選択1
星を寝かしつけて俺は明後日の討伐任務内容を共有するために三浦の家へ向かった。運転中、宮根さんに言われたことを思い出す。
『今回の吸血鬼は知能がある。星はまだ喋る吸血鬼を殺したことはないだろう。上層部は慣れさせたいんだろうな。星が成長した時に同情したりなんかしたら困るから吸血鬼は殺すものだと小4の時点で頭に擦り込みたいんだろう。』
全く反吐が出る。上層部のジジイどもは是が非でも星を兵器にしたいらしい。思い出すだけでイライラしてきたので一旦気を紛らわすためにハンドルを思い切り殴った。自分は躊躇いなく殺すために自己を殺しているのに星には殺してほしくないなんて随分、情が移ってしまっている。楽しい話をしに行くわけでもないので少し遠回りして三浦の家に向かった。
三浦は任務を聞いても何も言わなかった。よかったと俺は思った。ここで三浦が駄々こねて行かないなんて言われたら討伐どころか俺は吸血鬼に返り討ちにされてしまう。俺自身戦闘に関しては戦力外に近いのでこいつの協力が必須だった。
「なんともまぁ、救えない話ではあるけどかんけ〜ねぇ。吸血鬼は皆殺しだ。」
ソファに寝転びながら三浦はそう言った。三浦は上級吸血鬼を殺すのが主な仕事で中級吸血鬼を狩る事はほとんどない。のに関わらず3年前の討伐に三浦は参加しなかった。なんとなく気が乗らないとしか言わなかったので今回もそう言われたらどうしようと少し心配だった。
「助かるよ。明後日の夜10時に迎えに行くから」
「おっけ〜わかった。星にも説明しとけよ。現場で駄々こねられても庇いきれないからな。」
「、、、わかってるよ。」
「重ねて言うが、あんまり情を移すなよ。あの子がこれからどんな目に遭おうと会社の決定に逆らったりするな。」
星は希望だ。小学5年生の時点で人間離れした筋力とモーニングスターで吸血鬼を殺している。今後の成長を加味すると上級吸血鬼にも一人で勝てるくらいになるだろう。吸血鬼の王にも勝てるようになるかもしれない。そんな逸材を俺一人に任せる選択を会社がいつまで命ずるのかわからない。三浦が憂いているのは俺が会社の判断に反抗してしまはないかと言うことだ。
「大丈夫だ、、、分かってるよ」
俺は机の上にある鋭い棒を指差す。
「ああ、それ?レイピアの剣部分。」
「え?あれ外れんの?」
「戦闘中、折れた時に交換すんだよ。おれのレイピアは特注だからな。」
なるほど。
ステータスが戦闘に全振りしてるだけあってこういうところはしっかり対策しているのか。上級吸血鬼相手に生き残っているのはこういところもあるんだろう。昔はもっと鈍臭かったのに。
「ところで、これって経費で落とせるか?今金がなくてよお」
「落とせるぞ。」
「よっしゃ。そうと決まれば酒だ。酒を飲もう。俺はビールだけど、お前は何がいい?」
「カルーアミルクで」
「へっ、言うと思ったよ」
三浦はニシニシと気持ち悪い笑い声を出しながら台所へ消えていった。
決行日前日、寝る前の星を呼び出した。
「星、話があるからそこに座ってくれ」
「?分かった」
対面するような形で俺たちは座った。寝巻き姿で眠そうだ。俺あんなの買ったっけ?
「そのパジャマ、どうしたんだ?自分のお小遣いで買ったならお金は出すぞ」
「宮根さんが買ってくれたからいい」
宮根さんだったか。
会社支給のものなのかはたまた宮根さんの趣味か。詮索はできないがなんとなく宮根さんの趣味な気がする。
「そうか。似合ってる。」
「ありがとう、。」
言いづらいな。もっとあっさり言えればいいのにどうしてこうも先延ばしにしてしまうんだ。
「あー、本題に入ろう。明日の仕事についてだ」
星は俯いた。わかりやすく落ち込んでいる。嫌なんだろうなこういうことは。
「次の敵はどんなの?でっかいの?腕がたくさんあるの?」
「次の吸血鬼は親子だ。」
そういうと星は分かりやすく動揺し困惑していた。
「どういうこと?人間を殺すってことなの?」
「いいや、相手は吸血鬼だ。吸血鬼に子供がいるんだ。」
「その吸血鬼も人を殺しているの?」
「分からない。」
分からない。そうとしか言えなかった。
吸血鬼の中にも自分で餌を取る吸血鬼とそうでない吸血鬼がいる。人間界に紛れ込んでいる吸血鬼は大抵後者だ。協力者、血を分けるコミュニティが吸血鬼にもあってそういうところからもらっているのかもしれない。今回のターゲットはよく配達を利用していた。今回のターゲットは人を殺していない可能性が高かった。会社もそれを分かっている。それを加味してなお、星に殺させようとしているのだ。
「分からないって何?殺してないなら殺す必要ないじゃん」
空気が凍りつき重くなる。理解できないと体が訴えかけているようだった。分からないだろう。理解できないだろう。でも、分かってもらうしかない。この事情を説明しなくてもいつか気づくことだ。早いうちにこの理不尽になれなければこの世界では生きていけない。
「吸血鬼なら、無条件で殺さなければならない。」
「、、、それって人間と何が違うの?分かり合えないの?」
「いいや。同じさ。吸血鬼も一人じゃ生きられないし心だってあるやつもいる。でもな、分かり合えないんだ。」
「納得できない。今回は全く無関係だし夜見さんも大変そうだからやってあげるけど。もし、学校の友達が吸血鬼でその子も人を殺してなかったら。私は殺せない」
全く素晴らしい子だ。俺の立場も考えてくれるし。
でも、星がこれからハンターとして生きていくならきっと同じ壁にぶつかる。きっとその時に俺はいないし一人で考えなくちゃいけない。
俺は星の頭を撫でた。
「それでいい。もう少し大きくなったら星は自分で生きていける。その時は誰からも急かされずにゆっくり考えたらいい。」
「、、、うん」
星は席を立ち「おやすみ」とだけ言って寝室に行った。
あんな悲しそうな顔をする星を見るのは初めてだった。大人が不甲斐ないせいで子供に酷な選択をさせてしまったこと胸が苦しくなる。謝っても謝りきれないし俺はきっと地獄行きだ。
俺なんかにできることはないだろうけど俺が教えれることは少しでも教えれたらいい。そう思いながらソファで横になり眠りについた。
深く考えずに思った事を書いて欲しいです!感想待ってます!




