第19話 偽の会議と、本当の会議
地下室に入れられた人達は粗末な食事しか与えられていなかったので、少しずつ衰弱していきました。ラクラミキオアラたちは新入りだったのでまだそこまで衰弱していませんでしたが、チョコレート計画が始まった初期の頃に入れられた人達は、立ち上がるのもやっとという状態になっていました。チョコレツィカはそのことを知っていたので、一刻も早くクーデターを起こしてブラックカカオを倒し、閉じ込められている人達を救い出さなければいけないと焦っていました。
チョコ警察には第一機動隊から第七機動隊まで、七つの機動隊がありました。チョコ警察にも刑事課や交通課、生活安全課のような部署はあるのですが、それらの部署が抱えている人員の数は、チョコ警察全体の一割にも満たないのです。独裁者であるブラックカカオは、実質的には軍隊である機動隊に、ほとんどの人員を割り当てていました。そして市民革命やクーデターが起きたときには、機動隊の力で叩き潰そうと考えていたのです。
しかしブラックカカオは自分の権力を維持することしか考えていないバカなので、機動隊員の中には、ブラックカカオに対し強い反感を持っている者が大勢いました。
チョコレツィカは、チョコレート計画担当大臣に就任した二日後には、早くも機動隊の七人の隊長人事を刷新しました。チョコ警察の内部には、レジスタンスであることを隠して採用試験を受け採用されたチョコレツィカの昔馴染みの同志がたくさんいました。その中から、"最も信用できる七人"を選び、隊長に据えたのです。
大臣就任三日後からは、七人の隊長が毎日集まって、隊長会議を開くようになりました。なぜかと言うと、ブラックカカオが「会議は必ず毎日開くように!よく話し合って、気持ちをひとつにすることが何よりも大事!」と、柄にもなく良いことを言ったからです。ブラックカカオは、そのための新しい会議室まで用意しました。"なんで、そこまでするんだろう。怪しい…"と思ったチョコレツィカが新しい会議室を調べてみると、案の定、盗聴器が仕掛けられていました。チョコレツィカはその盗聴器に、隊長七人の声を完璧に記憶したAIが作った、フェイク会議の音声を聞かせました。
「いや〜、俺いつも思うけど、ブラックカカオ大統領って完璧だよね!頭がいいし、見た目も格好いいし!」
「ほんと!みんなが憧れるのも分かるよね!」
「うちの息子もブラックカカオ大統領の大ファンで、ブラックカカオ大統領Tシャツをいつも着てるよ」
その音声を聞いたブラックカカオは上機嫌になり、「明日の会議も楽しみだ!」とニンマリしました。
チョコレツィカは、盗聴器が飛ばす電波を無効化する特殊な床材と壁紙を使った新しい部屋を、チョコ警察の建物内に造らせました。秘密裡に造られたその特別な部屋で開かれた"本当の会議"は、毎回、かなり盛り上がりました。
「ブラックカカオ、ほんと最低だよな!」
「何がブラックかって、あいつの心が一番ブラックだろ」
「上手いこと言うね!」
「あいつだけは許せない!」
「地下室に入れられた人達は粗末なものを食べて木の板の上で寝てるのに、あいつは最高級の料理に舌鼓を打って、フカフカの最高級のベッドで毎晩寝てるんだぜ?」
「地下室に入れられた人達の中には、子供もいるそうじゃないか。あいつにも娘がいるのに、何も思わないのかな。ほんと、どうかしてる」
ブラックカカオに対する批判と悪口ばかりが述べられ、まさにブラックカカオが望んだ通り、全員の気持ちがひとつになったのです。
「あのバカを、権力の座から引きずり下ろそう!そして、地下室に閉じ込められた人達を救い出そう!」
「賛成!」
「賛成!!」
「大賛成!!!」




