第124話 届いたメール
「ドルレット君、君はこれから、チョコレツィカさんからメールが来るのを待つのだろう?どこで待つつもりなんだ?君はチョコレツィカさんと同じように有名人になってしまったから、ホテルのラウンジで待つわけにもいかないだろう⋯人がたくさん集まってきてしまう。私がホテルの部屋をひとつ用意するから、そこで待つといい。もちろん代金などは不要だ」
「えっ⋯でも、そんな、あれもこれもタダというのは⋯いくら何でも⋯!」
「友達なんだから、当たり前だ!友達からお金を取る方が、おかしいだろう?ワハハハ!」
あまり遠慮をしていると、却ってディニクとの友情にヒビが入りそうだと思ったドルレットは、ディニクの提案を受け入れることにして、「ありがとうございます」とお礼を言いました。
ドルレットは、チョコレツィカからメールが来る可能性は50%くらいだと考えていました。チョコ-1 グランプリは地区予選の段階から様々なメディアで取り上げられ、中継番組も放送・配信されていたうえ、準々決勝からは更に大々的に取り上げられたので、チョコレツィカが一度も目にしていないと考える方が不自然なのではないか?とドルレットは思いました。しかしその一方で、チョコレツィカという人は、そこまで考えなくてもいいのにと思ってしまうほど物事を深く考える人なので、想像もつかないようなところまで思考して、何らかの理由で"メールはしない"と決意するということも、ありそうだ⋯とも思いました。それで結局、"可能性は五分五分だな"と考えるに至ったのです。
ドルレットは、"全国放送で大々的にメールアドレスを公表したのだから、チョコレツィカになりすましたメール、誹謗中傷のメールなどは大量に送られてくるだろう"と考えていました。しかしドルレットが利用していたクラウド型のメールサービスにはメール検索機能が付いていたので、そういったメールがどれだけ送られてきても、チョコレツィカからのメールを見つけ出すことは容易だと考えていました。ドルレットが投げかけた問いの答えは"ボランチ"あるいは"ミッドフィルダー"あるいは"サッカーのポジション"なので、それらの語句で検索をかければ、それらの語句を含むメールだけが検索結果として表示されるのです。
ドルレットはディニクが用意してくれたホテルの一室で、数分置きに検索を繰り返していました。その合間に、件名が『チョコレツィカです』になっている、なりすましのメールを興味本位で開いて見たりもしました。その本文には"答えは、「私が着ていたスーツ」だよね!ドルレット君!"と書かれていたので、ドルレットは思わず笑ってしまいました。彼は"チョコレツィカさんは必ず、俺のことはデチェバルと呼ぶはずだ"と思っていましたが、なりすましのメールを送ってきた人達は、そもそもデチェバルという名前すら知らなかったのです。
一時間ほど経ったとき、ついに検索にヒットしたメールが表示されました。ヒットしたのは一通のみで、件名は『チョコレツィカだ!』でした。開いてみると、本文にはこう書かれていました。
『デチェバル!記者会見で着てたスーツ、全然似合ってなかったぞ!誰が選んだんだよ、あれ。あ、答えは"ボランチ"な!』




