勢いもあり、穂先が深く刺さり過ぎると抜いている間に攻撃をくらってしまうかららしい。
速さは一流だが非力なコビット族流の戦い方だそうだ。剣だと浅くきりつけて戦うのが主流らしい。
やがて、起きあげれなくなり唸るだけとなった5匹の魔犬に、ピノは穂先を深く突き刺し慎重にとどめを刺していった。
『タロウ、お願い♪』
魔犬がいきたえたのを確認すると、ピノは振り替えって声をかける。
太郎は、アイテムボックスを展開して魔犬を回収する。
魔犬の魔石 5個
魔犬の毛皮 5個
魔犬の牙 10個
魔犬の爪 50個
魔犬の肉 5個
魔犬のごみ 5個
アイテムボックスの自動分類をゲセに頼んだら、魔物の解体剥ぎ取りまで出来るようになっていた。
一瞬で終わるので非常に便利で、解体中の血の臭いでさらに敵をひきよせてしまうこともない。
容量も底が知れず多機能なアイテムボックスは、さすが流れ人だとピノやプレラに感心されていた。
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