第76話 ローカル局の番組
※「市民会館でキックボクシングの試合は無理じゃないか!?」と気づいたため、「市民体育館」に訂正しました!笑
テレビの画面に映し出されたのは、キックボクシングのリングが中央に設置されたチョコパフェ市民体育館の様子を伝える女性リポーターでした。
「こちら、チョコ-1 グランプリの地区予選会場です!東地区の予選会場となっております、チョコパフェ市民体育館にお邪魔しております!!すごい人ですっ!きゃ〜!」
女性リポーターの背後には、日頃からろくなことをしてなさそうな男子中学生が5、6人おり、少しでもテレビに映ろうと必死になっていました。彼らは一様に手でVサインを作り、テレビを観るかも知れない友達に向かって「観てる〜!?イエーイ!!」などと大きな声で言っていました。彼らが勢い余って、前にいるリポーターの背中を押してしまったので、「きゃ〜!」と悲鳴を上げたのです。リポーターが彼らの存在を迷惑に思っていることは火を見るより明らかでしたが、顔に出すわけにもいかないので、無理をして笑顔を作っていました。
「うわ⋯いるよね、こういう、迷惑なことをする男子!」
ダリアが呆れ顔でつぶやきました。
「地区予選は東西南北4つの地区で行われているのですが、そのうちのひとつであるこの会場に、この大会のスポンサーである、ヤスミン・ディニクさんがお見えになっています!!ディニクさん、こちらへどうぞ〜!!」
レポーターに促され、ダブルのスーツでビシっときめたヤスミン・ディニクが出てきました。黒髪のオールバックなのですが、橋本龍太郎と違って、あまり似合っていませんでした。
「ディニクさん!地区予選の会場は4つありますが、なぜ今日は、この東地区のチョコパフェ市民体育館を選んで、お越し下さったんですか?」
「それはねぇ⋯なんとなくだよ!!なんとなく!!ワッハッハッハッ!!」
「そ、そうなんですね⋯!素敵ですっ!!ディニクさんが特に注目している選手というのは、いらっしゃいますか?」
「それはねぇ⋯全員だよぉ!!全員!!みんなを応援しているんだよォ、わしは!!ワッハッハッハッ!!」
「そ、そうなんですね!!さすがですっ!!この大会のルールは、キックボクシングというよりムエタイに近いと伺いました。組み合って膝蹴りを入れたりするのもアリなんですよね?」
「そうなんだよォ⋯もうね、キックボクシングって言ってると怒られそうだから、ムエタイの大会って訂正したいくらいなんだよォ!!ワッハッハッハッ!!」
「そ⋯そうなんですね!!じゃ、じゃあ、今からもう、この大会はムエタイの大会ってことにしちゃいましょうか!?アハ、アハハハ⋯!」
クセの強いスポンサーの相手をするのに苦戦しているリポーターを見て、今度はトシヒコが「このネエチャン、大変そうだな⋯」とつぶやきました。
やがて、試合が始まりました。トシヒコとダリアが視聴を始めたその番組は、行われた全ての試合を余すところなく伝えるのではなく、視聴者が食いつきそうな場面を選び抜いて伝える番組でした。そのため、地味な展開が続いて判定で勝敗が決まった試合の映像はほとんど流されず、見栄えのするパンチやキックで勝負が決まった試合が優先的に流されました。
「あっ!なんか、かっこいい人、出てきた!!しかも強そう!⋯クララ!!ちょっと、こっち来てよ!!イケメンだよ!!イケメン!!」
ダリアがそう言うと、トシヒコも画面を見ながら、
「そうかぁ!?別に普通じゃねえか?でも、性格は絶対いいな、こいつは。おれは人を見る目があるから、分かる」
と言いました。クララは相変わらずアドリアンに政治・経済の講義を行っており、夢中になって解説をしていたため、ダリアが自分を呼んだことに気づきませんでした。
「コモン・ローって言葉はね、いろんな意味で使われるから注意が必要なのよ!!大陸法の対概念として使われる場合、成文法・制定法の対概念として使われる場合、エクイティの対概念として使われる場合⋯」
クララがそこまで解説したところで、ダリアはクララの首根っこをつかんで、「ちょっと!!教授!!いいから、こっち来て、イケメン見てよっ!!」と言い、クララをテレビの前の椅子まで引っ張っていきました。




