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目覚め

 ……夢を見た。サルたちの夢を、彼らが人間を虐殺している夢を。


 ……いや、違う。彼らは遊んでいるのだ。人間で。


 人間たちと、遊びたいと思っていたのだ。


 それが、彼らの人間に対する交流方法だったのだ……


「……ートサン」


「……うぅん、あれ?」


「レインコートさん!?」


 アタルが目を開くと、フランシーヌたちが顔を覗き込んで必死に名前を呼び掛けていた。


 どうやら、気が付けばアタルは床に倒れていたようだ。


 目が覚めたアタルに気が付いて、フランシーヌたちは目に涙をためて喜んだ。


「レインコートさん!! 良かった、目が覚めたんですね……!!」


「大丈夫かレインコート!? どこか変なところはないか!?」


「大丈夫ですよね!? ちゃんとレインコートさんですよね!?」


「うぇっ!? ど、どうしたんだ一体……!?」


「レインコートくん、君は『夢電車』が消えた後に突然倒れたんだよ」


 感極まったのかフランシーヌやフレイム、お嬢が抱き着いてきた衝撃に呻き驚いていると、ギタリストが状況を説明し始めた。


「君の状態を勝手に見せてもらったけど、たぶんMPが0になってしまったからだと思う。そしたらいきなり幽霊見たな奴らが襲い掛かってきて大変だったよ」


「そうね、こっちの攻撃で奴らに通じるのがフレイムとお嬢ちゃんの『陰陽術』くらいしかなかったからどうしようもなくて。たぶん貴方の『傘』がなかったら助けられなかったわ……」


「傘……?」


 その言葉にアタルが周囲を確認すると、『夢電車』に渡した半透明の傘が近くに落ちていた。


 一応、悪しきものを遠ざける力のある『霊術:霊傘』の傘は、どうやらアタルの命も救ったようだ。


「それで、一応幽霊のような奴らは全員倒せたんだが…… おめぇはちゃんとレインコート、だよな?」


「えぇっと…… ちゃんと俺のままですけど、これって俺が言っても信じてもらえるんですかね?」


「……まぁ、それもそうか。なら、大丈夫と考えて置こうじゃねぇか!」


「ははは……」


 豪快に笑う親方を見て、乾いた笑いがこぼれるアタル。正直まだ意識がはっきりとしておらず、うまく話についていけていないのだ。


「……その、自分の名前を言えるか?」


「えっ? いきなり何を…… あぁ、なるほど」


「雨野だよ、これで信じられるか?」


「よかった! レインコートさんだよ!!」


 アタルの名前を知っているフレイムが確認のため名前を聞いてきたため答えると、どうやらフレイムはちゃんと信じてくれたようだ。


 もしも幽霊のような奴らが乗り移ったとして、それがどのような乗っ取り方をするかわからないが、おそらく名前がかなり重要な意味を持つこの『異界』において、名前をやすやすと奪うことはできないだろうと考えたのだ。


 ……フレイムがそこまで考えているかはわからないが。


「それで、俺は一体どれくらい寝てたんだ?」


「あぁ、たぶん30分くらい? 今回は傘のおかげであまり動き回らないほうがいいと判断したけど、結構肝を冷やしたよ」


「すいません、皆さんに迷惑をかけました」


「別にいいのよ、私だってみんなに迷惑かけちゃったし、こういうのは持ちつ持たれつ、困ったときはお互い様よ!」


「……ありがとうございます」


 ローリエの言葉で少し気持ちが軽くなったアタルは、感謝の言葉を口にする。そんな彼を、仲間たちは笑って許してくれた。


「……とりあえず、これからはHPもMPも残りの数値に気をつけないといけないね」


「そうですね、HPは少なければ他の人が肩代わりできそうですし、MPは自分で管理するしかありませんが……」


「これ以上は皆さんに迷惑をかけられませんし、気を付けていきます」


 今後のHPやMPに関する意識を変えたところで、もしも自分が一人だったらと考えて、アタルは戦慄した。


 そして、ここで彼らと出会えた幸福を噛み締め、彼らと絶対に元の世界に戻ろうと決意するのであった。


「さて、そろそろ移動しようじゃねぇか。いつ他の化け物たちが襲ってくるかわからねぇ」


「……えぇっと、ちょっと遅かったかもしれないわ」


 ローリエの目線の先、曲がり角から顔を覗かせているのは『夢猿』だった。武器を構えようとするアタルをフランシーヌたちが抑え、ギタリストたちが武器を構える。


 その中には、先ほど『夢電車』が落としたノコギリを構えているローリエの姿もあった。


「……ローリエさん? そのノコギリって……」


「えぇ、私の足を切った奴よ! 私の足を切ったんだから、私がこき使ってやらないと!!」


 すごい精神力だと、アタルは感服する。普通、自分の足を切った道具なんて、見たくもないだろう。トラウマになってもおかしくないというのに、彼女は嬉々として握っている。


「それにしても、どうしましょう? こいつら倒しちゃったら、たぶんまたあいつが出るわよね?」


「うん、このままだとイタチごっこになりそうだよ」


「……それなら、戦わなくてもいい方法があるかもしれない」


「……レインコートくん?」


 体を動かさないようにといたわるフランシーヌを手で制して、アタルが立ち上がる。


 そしてギタリストたちの前に立つと、大きく息を吸って声を上げる。


「悪いが俺たちは、お前たちと遊ぶつもりはない! 死にたくなければ去るがいい!! 死にたい奴だけかかってこい!!」


「ウキキー ウキキーキー キーウキ ウキウキ!!」


「キーウキキーウキ キーウキキーキー ウキウキ ウキキーウキキー!!」


 アタルの言葉を聞いて、サルたちは尻尾を巻いて逃げていった。


 どうやら、あの夢は意味のある夢だったようだ。


「おぉ……」


「……とりあえず、大丈夫かな?」


 少し気を張りすぎたのか、危機が去って体のよろめいたアタルを、みんなが支えようと慌てるのであった。






 『レインコート』(雨野 中)


 HP7/33 MP1/19


 術式 『霊術:霊傘』『霊術:雨乞い』『霊術:雨上がり』


 状態 『川の主の寵愛』『救済対象』 繝サ縲手オ、縺?岑縺ョ蜻ェ縺?? 繝サ縲主セ。菴ソ縺?巨縺ョ邏?據縲       


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