表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/44

第24話 3世の涙

 会議室を出たチョコレツィカは、チョコレート計画担当大臣の執務室に戻り、しばらくの間、黙考しました。何をどのような順序で行うのが最善か、限界まで頭を回転させて考えました。

 30分後チョコレツィカは、第三機動隊の隊長チョコイウビレと、隊員の中から選んだ300人とともに、執務室が置かれたチョコ警察庁の庁舎を出発しました。テレポート装置を搭載したパトカー20台、隊員を乗せるための大型人員輸送車8台の他に、担架100台を積んだコンテナトラックが1台という編成でした。目指した目的地は、庁舎から10キロ離れた場所にある監獄棟です。ブラックカカオを倒してから救出するのでは間に合わないと判断したチョコレツィカは、計画を変更して、まず先に人間達を助け出すことにしたのです。


 その監獄棟の地下室では、チョコパンと水しか与えられていない収容者達の健康状態の悪化が、更に深刻な段階まで進んでいました。ビタミンやミネラル、たんぱく質の不足により口角炎や口内炎が生じ、肌は荒れ、爪の周りはささくれていました。脚気の症状や頭痛、腹痛を訴える人もたくさんいましたが、もちろん薬は無いし医師もいないので、どうすることも出来ませんでした。収容期間が最も長い人達の中には、悪性栄養失調の症状が進み、あばらが浮き出るほど痩せ細っているのに、お腹がぽっこり出ている人もいました。

 五歳で抵抗力の弱いアネモナは立ち上がることが出来なくなり、話しかけてもほとんど反応しなくなっていました。ラクラミキオアラは、アネモナが大好きな『アニー』の話を語り聞かせましたが、半分だけ開かれた目はうつろで、宙を見つめたまま全く動かなくなっていました。

 背を向けて、肩をふるわせて泣いているペイズリー3世にラクラミキオアラは、「ペイズリー、大丈夫?」と声をかけました。ペイズリーは、絞り出すような声で、こう答えました。

「ラクラミキオアラ、おれは、悔しい。おれはアネモナよりも小さかった頃から、じいちゃんの特訓を受けてきた。毎日、毎日、世界一の魔法使いになるための特訓を受けてきた。じいちゃんは、"人を助けるために魔法を使え"といつもおれに言っていた。それなのに、今こうして、目の前で苦しんでいる人達がたくさんいるのに、何ひとつ、してあげられないんだ。少しも助けることが出来ないんだ」

 ペイズリーは泣いていました。ラクラミキオアラはペイズリー3世の手をぎゅっと握り、

「そんなことない。ペイズリーは何度もわたしのこと、助けてくれたよ。今だって、もしペイズリーがいなかったら、わたしはもっと心細くて、きっと泣いてたよ」

 と言いました。

「ペイズリーがみんなを助けるときが、きっとくる。今はまだ、その段階までいってないだけだよ。だから泣かないで、ペイズリー。わたしも、諦めないから」

 ラクラミキオアラの言葉を聞いたペイズリーは、しゃくり上げながら小さく頷きました。


 チョコレツィカは、チョコ人が働いている庁舎やチョコ人が入れられている収容所に比べ、人間が閉じ込められている監獄棟は盗聴器が仕掛けられている可能性が低いと考えていました。なぜかと言うと、ブラックカカオが警戒し恐れているのは、味方の裏切りだからです。人間達はいきなり勝手にチョコの世界に転送され、チョコのお城だと騙されて監獄まで来て、銃で脅されて地下室に入れられたわけなので、ブラックカカオの悪口を言うのは当たり前ですし、敵意を持っているのも当たり前なのです。そして彼らは武器は何も持っておらず、暴動を起こしたところですぐに制圧出来るとブラックカカオは思っているはずなので、わざわざ盗聴器を仕掛けたりはしないだろうと考えたわけです。

 とにかく一刻も早く地下室の人達を助けなければと考えていたチョコレツィカは、監獄棟の周りにいる守衛の警官をどのように排除するか、まず考えました。守衛はブラックカカオ派の警官で固められていたので、人間救出作戦を実行するうえで、非常に邪魔でした。彼らから見ればチョコレツィカは雲の上の人なので、命令をすれば即座に従うのは間違いないのですが、たくさんの人間を担架で運び出していたら、さすがに"何事か"と思って騒ぎ出し、ブラックカカオに報告されてしまう可能性があると考えたのです。なのでチョコレツィカは、監獄棟に到着するとすぐに、守衛の警官達に、こう説明しました。

「詳しいことは言えないが、緊急事態が発生した。テレポート装置の不具合で、ものすごい数の人間が一度にこっちの世界に転送されてしまった。ここに押し寄せてくる可能性があるので、しばらくの間、ここの警備は第三機動隊が担当する。お前達は、今日はもう家に帰っていいぞ。給料はちゃんと出るから安心しろ。ブラックカカオ大統領はいつもお前達のことを、非常に勤勉だと、褒めておられる。おそらく、そのうち特別ボーナスが出るんじゃないか?期待してていいぞ」

 守衛の警官たちは、大喜びで自宅に帰っていきました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ