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第5話 楽しい地図

「ドイナ、ラクラミキオアラのお家がどこにあるか、知ってるの?行ったことあるんだっけ?」

 ペイズリー3世が()きました。

「ううん。無いよ!でも、この前公園で遊んだときに、ラクラミキオアラがお家で描いてきた地図をくれたの」

 ドイナはポケットから小さく折り畳んだ紙を取り出し、それを広げて見せました。それは道や、目印にするためのいくつかの建物、そしてラクラミキオアラのお家などが全て可愛いイラストになっている、とても個性的な地図でした。

「なんだ、この地図!めっちゃ面白いじゃん!」

 ペイズリーが笑いながら言いました。

「この、屋根の上で猫が寝てる建物が、ピシカ・ドルミンダ書店ってことだよな」

「うん。そうだと思う」

右端(みぎはじ)にある、女の子が中から手を振ってる家が、ラクラミキオアラの家ってことか」

「うん。そうだね」

「分かれ道のところに郵便ポストが描いてあるね。ちゃんと黄色に塗ってある!(ルーマニアの郵便ポストは黄色なのです)え〜と、郵便ポストがあるところで右に曲がれってことか」

「結構分かりやすい地図だよね!」

「でも、途中に描かれてる家のイラストの上に"アニーのお家↓"とか、"ここがモモのお家だよ↓""サンディが経営する会社のビルで〜す。3階建てだよ↓"とか、たくさん描かれてるけど、これ、ほんとにあるの??」

「あるわけないでしょ!全部、ラクラミキオアラがふざけて描いてるだけだよ!そもそもサンディって、アニーといつも一緒にいる犬だからね!?」

 ドイナが笑いながら言いました。

「そ、そういうことか…さすがラクラミキオアラだな…。なんで3階建てなんだろ?」

「それは多分、日本語で3のこと"サン"って言うからよ。ラクラミキオアラに教えてもらったことがあるの。日本語だと1、2、3はイチ、ニ、サンだって。サンディだから3なのよ、きっと」

「へえ〜!あいつ、なんでそんなこと知ってるの!?」

「ラクラミキオアラのお母さんは日本の小説が好きで、日本語にすっごく詳しいの。自分で本を買って勉強したんだって。ラクラミキオアラの名前も、未希っていう日本の小説の登場人物と、ルーマニア語の"ラクラミオアラ"を組み合わせて付けた名前なんだって」

「へえ〜!さすがドイナ!ラクラミキオアラのことなら何でも知ってるね!」

「ふふふ。そりゃまあ、親友ですから!当然よ!」

 ドイナは少しおどけた誇らしげな表情で言いました。

「なるほどね!とりあえず、この地図を頼りに歩いて行こう!」

「うん!」

 二人は、お茶目な地図を見ながら歩き始めました。ラクラミキオアラが作った地図は、ふざけて書いた部分が多いわりに、お家にたどり着くための大事なポイントはしっかり押さえていたので、二人はほとんど迷わずにラクラミキオアラのお家にたどり着くことが出来ました。地図に描かれているラクラミキオアラのお家のイラストの横に、ルーマニアでひとつひとつの建物に振られている建物番号が書かれていたのですが、その番号と一致する家が、見つかったのです。

「じゃ…じゃあ、押すよ?」

 ペイズリーが少し緊張した顔で、塀の表面に設置されたインターフォンのボタンに指先を近づけて、言いました。

「う、うん!」

 ペイズリーの緊張が伝染して、ドイナまで緊張した表情になりました。仲良しとはいえ、魔法使いと妖精が、生まれて初めて普通の人間の家に遊びに来たのですから、緊張するのも無理はありません。


 ピンポーン…!


 ボタンを押すと、ラクラミキオアラのお家の中に、澄んだ音が響きました。

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