第8話 チョコの国の閣僚会議
「チョコレートケーキの支配率を下げているのは、ショートケーキ、チーズケーキなどである!!そもそもチーズなどというものは、サラミと一緒にピザの上にでも乗っていればいいのである!!それをノコノコとケーキにまで進出しおって、けしからんっ!!チーズケーキとショートケーキは、必ず絶滅させてやるっ!!」
ブラックカカオ大統領の怒声が、チョコの国の大統領官邸であるブラックハウスの、西棟の閣議室に響き渡りました。以前はブラックカカオがそのような暴論を述べたときには、「しかしですね、大統領。人にはそれぞれ、好みというものがありますから。無理矢理、全員にチョコレートケーキを食べさせようとするのは、どうかと思いますが」などと、まともな意見を述べる大臣もいたのです。しかし独裁者であるブラックカカオは、そういう、自分の意見に反対する大臣をみんなクビにして、牢屋に入れてしまったのです。その結果、ブラックカカオの周りにいる大臣たちは、何も考えずにブラックカカオの意見にひたすら賛成するだけの、イエスマンだらけになりました。厳密に言うと一人だけ、"本当はイエスマンではないが、イエスマンのふりをしている人物"がいるのですが、それについては後でお話することにしましょう。
「すっ、素晴らしいっ!!大統領!!さすがです!そのような意見は、国民にも必ず支持されるでしょう。万が一、反対するような連中がいたら、牢屋に入れてやりましょう!」
正真正銘のイエスマンであるケーキ担当大臣のチョコッティが、取って付けたような笑顔で、わざとらしく拍手しながら言いました。ちなみにチョコッティはたまにブラックカカオと一緒にゴルフをするのですが、そのときもブラックカカオがボールを打つたびに、「ナイスショット!!大統領、素晴らしいっ!!素晴らし過ぎますっ!!」などと、歯の浮くようなお世辞を言います。まともな人であれば、そんな見え透いたお世辞を言われたら気持ち悪さを感じるのですが、ブラックカカオは権力とお金に幻惑されて大切なことが何も見えなくなっているので、満足気な笑みを浮かべて「むふふ。わしの腕前も、なかなかのものだろう?」などと返答するのです。
チョコッティのろくでもない意見を聞いたブラックカカオは上機嫌で、
「うむ。さすがはチョコッティ。素晴らしいアイデアだ。チョコム、キャンディの方は最近、どうなっている」
と、今度はキャンディ担当大臣のチョコムに訊きました。
「はい、あまりよろしくない情勢です。大統領は、チュッパチョップスティックという、様々な味がある二本入りの細長いキャンディをご存知ですよね?」
「うむ。もちろん知っておる。画家のサルバンドール・ダリィ・カッタルイがパッケージをデザインした、子供たちに人気のキャンディだ」
「その通りでございます。そのチュッパチョップスティックの、味別の売り上げランキング・ベスト10を、正確な調査を元にして作ってみたのですが…」
「どうだった?チョコ味は1位だったか?」
「いえ…大変申し上げにくいのですが、10位以内に入ることが出来ず、ランク外になりました。1位はコーラ味、2位はプリン味でした」
ブラックカカオの顔が、みるみる険しくなりました。
「なっ、なんだとぉ!?コーラ味が1位!?ふ…ふざけおって…!!あんなの、ただの黒い砂糖水じゃないか!!プリンに至っては、プリン自体がデザートなのに、それの味のキャンディを作って、何の意味があるっ!!バカバカしいっ!!」
ブラックカカオの剣幕に、チョコムはビビりまくっていました。他の大臣たちも、内心、"本物のプリンよりもお手軽に食べられるとか、色々メリットあるじゃん。こいつ、ほんとバカだな"と思っていたのですが、そんなことを口にしたら確実に牢屋に入れられるので、黙り込んでいました。




