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第16話 1世の言葉

 チョコ姫は、方位磁石と地図を交互に見ながらペイズリー3世に「もうちょっと右かな。15度くらい」などと指示をしていました。地図には、さっきラクラミキオアラたちが目を覚ました場所が"現在地"として記されており、基本的には北へ進めばチョコのお城に着くのだとチョコ姫は理解していました。

 飛行を初めて五分ほど経つと、前方に巨大な建造物が見えてきました。それは樹木を取り除いた正方形の巨大な敷地に建てられており、色は真っ黒で、階段ピラミッドのような形状をしていました。

「多分、あれだと思う」

 チョコ姫がそう言うと、ペイズリー3世は「分かった。降下しよう」と答え、緩やかな角度で少しずつ降下を始めました。

 ペイズリー3世は、建物から30メートルほど離れた場所にステッキを着陸させました。ステッキを手のひらサイズに戻しポケットに入れたペイズリーは、

「制服を着た、守衛みたいな人達がいるね。静まり返っていて、なんだか不気味なところだな」

 と言いました。彼が言った通り、建物の周りには黒い軍服のような制服を着た男達が、ラクラミキオアラたちから見える範囲だけで10人くらいいました。ラクラミキオアラたちと同じように、ここに到着したばかりでキョロキョロと周囲を見回している人達も、あちこちにいました。その人達は黒い制服を着ていないので、簡単に見分けがつきました。

 黒い制服を着た男達のうちの一人が、右手に警棒を持って近づいて来ました。

 「そのあたりは危ないから、こっちに来なさい。建物の近くは安全だ。チョコのお城のパーティーがもうすぐ始まる。参加したいだろう?」

 男はそう言うと、すぐに建物の方を向いて、建物に向かって歩き始めました。

「ちょ、ちょっと待って下さい!参加するなんて、言っていませんよ!わたしはお母さんに会いたくて来ただけで…」

 チョコ警察は、人間の住む世界には魔法使いがいることを潜入捜査で把握していました。魔法使いはチョコレート計画を進めるうえで邪魔になると考えたブラックカカオは、監獄の中心から半径200メートルの円の中に入ると、魔法が使えなくなるようにしていたのです。なぜチョコの国全体をそのようにしなかったのかと言うと、魔法を使えなくするためにはチョコの国で採れる特殊な天然石を砕いて粉末状にし、地面に撒く必要があるのですが、その天然石はとても貴重なもので、いくらでも手に入るようなものでは無かったからです。

 ラクラミキオアラたちは男と話すために歩み寄ったのですが、そのとき、半径200メートルの円の中に入ってしまいました。

 男は、黙ったままラクラミキオアラたちの方を振り返りました。彼女たちが円の中に入ったことを認識した男は、ニヤリと微笑んで、腰に巻いていたホルスターから拳銃を抜き、子供達に向けました。

「おとなしくするんだ。お前達はこれから、牢屋に入るんだ」

 ラクラミキオアラたちは恐怖で凍りつきました。

そのときペイズリー3世は、今よりもっと幼かった頃からペイズリー1世に繰り返し言われてきた言葉を思い出しました。

"人を傷つけるためじゃなく、人を守るために魔法を使うのじゃ!"

 ペイズリーは、小さな竜巻を発生させて男を吹き飛ばしてしまおうと考え、

「ポルネーシュテ、トルナード! スプローベ・アチェスト・バールバット!」

 と言いながら右の手のひらを男に向けました。しかし、何も起きませんでした。

「ハハハハハ!残念だったな、魔法使いの少年よ。ここでは、魔法は使えない。よく覚えておけ」

「ちょっと!ふざけないでよっ!!大人なのに、子供にそんなこと言うなんて、最っ低!!!」

 ラクラミキオアラが怒って男にそう言うと、チョコ姫が、

「ラクラミキオアラ!ダメ!」

 と言いました。歯向かったら危険だと思ったのです。

「生意気なガキだ!!」

 男はそう言って、銃を握った右手を振り上げました。ラクラミキオアラが殴られてしまうと思ったチョコ姫は、覆いかぶさるように彼女を抱き締めました。

 ガンッ!!

 殴られたのは、ペイズリー3世でした。彼はチョコ姫とラクラミキオアラを守るために、銃が振り下ろされる場所に飛び込んだのです。ペイズリーはそのまま、地面に倒れました。気を失ってはいませんでしたが、当たった腕から血が流れていました。

「ペイズリー!!」

 ラクラミキオアラは大きな声で叫んで、倒れているペイズリーに近寄りました。彼の肩に腕を回し、泣きながら、「ごめんね。ごめんね…大丈夫?」と声をかけました。ペイズリーは薄目を開けて、「うう…いてて…大丈夫、大丈夫…」と答えました。

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