第18話 創造する力
「アネモナ…お花の名前だね!わたしの名前も、お花のラクラミオアラと、日本の女の子の名前を組み合わせた名前なの!お花仲間だね!」
ラクラミキオアラがそう言うと、アネモナは目をきらきら輝かせて喜びました。
「ラクラミオアラ、こっち、きて」
アネモナがラクラミキオアラの手首をつかんで、引っぱりました。
「えっ!?どこに連れて行く気!?あと、わたしは、ラクラミキオアラだからねっ!?」
ラクラミキオアラが笑いながらそう言うと、アネモナは、「ラ…ラクラキミオアラ…!」と言いました。
「惜しいっ!!キとミが、逆っ!!」
「ラ…ラクラミキミオアラ…!」
「う〜ん…あと一歩!!ミが増えちゃったから、ひとつ減らして!!」
「ラ…ラクラミキオアラ…!」
「正解っ!!それ、正解だからしっかり覚えておいてっ!!」
「うん!」
そんな会話をしながらアネモナがラクラミキオアラを連れて行ったのは、自分の両親がいるところでした。アネモナの両親は地下室の入口近くの三段ベッドを使っていて、アネモナが年上の女の子の手を引っぱって戻ってきたのを見ると、目を丸くして驚きました。
「ママ〜!お友達できたぁ〜!ラクラミキミオアラ〜!」
アネモナはそう言ってラクラミキオアラを両親に紹介しました。ラクラミキオアラは、"また『ミ』が増えちゃってるじゃん!"と思い、噴き出しそうになりましたが、堪えました。
「あら、あら…!ダメよ!そんなに強引に引っぱって来ちゃ!…本当に、ごめんなさいね。うちの子、結構人見知りなんだけど…。珍しいわ!お友達を作って、連れて来るなんて!」
アネモナのお母さんがそう言うと、ラクラミキオアラは、
「そ、そうなんですか!?お友達っていうか、さっき少し話しただけなんですけどね。アハ、アハハハ!」
と、少し困った顔で愛想笑いしました。初めは愛想笑いでしたが、話してみるとアネモナの両親はとっても優しくて、いい人達でした。もちろん、いい人かどうかはそんなに簡単に分かることでは無いのですが、ラクラミキオアラは自分の直感に自信を持っていて、実際、後になって振り返ってみたときに、それは当たっていたことが多かったのです。しばらく話すうちにラクラミキオアラとアネモナの両親は、本当の、自然な笑顔で話せるようになりました。アネモナがトイレに行っているときに、お母さんはラクラミキオアラに、こう言いました。
「この奇妙な世界に突然連れて来られて、もちろん本当は、不安でたまらない。だけど、わたし達が不安そうな顔をしていたり、泣いたりしていると、アネモナも同じようになってしまうでしょう?だから、出来るだけ明るく振る舞うようにしているの」
ラクラミキオアラはその言葉を聞いて、"やっぱりお母さんって、子供のためなら強くなれるんだなあ"と思いました。
しばらくすると、アネモナがトイレから戻ってきました。
「ラクラミキミオアラ、おかあさんと、なんのお話してるの?」
「ふふふ…内緒だよ〜!」
ラクラミキオアラがおどけてそう答えると、アネモナも、おどけた笑顔でラクラミキオアラの脚をポンと叩きました。
「ここは、何も娯楽が無いでしょう?アネモナは退屈な時間が苦手な子だから、きっと楽しいことを求めて、あなたに話しかけたのね」
アネモナのお母さんは、そう言ってラクラミキオアラに微笑みました。
「そうなんですか?わたしさっき、"この子、凄い!"って思ったんです。多分レシートだと思うんですけど、小さな紙を使って、器用にプリーツスカートを作っていたんですよ。ほとんど何も無いような状況でもアネモナちゃんは、楽しいことを自分で生み出すことが出来るんです!それって、凄いことですよ!」
ラクラミキオアラがそう言うと、お母さんは嬉しそうな顔をして、アネモナに、
「アネモナ〜!良かったわね〜!おねえさんに、褒めてもらえたよ〜!?」
と言いました。アネモナは、"どうだっ!"という声が聞こえてきそうな、得意気な顔をしていました。
その日からアネモナとラクラミキオアラは、日増しに仲良くなっていきました。アネモナは昼寝をし過ぎて夜、眠れなくなることが多く、ラクラミキオアラも夜更かしをするのが好きだったので、二人が話に花を咲かせるのは大抵、ドイナたちが眠りについた後でした。
読書が趣味のラクラミキオアラはたくさん物語を知っていたので、ひと晩に三つも四つも、小さな声で物語を語り聞かせて、アネモナを喜ばせました。その中にはラクラミキオアラが大好きな『モモ』や『オズの魔法使い』、『アニー』も含まれていたのですが、二人はまさにアニーとモリーのような仲良しになりました。




