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第37話 未来への奔走

 チョコレツィカは第一機動隊にブラックハウスに留まるよう指示し、第二ならびに第四から第七までの機動隊には、分散して全国十八箇所の収容所に向かうよう指示しました。それらの収容所に入れられているチョコ人は、何の罪も無い人達ばかりでした。そもそも刑法に当たる法律が無いので、何が罪なのかも分からない状態なわけですが、例えば路上で人を殴ったとか、物を盗んだとか、明確な悪事を働いた人達は収容所ではなく、チョコ警察庁の管轄下にあるチョコ牢獄に入れられていました。十八箇所の収容所は親衛隊の管轄下にあり、ブラックカカオ直属であるのをいいことに、善良な市民に言いがかりをつけて連行、暴行するなど、やりたい放題やっていたのです。収容されると、一日に十時間以上も重労働をさせられ、簡素な寝台に押し込まれ、最低限以下の食事と水だけしか与えられないので、絶命するのは時間の問題になってしまうのです。チョコレツィカが機動隊を向かわせたのは、その人達を助け出すためでした。

 チョコレツィカは、収容所の守衛や看守に対して、まず離れた場所から拡声器で警告するよう機動隊に指示しました。守衛や看守がろくでもない連中ばかりだというのはチョコの国ではよく知られたことだったので、まずは彼らを立ち退かせることが必要でした。数や戦闘力では機動隊が圧倒的に勝っているので、「抵抗は無駄だ。抵抗しなければ、我々は危害を加えたりはしない。おとなしく立ち退きなさい」と拡声器で警告し、もし出てこなければ防護盾を構えながら慎重に突入し、制圧するよう指示しました。

「出来るだけ発砲は避け、死傷者ゼロで人々を解放することを目指してくれ。解放したら、衰弱の度合いが高い人から順に、病院に運ぶんだ。それぞれの病院には受け入れ人数の限界があるから、収容所の無い地域の病院にも連絡して、受け入れの可否を尋ね、収容所の中で診察や応急処置に当たる医師を派遣してもらえないか打診するんだ」

 最後にチョコレツィカはそう言って、機動隊を送り出しました。

 そのあとチョコレツィカは、ブラックハウスに残した第一機動隊を引き連れ、チョコの国で最も大きな図書館である、ブラックカカオ図書館に向かいました。ブラックカカオ図書館という名称はブラックカカオの祖父が「何でもかんでも、俺の名前をつけたい!」と言い出して勝手に改名してしまったもので、元々はチョコチェル国立図書館という名称でした。ブラックカカオの祖父は、誇らなくていいのに圧倒的な自己顕示欲を誇る本物のバカだったので、公園に設置したトイレにまで「偉大なるブラックカカオ大統領・生誕60周年記念・スペシャル・ラグジュアリートイレ」という名称をつけたり、大統領官邸の前に元々あった、ただのアスファルトの地面に、「偉大なるブラックカカオ大統領・生誕62周年記念・ブリリアント・ハイエンド・ゴージャス地面」と名付けたりしていました。そんな調子なので、人々は陰で「あいつ、ほんとバカ!」「自分で"偉大なる"とか言うか?普通。どういう神経してるんだろ」「安定のバカ!」などと悪口を言っていました。

 そんなバカのことより、チョコチェルについて説明をしなければいけませんね。チョコチェルというのは、ブラックカカオの高祖父に殺害された、昔のチョコの国の王様です。高祖父というのは、曽祖父の父、つまり「ひいひいおじいちゃん」です。

 チョコチェルは選挙で選ばれた人ではなく絶対王政の君主でしたが、きちんと国民の幸せを考える人だったので、国民に愛されていました。チョコチェル国立図書館という名称も、チョコチェル自身がそう名付けろと命じたわけではなく、心からの敬意を表して周りの人達が付けたものでした。

 チョコレツィカがブラックカカオ図書館に向かったのは、図書館の前にある広大な広場を使うためでした。その広場は一般的な小学校の校庭を十面集めたくらいの広さを持ち、中央に噴水があるのですが、それ以外は舗装された綺麗な平地で、大勢の人々を集めるには最適なのです。

 チョコレツィカはそこに人々を集め、テレビ局に中継をさせて、国民に向けて演説をすると決めたのです。そして図書館の名称も、「チョコチェル国立図書館」に戻すと決めていました。

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