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モーニングスター娘の吸血鬼狩り  作者: 須景夜々


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1

 某県某所桜間区にある一軒家にて低級吸血鬼の出没が確認。危険度3。ハンター3名が派遣された。


「なぁ〜あとどれくらいで着く〜?」

「あと30ってところだな。多分合コンは間に合わないぞ。」


俺がそういうと三浦は車内で天を仰ぎ、右手に持っていた缶コーヒーを一気に飲み干した。


「クソがよ!!!」


思いの丈を吐き出したその言葉は車内が揺れるほど響いた。無理もない。今日の合コンを楽しみにしていたことは知っていたし、何より緊急招集ということで拒否権がなかったのも怒りのポイントが高い。現在8時。合コン開始は8時30分。ここから都内に戻るだけでも30分かかるので絶対間に合わない。


「この会社ほんと終わってるわ。なんだよ緊急召集って。人手不足がすぎるんだよな」

「なんでやめないんだ?」

「給料がいいし福利厚生もしっかりしてるからな。おまけに合法で人を殺せるわけだし」


 少し空気がひんやりした。俺は早くこんな仕事辞めたい。福利厚生がしっかりしていても給料が良くても命の保証がない仕事だからだ。今日の仕事で死ぬかもしれない。そんな恐怖と闘いながら出勤している。俺も三浦も完全に頭がおかしくなってしまっている。


「こんなクソ田舎飛ばしても問題ねえよ〜急ごうぜ〜。あ、タバコ吸っていい?」

「馬鹿言え。幼女が寝てるんだぞ」

「今日もかよ。分かった」

 法定速度を守りながら車を走らせること計25分。目的地へ到着した。

山の麓にある家ですでに周辺の避難は済ませてあるようだ。周囲10メートルは入れなくしてくれている。吸血鬼が出たという家はかなり古ぼけていて魔法を使ったら家ごと崩れそうだ。

 今回上からの通達で『朝日(あさひ)(ほし)に戦わせろ』という命令が降っていた。正直気が乗らない。上からの命令とはいえ小学4年生にまがいなりにも人殺しをさせたくない。しかし仮に戦わせなかったらバレて星は連れていかれる。そうなればもっと酷い目に遭うことくらいわかっている。腹を括るしかない。

後部座席で寝ている星を起こして10分ほど目が冴えるのを待った。


「星、行けるか?」

「ダイジョーブだよ」


グットマークをして車を降りた。ガリガリとモーニングスターを引き摺りながら家の玄関へ向かって行く。


「相変わらず凄いの持ってんな」

「まだ小学生なんでしょ?可哀想に

「呪われた子だ」


清掃員がコソコソと話している。聞こえてんだよ。

星は気にせず玄関を殴り壊して中へ入っていく。中は散らかっていてゴミやチラシが積み上がっている。階段の前にも積み重なっていたから星はモーニングスターを当てて蹴散らした。かすりでもしたらひとたまりもないので俺と三浦は少し離れて見守る。レベル3吸血鬼くらいなら星は問題なく殺せると思うが攻撃が当たると傷がついてしまうので離れるのがもどかしい。

階段を上がって問題の部屋の前についた。この中に吸血鬼はいる。中から聞こえる鳴き声は吸血鬼そのものだ。甲高く蝙蝠(こうもり)のような鳴き声。星は躊躇いもなく扉を破壊し中へ侵入。 

部屋の真ん中で警戒していた吸血鬼の元へ一歩で距離を詰めて素早く頭部を潰した。

ドゴンと大きな音を立てて吸血鬼の体は床にめり込んだ。頭が潰れているのを確認して俺たちは家から出た。

あとは清掃班の仕事だ。


「お疲れ様でした」

「じゃ、あとはよろしく」


緊張から解放されて車に乗ろうとドアノブに手をかけると後ろから星が抱きついてきた。


「怖かった」


震える声でそう言われて胸が苦しくなった。星はまだ小学生なのにこんなことをさせていることに。

吸血鬼は元人間だ。人間は特殊なコウモリに噛まれることで吸血鬼となる。吸血鬼化すると自我を失い見境なく人を襲うようになってしまう。さっき殺した吸血鬼は22歳で同居人の50歳の母を殺したことで今回の事件が発覚した。

吸血鬼化することができるコウモリを生み出せるのは上級吸血鬼と吸血鬼の王だけ。俺たちが勤務している会社は上級吸血鬼、そして吸血鬼の王アーサー・モーグナーの討伐を掲げている。星のような生まれつき魔法が使える選ばれし人間を会社は時に強引に会社に入れ込んでいる。吸血鬼討伐のためには手段を選ばない。

俺は抱きついてきた星を体を捻って抱きしめ返しそのまま車の後部座席へ座らせてシートベルトを閉めた。


「今日は頑張ったな。明日も学校があるし寝てなさい。」

「うん。わかった」


車のドアを閉めて、俺は一服しようと道路脇の街灯下へ移動した。すでに三浦が陣取っていて俺は横に立ちタバコに火をつけた。


「随分と懐かれてるじゃん」

「、、、まあ、5ヶ月も一緒にいるとな。多少距離は縮まるさ」

「にしても今日すごかったな。無表情で頭を潰すなんてなかなかできねーぜ。あの子はもしかすると本当に」


フ〜とゆっくり煙を吐き出す。最近は室内でタバコが吸えなくなったので吸う機会が減った。そろそろ時代に追いついて禁煙すべきかもしれないなと思いながらもう一度タバコに口をつけた。


「まあ、ほどほどにしとけよ。いつ兵器利用されるかわからないんだしな」

「、、、わかってるよ」


俺の持ち歩いてる持ち運びの灰皿にタバコの吸い殻を入れて俺たちは車に戻った。

やっとクソみたいな1日が終わる。




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