第127話 手のひらで転がされるドルレット
ドルレットの受信箱にクララからの返信が届き、二人はその後もメールの送受信を繰り返しました。
件名︰私の件名をパクるなよ
『その、ディニクさんという人は、なんでそこまでしてくれるんだ?本当に、大丈夫か?私、車に乗ったとたんに殺されたりするんじゃないか!?』
件名︰パクりじゃなくてオマージュです
『そんなわけないでしょ!笑 大丈夫ですよ!そもそもディニクさんはチョコ-1 グランプリのスポンサーであるという理由で僕と接点を持つことになった人です。彼のような資産家、経営者の多くは、僕の父が死んだことによって経済活動がしやすくなり、資産が増えたはずです。父に恨みを持っていて僕の命を狙っている可能性ならまだしも、チョコレツィカさんを狙っている可能性は無いと思います。理由がありませんからね。それに、記者会見で彼がゴロツキーという動画配信者を叱責したのを、チョコレツィカさんもご覧になりましたよね?あの後、彼は"人の尊厳を踏みにじり、心を傷つけ、平気な顔をしているような人を、受け入れることは出来ません"と言いました。僕は、彼のあの言葉が嘘だったとは思えません。チョコレツィカさんも、そう思いませんでしたか?』
件名︰めちゃくちゃ思った
『それは、めちゃくちゃ思った。あの人は、信用出来る人だよ。デチェバル、ダメじゃないか!あんな、いい人を疑ったりしちゃ!何を考えているんだお前は!』
件名︰えー!!
『えー!!僕ですか!?チョコレツィカさんじゃないですか!彼のこと思い切り疑ったのは!驚くほど全力で疑ってましたよ!?』
件名︰人聞きの悪いこと言うな!
『私は疑ってない!⋯そういうことにしておいてくれ!!あと、ディニクさんには、くれぐれもお礼を言っておいてくれ。もちろん私も、お会いしたときに言う!試合開始が、確か夜の8時だよな?私が住んでいるチョコフィエルからレツィカドームまでは、車だと二時間ちょいだから⋯オティリア達と対面する時間も考慮に入れて⋯午後4時くらいでどうだ?チョコフィエルに、"クイブル・デ・チョーリ"という店名のバーがあるんだ。場所は、その店の前でお願いしますと伝えておいてくれ。オティリア達には、6時にレツィカドームで待ち合わせ、と伝えてくれ。あ⋯でも、オティリア達は特別観覧席まで、どうやって行けばいいんだろ⋯?案内してくれる人がいないと無理だよな?』
件名︰大丈夫です!
『承知しました!午後4時に、"クイブル・デ・チョーリ"ですね!僕、そのお店、行ったことあるかも知れません。チョコレツィカさんが住んでいそうな街はどこだろう?と考えて、チョコフィエルが怪しい!と思って、何度か足を運んだことがあるんです。そのときバーに入ったのを覚えています。駅前商店街の近くの、体格のいいマスターがいるバーじゃないですか?後でディニクさんに特別観覧席までの経路を教えてもらって、オティリア達に伝えておきます!』
件名︰完全にストーカーじゃん!!
『おいデチェバル!お前、完全にストーカーじゃないか!!引いたぞ!!お前とは縁を切る!さらばだ!』
件名︰すみません!!
『チョコレツィカさんが、オティリア達のことを心配し過ぎて心を痛め、離職されたと聞いて⋯心配で仕方が無かったんです!あまりにも心配で、つい、探してしまったんです!本当にごめんなさい!赦して下さい!』
件名︰信じるなよバカ!
『縁を切るとか、冗談に決まってるだろ!お前って奴は、私が'"今日から、全国にいる全てのカラスは色が白になったよ!"と言ったら、少しも疑わずに信じそうな奴だな!!』
件名︰勘弁して下さいよ!
『ちょっと〜!勘弁して下さいよ!!僕のこと、からかい過ぎですよ!⋯それはそうと、いま思ったんですけど、チョコレツィカさんはチョコラインやってないんですか?メッセージアプリの。メールだと、ちょっと大変じゃないですか?』
件名︰やってるに決まってる
『え?もちろん、やってるよ!いまのところ遣り取りしてるのは、ダリアっていう友達と、ダリアの息子のポマード龍太郎と、バーのマスターのトシヒコだけだけどな!』
件名︰それを早く言って下さいよ!
『僕の携帯電話の番号は〇✕△-△△〇✕-〇✕△〇なので、チョコレツィカさんの携帯の電話帳に登録して下さい。そのあと、チョコラインの"招待"のところをタップして、SMSを選択して、僕の番号を送信先に選んで下さい。ていうか、ポマード龍太郎って⋯それ、絶対チョコレツィカさんが付けたあだ名でしょ!』
ドルレットが最後のメールを送信した三分後、チョコラインへ招待するクララからのショートメッセージが届き、無事、二人はチョコラインでいつでもメッセージの遣り取りが出来る状態になりました。
『デチェバル。お前、私のことが心配でこんな田舎町まで探しに来たくらいだから、いま嬉しいだろ?"これで、チョコレツィカさんといつでも会話できる〜!"って。ニヤニヤしてるんじゃないか?笑』
クララはそう打ち込んで、記念すべき最初のメッセージを送りました。
『だから⋯!やめて下さいよ!!からかうのは!』
ドルレットからの返信を見て、クララはドルレットに負けないくらい、嬉しそうな⋯そして幸せそうな顔をしていました。




