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モーニングスター娘の吸血鬼狩り  作者: 須景夜々


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小学生2年生の頃、母が投げたガラスのコップが割れて、破片が目に刺さった。どうやったのかは覚えてはいない。本能とでもいうのだろうか。その時初めて魔法を使い目の傷を治した。

それを見た母は目を輝かせながらどこかへ電話して、さらに俺を殴り俺は意識を失った。気づいた頃にはこの会社に引き取られていた。後で気づいたことだがこの会社は魔法が使える子供を非合法で買い取っているらしい。母は俺を売ったのだ。母は日常的に暴力を振るってきたし、父は生まれた時からいなかった。親から愛を感じた事はなかったしいい思い出もない。でも、やっぱり親は親であって、売られたという事実は子供ながらに分かったし悲しかったのを覚えている。

その後クソみたいな会社で生き延びて27歳。たった今小学4年生の朝日星が学校に行くのを見送ったところだった。この生活も5ヶ月目。独身にも関わらず子供がいる生活というのは今でも不思議だった。まだまだ薄れない感動が残っているうちに仕事を終わらせるため会社へ車を走らせた。



 

 会社につき上司が待っている部屋に向かった。道中に合う人間は挨拶などもせずにすれ違っていく。ここで働いている人間はどいつもこいつも死にそうな顔をしていて空間自体が死んでいるようだ。ここに来るのは1ヶ月ぶりで前回は三浦と一緒に来たので一人で来るのは3ヶ月ぶりだった。


「失礼します」

「来たか、、、適当に座れ」


宮根さんはすでにソファに座って俺を待っていた。言われるがまま俺も正面のソファに座る。前来た時と内装は変わっていなくて変わったところといえば机の上に散乱してる空き瓶が増えていることくらいだ。


「三浦はどうしたんだ?二人でこいと伝えたはずだが」

「三浦は二日酔いで潰れてます。酒は飲むなと伝えたんですが、、、。」



 三浦は朝日星の監視、上級吸血鬼対策の役割を担っている。逆に言えばそれ以外の役割がないため仕事の時以外は夜飲み歩いて朝方寝るという昼夜逆転生活を送っていた。

宮根さんは頭を抱えて話を続ける。


「朝日星に関してなんだが武器はどうにかならないのか?もっとスマートに戦える武器だとこちらとしてもありがたいんだけど」

「本当にそこは目を瞑っていただくしか、、、。というのも星はモーニングスター以外の武器に関心を持たなくて、現状あれしか使えません。魔法の相性もあれが一番ですし」

「まだ小学生だしなぁ。学校に通ってるし無理をさせるわけにはいかないよな。」


そう言いながら宮根さんは机の下を漁り始めた。

宮根さんは子供に対する理解が深く話が通じる。昔子供でもいたんじゃないかと思うほどだ。上層部のジジイどもは思い通りにいかない星の定期報告を聞く度に兵器化を仄めかしてくるのでそれに比べればありがたかった。


「これ、報告書。書き終わったら郵送してくれ。」


机の上に置かれた段ボールを見つめた。この中のものが全て報告書だと思うとゾッとする。段ボールの中身は今回の仕事の報告書だった。1週間前の低級吸血鬼の報告でこの中には家屋を壊した始末所も含まれている。しかしこれだけならいつも郵送で来るのでわざわざ呼ばなくていいはずだ。

宮根さんは僕の疑問を感じ取ったのか手に持っていたコップを置き話を始めた。


「さて、本題に入ろう。3年かけてついに1匹の上級吸血鬼の場所を割り当てることができた。夜見、三浦、朝日星に討伐任務にあってもらう。」

「質問いいでしょうか?」

「いいぞ。要望なら却下だ」

「3年ぶりで貴重なチャンスなのに僕たち三人にだけ任すのはリスクが大きくありませんか?」


上級吸血鬼は滅多に現れない。それは吸血鬼化の条件と隠密能力にある。上級吸血鬼の条件は魔法の使用である。魔法が使えると人間では太刀打ちできなくなり危険度が上がる。逃げ足も魔法を使うことで早いので補足自体が難しかった。なので上級吸血鬼の討伐は居場所を暴いてそこを大勢で叩くことが主流だ。

 3年前の上級吸血鬼討伐は二十人ほどの部隊が討伐に赴き、十七人の犠牲と引き換えに討伐。生き残った3名もかろうじて生きている状態だった。星がいるといえ三人じゃかなり無理がある。


「ふむ。いうことはもっともだ。この貴重なチャンスを三人に任せるのはリスクが大きい。だが、君たちに任せざるをえない理由がある。それはーーーーーーーーー」


深刻で憂鬱で狂気な内容の話を聞き、この会社が腐っていることを再認識した。もしかしたらこの世界の方が腐ってるのかもしれない。


「わかりました。それでは準備に取り掛かります」

「話が早くて助かるよ。」






後日、俺は宅配員に変装して討伐準備に赴いた。

今回する事はターゲットの家の下見。ないとは思うが本当に吸血鬼なのかの確認もある。俺はこの作業が嫌いだ。吸血鬼の生活が見えてしまうと少し親近感が湧いてしまう。昔、この作業を行った時に吸血鬼がゴミ出しをしていたことがあった。殺人被害が出てたので間違いなく人を殺した吸血鬼だったのに殺す時、躊躇ってしまった。

全ての吸血鬼が残虐非道だったらいくらかマシなのに。そう思いながらターゲットの家の前に到着した。ターゲットはこの立派なマンションの5階に住んでいるらしい。番号を入力しロックを解除してマンション内へ入り、そのままエレベーターを使いワゴンと共に5階へ移動した。

昔住んでいた家がこんなんだったなーと少し思い出した。仕事で県外出張がしょっちゅうあったのでそもそもあまり家に帰っていなかったけどそこそこの思い出はある。18になるまで会社の寮に住んでいてそこは四人部屋でプライバシーがなかったので前の家が初めてのプライベート空間だった。初めて人を連れ込んだし、初めて自炊をした。この自炊がなかなか今に役立っている。

部屋に着いたのでチャイムを押した。


『はーい』

「あ、宅配便をお届けに参りました」

『はいー』


チャイムが切れて玄関に向かってくる足音が聞こえる。バレてはいけない。動揺してはいけない。顔に出してはいけない。決意を反芻させる。

ドアがゆっくりと開き、若い女性が出てきた。出てきてすぐに気づいた。こいつは吸血鬼だ。香水の匂いがひどい。最近人の血を吸って血の匂いが染み付いてしまったのか、香水で隠そうとしたんだろう。ただ、部屋着にも関わらずこんなに強烈な香水を家でつけてるやつは十中八九、黒だ。


「じゃあ、ここにハンコをお願いします」

「はい」


ハンコを押している最中、玄関へ向かってくる足音が聞こえた。感覚が狭く音が軽い。


「おかーさんっ、」


足音の主は後ろから目の前の女性に抱きついた。俺の顔を凝視する。誰とでも言いたげだ。俺もまたその子を凝視する。こんな報告聞いていなかったからだ。


「宅配のお兄さんよ。ほら挨拶」

「みきでつ!5さい!」

 

大きな声で自己紹介をしてくれ、手を目一杯開いて自分が5歳だと教えてくれた。こうなるから俺は来たくなかったんだ。女性は子供を部屋に戻るように促し、子供はそれに従って俺に手を振りながら奥へと戻った。


「すいません、好奇心旺盛で」

「全然大丈夫ですよ。可愛いお子さんですね」


今の時代に27歳の男が5歳の女児に対して可愛いというのは少々まずいような気がしたが母親は気に留めず褒め言葉として受け取ってくれた。いい人だったんだろう。

 荷物自体は本当にあの親子が頼んだもので、ドアがしまった後子供が喜ぶ声が聞こえた。5歳児がもらって嬉しいもの、、、まぁ人形やおままごとセットってところだろう。 

 俺が会社で習った吸血鬼というのは残虐非道で人を殺す化け物。しかし実際はこれだ。生まれながらに吸血鬼は少ない。吸血鬼同士が交配すれば吸血鬼が生まれる。会社の情報だと父親の方が吸血鬼だと言われていたのであの一家は全員吸血鬼だろう。吸血鬼にされた人も、元が人なんだからみんながみんな無作為に人を殺すわけではない。血さえ吸えれば生きられるので人間に協力してもらえれば人を殺さず血を集めることができるだろう。ただ、そんな吸血鬼は少数で、大多数の低級吸血鬼は人を無作為に食らう化け物だ。もちろん中、上級吸血鬼にも人の命をなんとも思っていない化け物もいる。無理なのだ。吸血鬼の人間と共存など。

 会社の選択は吸血鬼の皆殺し。俺達はそれに従い明後日、あの一家を皆殺しにする。


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