第7話 チョコレート警察の秘密潜入捜査
ラクラミキオアラのお母さんはラクラミキオアラに予告していた通り、ルーマニアの伝統的な豚肉料理であるサルマーレやトバを作っていました。鳥の妖精であるドイナも、人間の姿になっているときは味覚がかなり人間寄りになるので、ラクラミキオアラやペイズリー3世と一緒に、お母さんの料理を美味しく食べました。お母さんはデザートも手作りで用意していました。まずは、ルーマニアの伝統的な菓子パンであるコゾナックです。ラクラミキオアラのお母さんは、レーズンやナッツを入れた、焼きたてのコゾナックをオーブンから取り出して、お皿に乗せました。
「わぁ〜!すっごくいい香り〜!!」
ドイナが目を輝かせて言いました。
お母さんは他にも、フルーツを入れたタルトケーキも作っていました。三人の子供たちは、大喜びでそれらのデザートを食べていました。
「わたし、チョコレートケーキも大好きなんだけど、今年はタルトケーキがいいなと思って、お願いしたんだ!作るとき私も、ちょっと手伝ったんだよ?」
ラクラミキオアラが笑顔でそう言いました。
「タルトケーキすっごく美味しいよね!!わたしも食べたことあるよ!ケーキ屋さんで買って!」
ドイナがそう言うと、ラクラミキオアラは目を丸くして驚きました。
「えっ!?ドイナ、鳥の妖精なのに人間のケーキ屋さんでお買い物したことあるの!?お金はどうやって手に入れたの!?」
「果物をたくさん並べて売ってる露天商の人がいてね。その人に"お手伝いさせて下さい!!"って言って、ちょっとアルバイトしたの。履歴書を出さなきゃいけないようなアルバイトは出来ないからさ。てへっ!」
「え〜っ!!ドイナ、凄すぎ!!いつの間に、そんなことしてたのよ〜!」
「うふふふ。だからわたし、結構いろんな種類のケーキ食べたことあるんだよ?チョコレートケーキも好きだけど、一番好きなのはタルトケーキなの!だから今、すっごく幸せ!…お母さん!すっごく美味しいです!!」
ドイナはラクラミキオアラのお母さんに向かって満面の笑みで言いました。
「あら〜!嬉しいわぁ〜!!クリスマスに限らず、たまに作るから、何度でも食べに来てね!!」
幸せそうにケーキを口に運ぶ子供たちを眺めながら、ラクラミキオアラのお母さんがやさしい笑顔で言いました。
そのとき子供たちを眺めていたのは、実はラクラミキオアラのお母さんだけではありませんでした。
チョコレート警察も、見ていたのです。
チョコレート警察というのは、チョコレートの国にある警察です。最近、チョコの国の大統領に就任したブラックカカオ大統領はかなり独裁的な人物だったので、自分の権力を強化し、対抗勢力を潰すための道具としてチョコレート警察を使っていました。チョコレート警察の内部には、もちろんそのような動きに反対し、抵抗する人達がいましたが、ブラックカカオ大統領はそのような人達をみんな逮捕して、牢屋に入れてしまったのです。チョコの国はもはや、法ではなく、ブラックカカオという一人の人が支配する国になってしまったのです。
ブラックカカオも含め、チョコの国の人たちを、ラクラミキオアラのような普通の人間と区別して言うために、これから先は"チョコ人"と呼びます。
チョコ人は、ラクラミキオアラたちが暮らしている時空とは別の、チョコ時空で暮らしています。空の上ではなく、地下でもなく、全く別の時空で暮らしているのです。その時空は人間が見ることは出来ません。しかし、チョコ人は人間の世界を見ることが出来ます。そして、小さくなって人間の世界に忍び込み、潜入捜査することも出来るのです。チョコ警察の警官たちは、空飛ぶパトカーに乗って、人間の部屋の中を飛び回っているのです。しかし、人間からは全く見えないので、そのことに気づいている人間は一人もいません。
ケーキを食べているラクラミキオアラたちの周りを、チョコ警察のフライングパトカーが飛び回っていました。
「え〜、こちら現在、ラスノフ018地区をパトロール中。レーズン入りのコゾナックやタルトケーキに夢中になっている子供が数名おります。このままではチョコの支配率が低下するものと思われます、どうぞ」
チョコ警官は、チョコ無線で警察本部と連絡を取り合っていました。無線なので、自分の発言が終わったことを相手に伝えるために、最後に「どうぞ」と言うのです。
「こちら本部、了解した。可能であれば連行するように。テレポート装置の使用を許可する。どうぞ」
ブラックカカオ大統領は、お菓子、ケーキ、菓子パンなど、様々なカテゴリにおいてチョコの支配率を高め、最終的にはチョコが完全支配することを目指していました。なので、タルトケーキやチーズケーキ、あんぱん、カスタードのクリームパンなどを好む人達を、みんな捕まえて牢屋に入れるという恐ろしい計画、『チョコレート計画』を実行に移し始めたのです。




