表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
14/22

第14話 透明な響き

「ありがとう、ラクラミキオアラ。とにかく、チョコのお城に向かいましょう。この紙に描かれた地図と方位磁石があれば、たどり着けるはずよ。この方位磁石、絵なのに動いてるのよ。本当に凄いわ、これ。一体どういう仕組みなのかしら」

 チョコ姫は、地図に描かれた方位磁石をいろんな角度から見てみましたが、どこからどう見ても、それは高さを持たない絵でした。絵なのに、動いているのです。

 地図には、チョコのお城までの道が描かれていました。実際、ラクラミキオアラたちがいる森には、舗装されていない土道ではありますが、歩きやすいように草木を取り除き平らになっている道がありました。

「方位磁石の仕組みは謎だけど、今はこの地図と方位磁石を信じるしか無いわ。さあ、出発しましょう!」

 チョコ姫はそう言いましたが、ラクラミキオアラは動きませんでした。

「ちょっと待って。"信じるしか無い"って、あなたはその不思議な方位磁石の仕組みも知らないみたいだし、その地図を用意したり、わたしのお母さんや、わたしたちをこの奇妙な世界につれてきたりした人たちの仲間では、無いってことなの?わたしは、あなたのことを信じてる。何か事情があるのなら、絶対に味方になるから、正直に、言って…?お願いだから…」

 そのときチョコ姫は、ラクラミキオアラに背中を向けていました。しばらくの間、(うつむ)いて黙っていましたが、やがてゆっくりと顔を上げ、後ろを振り返りました。

「ありがとう…。わたしが誰なのか、誰の仲間なのか、今あなたたちに説明することは、どうしても出来ないの。それをすると誰かが、あなたたちに危害を加えるかも知れないから」

 チョコ姫の口から発せられた"危害"という言葉を聞き、ラクラミキオアラたち三人の間に緊張が走りました。しかし、重苦しい表情で慎重に言葉を選びながら話すチョコ姫を見て、ラクラミキオアラは確信しました。

"この子は、わたしたちの味方だ!絶対に、そうだ!"

 チョコ姫はラクラミキオアラのすぐ近くまで歩み寄り、ラクラミキオアラの耳に口を近づけて、とても小さな声でこう言いました。

「わたしたちが今しているこの会話だって、もしかしたら、盗聴されているかも知れないわ。お願い。わたしを信じて。必ず、あなたを守るから」

 ラクラミキオアラは驚いて、目を丸くしました。盗聴されているかも知れないことに驚いたわけではなく、チョコ姫が"必ず、あなたを守る"と言ったときの声が、澄み切った水のように透明な響きを持っていたことに驚いたのです。ほんの少しの濁りすら無いその響きは、やさしい心から生まれる真実の言葉だけが持つものだと、ラクラミキオアラは直感的に分かりました。

 ラクラミキオアラは、チョコ姫の目を真っすぐ見つめました。

「分かった。もう、事情を()いたりしない。わたしは、あなたを信じる」

 そう言ってから、ラクラミキオアラはドイナとペイズリーの顔を見ました。二人は"えっ、何!?"と思い、少し動揺しました。

「チョコ姫!出発する前に、紹介しておくね。まず、こっちのめちゃくちゃ可愛い女の子が、わたしの大親友のドイナ。ムネアカヒタキっていう、すっごく可愛い鳥の妖精なの!わたしと同じで、本を読むのが大好きな女の子。最初はそうでも無かったんだけど、最近、わたしから悪い影響を受けて、少しずつ小悪魔的になってきてます!で、こっちの、見た目だけは結構かっこいい男の子が、ペイズリー3世。天才的な魔法使いなの!」

「み、"見た目だけは"って、何だよっ!」

 ペイズリー3世が、ラクラミキオアラの期待通りのツッコミを入れました。

 チョコ姫の正体はラクラミキオアラのお母さんなので、「ドイナは妖精」「ペイズリーは魔法使い」と紹介されても、全部ただの冗談だと思っていました。ラクラミキオアラの部屋の本棚にはファンタジーの本がたくさん並んでいて、そのことはお母さんも当然知っていたので、"またこの子ったら、本の影響で、そんな冗談を言っちゃって!"と思っていたのです。

「ドイナちゃんと、ペイズリー3世君ね!妖精さんと魔法使いだなんて、素敵ね!」

「あ、チョコ姫!わたしチョコ姫と仲良くなりたいから、呼び捨てでいいよ!」

「あ、おれのことも、呼び捨てで!」

 ドイナとペイズリーが笑顔で言いました。


 ラクラミキオアラたちは、チョコ姫と一緒に歩き始めました。たまに緑色の葉っぱを持つ樹も生えていましたが、ほとんどの樹は葉っぱが茶色か焦げ茶色で、まさにチョコの森という感じでした。ラクラミキオアラは歩きながら樹々を眺めて、「緑色の葉っぱの樹は、抹茶チョコってことなのかも知れない」と思いました。空は人間の世界と同じような青空で、雲も浮かんでいました。

「なあ、いま思ったんだけどさ。おれのステッキを使えば、チョコのお城までひとっ飛びで、あっという間に到着できるかも知れないぞ」

 ペイズリー3世が言いました。

「あっ!その手があったね!お母さんが本当に無事なのか心配だから、お願いしてもいいかな?」

 ラクラミキオアラはそう答えましたが、二人の会話を聞いていたチョコ姫は、さっきの友達紹介に合わせて、二人が冗談を言っているのだと思っていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ